年末ご挨拶:「人には沿うてみよ」を考える。
皆さん今年2回目のご挨拶と、今年最後のご挨拶です。
このブログを贔屓にしてくださる読者の皆様には、本当に日頃より感謝いたしております。
私がこのブログを開設したのが約2年前になります。
お陰様で、今年の後半頃には、総PVが1万件を超えるという成果を出すことができました。本当にありがとうございます。
そして、同時にお詫びも申し上げなければなりませんね。
今年のブログ活動に関しましては、たった1件のアップでした。
読者の皆様の中には、「どうしたんだ?やめてしまったのかな?」とご心配してくださった方も多数いらっしゃたかもしれません。
実はわたくしの個人的な都合で、取材旅行も兼ね長期休暇を取らせていただいておりました。
さて、上述のお詫び通り、殆ど活動しないまま年末のあいさつを迎えてしまったわけですが、今年一年を改めて振り返ってみますと、私にとっては「まぁまぁな1年」を維持することができたなぁという感じです。
「まぁまぁ」ですから、当然良いことばかりではありませんでした。
「よいこと」に関しては、前述した本件ブログの総PVが1万件を超えたことなどがあげられます。
「あまりよくない」ことについてですが、2018/1/11付け記事「労働契約について考える」の私の見解についてかなりの物議をかもしたことでした。
初めての方やお忘れの方もいらっしゃると思いますので、その私見を要約しますね。
<要約>
⑴皆さまは、労働契約の内容である、労務を提供するその対価として使用者から給料をいただいている。
⑵労働相談の現場では、自分の労働条件を知らない労働者が沢山いることに驚かされる。
⑶参考現場再現シーンでのコメントの中で、自らの労働条件をしっかり把握している労働者の方が、自らの正しい主張をやんわりはっきり言うことができ、働きやすい労働条件を達成できる傾向にある。
というものです。
そして、ゴシックで示しているのでお分かりの通り、物議をかもしたのは⑶の私見の部分です。
以外にも?「お前は現場をわかっていない。」というようなニュアンスのお叱りもたくさんいただきました。
そういう方々が共通しておっしゃることは、概ね次のような内容です。
労働者というのは、使用者に職場を与えていただいているお陰で、家族を養うことができるし、飢え死にしなくて済むんだ。
また
労働者というのは、労働契約締結時に自らの処遇を含めた包括的人事権をゆだねており、逆に労働者の方からの上司に対する人事権は認められていない。
更に、
労働契約の性質上語られる、「刑法の罪刑法定主義」類似の論理については、あくまでも「懲罰規定」についての事であり、通常業務の中での上司の叱責指導については当てはまらないため、抜け道はいくらでもある。
それが、たとえ
万が一
懲戒権限のない上司や懲戒権限のある上司が、労働契約関係の中での日常業務の中にあって、罪刑法定主義とは異なる違法な懲罰をおこない「あなたは、会社の指示したことをまっとうにこなせない。従ってあなたは当社の仕事には適していない。辞めてほしい。はっきり言ってクビといっているのだ。」という扱いがなされたとしても、「そういうやり方はおかしいと思う。違法なやり方だ。」と反論できる労働者というのは労働現場ではほとんどおらず、そういう労働環境が日本の労働現場では暗黙裏に規範的効力を認められている。
従って
上司から違法な扱いを受けたとしても、「上司が黒と言えば、白いものも黒」と認めて素直に謝るしかない。あなたの言うような自分の正当性を主張していたら首がいくらあっても(手足の指以上にあっても)足りない。労働者とは例え労働法では首が保証されている場合であっても、その通りに自分の首が守られないことを知っている。簡単に裁判なんか起こせるはずがない。
というのが概要です。
まず、上記のような見解の方々に不愉快な思いをさせてしまったことはお詫びしたいと思います。
なるほど、と私にも思い当たる節はたくさんあり、経験もしているからです。
更に、あえて上記意見に付け加えるなら、
正々堂々と自分が真面目に業務をこなしていることを説明し正当性を主張すれば、働きやすい環境を実現できるという思いを現場で使用者や上司が察知した場合、
逆効果になり、悪質な労働環境を助長してしまう可能性もあるかもしれないとご心配されてのことだと思います。
そういう思いをわかったうえで、「しかしもう一度よく考えて行動していただきたい」と言わせてください。
その上司、貴方様が、素直に謝ったら、
「こいつは素直な奴だな。自分が間違ってなくても私が悪いですと頭を下げる感心な奴だ。こういう労働者こそ当社が求めていた人的資源だ」と認められるのでしょうか?
もし、その様な会社にお勤めであれば、明日の家族の生活を守るためにも、頭を下げて自分の非でないことを自分の非として認めても、それは、ご自分の納得のいくことなので問題ないかもしれません。
しかし、世の中には、
「あいつは、いつも上から言われたことにはいというだけで自分の主張がない。」
「そうか、自分が悪いと認めたんなら、会社はアイツの非として評価するしかないよな。」
「アイツの非は、累積どのくらいになる。」
【「著しく能力が劣り、会社の業務に堪えないとき」の普通解雇事由に該当します
。】
と評価する会社もあるかもしれません。
どうして?
会社のいう通り、素直に頭を下げたのに?
では、どうするか?ですね。
その様な挑発する上司がいる現場なら
まずは、やはり「その場で直接上司に悪態をついた」という負い目となるような行動は避けるべきですね。
その場は、一旦引き下がり、
中立的立場に立ってくれるような人事部が会社にある場合には、人事担当者に相談してみるのもよいと思います。
しかし、「何をいうか!うちの会社の人事なんか信用できない」と思われるのであれば、会社の中にコンプラス委員会のような部署があれば、そこで事のあらまし等詳細に説明し、相談したことによる不利益取り扱いを心配していることも含めて相談するのがよいと思います。(派遣労働者に関しては、派遣元管理責任者)
ここでたいていの場合はおさまると思いますが、
それでも、相談したことにより更に労働環境が劣悪な条件におかれた場合は、会社に社内組合があればその社内組合に相談してもよいかもしれません。
組合に相談したことにより不利益扱いを受けた場合は、会社側が不当労働行為として評価される可能性があるため、解決できる可能性は高まると思います。
それでも、解決しない場合は、労働行政(労働基準監督署)の相談窓口やADR(裁判外紛争解決手続き)の利用という方法もあります。
ADRについては、労働行政に限らず民間のADR制度もあり、我々社会保険労務士会も裁判外でお金をかけずに短時間で紛争解決したい方などのために低廉な価格で、ご奉仕させていただいておりますので、是非頭の片隅にでも入れておいていただければと思います。
社会保険労務士会の行うADRについて、簡単に説明すると、「裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律(ADR法)」に基づく法務大臣の認証と社会保険労務士法に基づく厚生労働大臣の指定を受けて、労務管理の専門家である社会保険労務士が、法律の専門家である弁護士の協力を得、トラブルの当事者の言い分を聴くなどしながら、その専門家としての知見と経験を活かして、個別労働関係紛争を、「あっせん」という手続きにより、簡易、迅速、低廉に解決を目指す制度であり、原則1回の「あっせん」手続きにより「和解契約書の締結」へ導くことを目指す制度です。
【メリット】
・個別労働関係紛争の当事者の間に立ち紛争解決をあっせんする「あっせん員」となる者が労務管理の専門家である社会保険労務士や法律の専門家である弁護士であるため、当事者同士で和解を試みるよりも、お互い納得が得られる内容の和解を短時間で導ける可能性が高い。
・社会保険労務士会のADRは、あくまで社会保険労務士会の社会貢献活動の一環として行っているADR機関であるため、とにかく費用が安い。
・原則1回の「あっせん」による和解を目指しますので、時間の短縮のみならず、労働者様にとっては精神的負担が少なく、また、使用者様にとっては、職場内での他の従業員に対する紛争の影響を最小限に抑えられる。
・和解が成立した場合は、専門家が内容を確認した「和解契約書」が作成される。
・申立人が、同じ内容の紛争について裁判所で訴訟中の場合、当事者の共同申出により裁判権の決定で訴訟手続きは一時中止され、あっせん手続きが優先される場合がある。
・時効によって権利を失う事案の場合、社労士会の紛争解決センターが申し立てを受理した時点で、時効が中断され、あっせん手続きに専念することができる。
【裁判と比較した場合のデメリット】
・専門家が関与するとはいっても、「あっせん」は話し合いの場の提供を原則としているため、法的に白黒をつけるというより、紛争の現実的な解決を図る部分に重点を置く制度であり、当事者双方の譲り合いや歩み寄りによる和解に重点がある。
・紛争事案が、その性質上あっせんをするのに適当でないと認められるものは対象外となる。(詳細は、各社会保険労務士会の紛争解決センターにお尋ねください。)
・「あっせん」はADRの手続きである以上、被申立人に参加を強制することはできず任意であり、被申立人が参加を決意して「あっせん期日」が確定した後欠席したとしても、訴訟の様な、期日に出頭しない不利益があるわけでもない。そのため紛争解決の実効性は必ずしも高いとはいえない。
・「和解契約書」が作成されるが、民法上の和解の効力は有するものの、和解契約の内容を相手方に強制することはできない。和解契約書に執行力(法律的強制力)をもたせるためには、別途、債務名義にする手続きが必要となる。*1
以上が、我々社労士会が行っているADRの概要です。訴訟等面倒な手続きや費用面から、どこに相談してよいかわからず、問題解決を諦めることを即断するのではなく是非ご気軽にご相談いただければと思います。
その他の紛争解決手続きについてですが、同じ裁判外紛争解決手続き(ADR)として
労働行政や民間の他に、地裁に申し立てする労働審判という制度もあります。
労働問題に詳しい労働者と使用者の代表が労働審判員となり、裁判官の審判官とともに
3人で構成される「労働審判委員会」が、紛争当事者それぞれの言い分を聴き、原則3回以内の期日での決着を目指します。
労働行政や民間が行う他のADRとの違いは、話し合いによる調停が成立しなかった場合には、労働審判委員会が解決案としての審判を示し、確定するれば、裁判上の和解と同じ効力を持ちますが、当事者に異議がある場合、審判は終了し、訴訟に移行します。
金銭での解決を望んでいるが、争いとなる金額が少額なため、短期間で通常の訴訟と同様の判決を得たいと考えるならば、少額訴訟という特別の訴訟手続きの制度もあります。民事訴訟のうち、60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて、原則として1回の審理で判決まで行う特別な訴訟手続きです。(コトバンクより)*3
(少額訴訟の要件等)
民事訴訟法第三百六十八条 簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。2 少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
3 前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。
以上が、職場紛争となった場合の、通常訴訟を除いた主な解決手段となるわけですが、皆さまには、今年1年の垢を取り除き頭の整理をしたうえで、新たな希望にあふれる年を迎えていただけるきっかけとなれば幸いです。
以降は、今回の記事の参考資料となった厚生労働省の「『確かめよう労働条件』ポータルサイト」【「働くこと」と「労働法」 ~大学・短大・高専・専門学校生等に教えるための手引き~】を引用してまとめとしたいと思います。
労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争を「個別労働紛 争」と言います。 具体的には、解雇、雇止め、賃金の引き下げ、配置転換などの労働条件や、いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関するものです。
厚生労働省では、これら個別労働紛争を未然に防止し、早期に解決を図るために、「総合労働相談 」や、労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」を行っています。 *4
特に次のような期間または理由では解雇できません。
①業務上災害のため療養中の期間とその後30日間の解雇
②産前産後の休業期間とその後30日間
③労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
④労働組合の組合員であることをなどを理由とする解雇
⑤労働者の性別を理由とする解雇
⑥結婚、妊娠、出産をしたこと、育児休業、介護休業を申し出たこと、取得したこと等を理由とする解雇
最近「○○ハラスメント」という言葉が働く場で聞かれることが多くなってきました。 「Harassment(ハラスメント)」とは「悩ますこと、嫌がらせ」という意味です。
○ セクシュアルハラスメント 職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じることをいいます。
○ パワーハラスメント 同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えられたり、職場環境を悪化させられる行為をいいます。
あなたがハラスメントをやった立場になった場合、どのような責任が生じ るでしょうか。パワーハラスメントを例で見てみましょう。
【民事責任】 損害賠償を請求される可能性があります。
○ あなた:不法行為責任に基づく損害賠償請求(民法第709条)
○ 会 社:債務不履行責任(安全配慮義務違反)に基づく損害賠償 請求(民法第415条)
【その他の影響】 上記責任以外でも次のような影響が出る可能性があります。○ 職場内の信用の喪失、地位の失墜
○ 家庭の崩壊などのプライベートへの波及
□ パワハラ被害調査 平成28年度に厚生労働省が実施し た「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年以内 にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した者は32.5%であり、 この問題が依然として社会的な問題であることが明確に示されました。
□ 精神障害の労災補償状況 ひどい嫌がらせ等を理由とする精神障害等での労災保険の支給決定件数が高水準で推移しています。
また日頃から記録(出退勤時刻、休憩時間、働いた時間、何 かあったらその内容も)をメモしておきましょう
【相談窓口】
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
性別を理由とする差別、妊娠・出産・育児休業等を理由と する不利益取扱い、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・ 育児休業・介護休業等に関するハラスメント、パワーハラ スメント、育児・介護休業、パートタイム労働などについ ての相談の受付等総合労働相談コーナー (都道府県労働局、労働基準監督署等に設置)
労働問題に関するあらゆる分野の相談の受付 (解雇、雇止めなどの労働条件、いじめ、嫌がらせなど)賃金、労働時間、労働者の安全と健康の確保などについて の相談の受付、監督、指導などの事務
労働条件相談ほっとライン
労働条件に関する電話相談 0120-811-610 平日(月~金)17~22時 (土日) 9~21時
労働に関する相談先を押さえよう(2)
・労働に関する悩みは独りで抱え込まずに、身近な人や専門家に積極的に相談しよう。
【相談窓口】
弁護士会、 各法律事務所
解雇、残業代、パワハラやセクハラなど、雇用関係や職場環境 に関する相談社会保険労務士会、 各社労士事務所
解雇、退職、未払い残業代等職場のトラブル全般についての相 談行政書士会、 各行政書士事務所
クーリングオフなどの相談及び外国人留学生の進学・就職・ア ルバイトなど労働契約の相談
都道府県庁・ 政令指定都市役所労働相談への対応
労働組合
労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的 地位の向上を目的として組織する団体 ※ 電話相談をしている労働組合(連合団体、地域労組、ユニオン)
今回の記事は以上です。今回は、年末の挨拶も兼ね、いざという時のための訴訟以外(少額訴訟を除く)の紛争解決手段について簡単に概略をお伝えしました。
ただ、やはり上記引用の厚生労働省の手引きにもあるとおり、問題が発生せた場合は、1人で抱え込まずに信頼できる会社の同僚や先輩、友人、組合や外部専門家等に早めの相談をしておくことも大切だと思います。
さらに、特に労働者の場合ですが、日常業務の中で疑問に感じたことがあれば、日頃より5W1Hに基づき、メモを残しておくと問題解決の際の有力の手掛かりとなることも多くありますので、是非心掛けるようにしてください。
皆様にとって、新しく迎える1年が、働きやすく仕事にやりがいのある職場での1年となることを心より願っております。それでは、よい新年をお迎えください。
リーミルティアさんのブログに参考になるような記事がありました。
6つのストレス撲滅法(続編) | リー・ミルティア | DIRECT Connect
記事:ワークライフマネジメント研究所 所長 百武祐文(ヒャクタケ)
*1:和解契約書を債務名義にする方法には、①簡易裁判所に和解契約を内容とする即決和解の手続きを取る ②和解契約書について公証人の認証を受けておく 等がある。
*2:解雇や給料未払いなど職場の争いごとを、訴訟よりも素早く解決するために2006年4月から導入された。最高裁によると、07年3月までの1年間に全国で1163件の申し立てがあった。手続きが終了したのは919件。半数近い454件が地位確認、247件が賃金など、71件が退職金をめぐる争いだった。 終了したうちの7割に当たる644件で調停が成立し、162件で解決案を示す審判が出た。審判の内容に異議があって訴訟に進んだケースなどを除くと、全体の8割以上が「解決」したことになる。 申し立てから終了までの期間をみると、7割に当る655件が3カ月以内で済んでおり、ほとんどが3回以内の期日で収まった。裁判よりも迅速に進んでいるといえる。 企業の労務担当や、労働組合の幹部ら「現場」を知る専門家が審判員となることで、利用者だけでなく裁判官にもおおむね好評だ。ただ、書類作成などの手続きをする代理人を弁護士に頼むことで、争う金額が少額な割に費用がかかることなどが、今後の課題として挙げられている。~コトバンクより~
*3:即時解決を目指すため、証拠書類や証人は、審理当日にその場ですぐに調べられるものに限られる。審理は基本的に、裁判官と丸いテーブルに着席する形式で進められる。判決や和解の内容に相手が従わない場合は、強制執行を申し立てることができる。判決に不服がある場合は、異議を申し立てることができるが、控訴することはできない。利用回数は、一人につき同じ裁判所で年間10回までに制限されている。【コトバンクより】
*4:・ 総合労働相談件数 1,130,741件(平成28年度) → うち民事上の個別労働紛争相談件数255,460件(平成28年度) ・ 総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が70,917件(平成28年度)と、5年連続で最多。 ※「総合労働相談」:都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など380か所(平成29年 4月1日現在)に、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コー ナーを設置し、専門の相談員が対応。 ※「民事上の個別労働紛争」:労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事 業主との間の紛争(労働基準法等の違反に係るものを除く)。
コーヒーブレークQ&A 有給休暇Ⅱ(あなた、今なんじ?)
今回は、前回に引き続き有給休暇についてのテーマの第2回目です。
前回は、営業の神様、ブライアントレーシーの著書「大富豪になる人の小さな習慣術」(徳間書店)という書籍の第9章【健康で快適な生活習慣】の中で述べられていた休暇に関する箇所を途中まで引用して終了していました。
忙しくてとても休暇など取れないという労働者の意識に関して参考になればと引用させていただいたわけですが、さて営業の神様、ブライアントレーシーさんが定期的に休暇を取るという主題について長年にわたり細かく調べ導き出した結論は・・・・
定期的に休暇を取る
(略)きちんと休みを取ると、あなたの仕事には少なからず変化が訪れる。まず、頭がすっきりして回転が良くなる。知力と想像力が増す。アイデアと洞察が次々に湧いて、周囲に大きく差をつけることができる。つまり就寝時間を早め、定期的に休暇を取るなどして休む機会を増やし、しっかり休んだ方が、人の生産性はアップし、ミスは減少し、出世のスピードも速まるということにならないだろうか。私はこの主題を、長年にわたり細かく調べてきた。そして導き出した結論は・・・・ひとは1年につき、まる3カ月休暇をとっても、生産性と効率、出力、収入をアップさせられるというものだった。セミナーの参加者は皆、この方法で得られる利益、職場で頭一つ抜けるまでの速さ、そのことで得られる気分の良さに驚きを禁じ得ない。今のところ、この法則に例外は見つかっていない。
仕事途中にごく短時間の休憩を入れただけで、その後の仕事の効率が上がった経験があるので、何となく理解できる話ですよね。
そこで、もう1つ、その短時間の休憩を含め休息をとることによって得られる効用について書かれた一説を海外の書籍の中から抜粋したいと思います。
バケーション効果の研究
(前略)
パフォーマンス自体も休暇の長さと相関関係にあるという証拠が相次いでいる。会計事務所アーンスト・アンド・ヤングの従業員についての2006年の調査では、月に10時間の休暇をとるごとに、従業員の業務評価は翌年に8%ずつ上昇した。休暇を多くとるほど業務評価は改善し、会社にとどまることも多くなった。ほんの少しの休暇時間が増えるだけでも、大きな効果があるようだ。ハーバード・ビジネススクールの2人の教授が、最近になってB・C・G(ボストン・コンサルティング・グループ)のコンサルタントを対象にしたプロジェクトを実施した。コンサルタントたちは、週に一晩休みをとり、その晩は一切仕事をしないように指示された。1日ではなく一晩である。この種の調査が実施されるというだけでも、一部の職業で現在の仕事環境がどれほど過酷になっているかがわかる。驚いたことに、この実験はコンサルタント本人たちから強硬な抵抗にあった。週に一晩でもスマートフォンをチェックできず、クライアントと連絡がつかなくなると考えただけで、懸念と不安を引き起こしたのだ。しかし、何とか週に一晩だけオフの時間を作ることができたコンサルタントたちは、半年後の調査では仕事の満足が高くなったと報告した。また、心を開いたコミュニケーションが取れるようになり、仕事と家庭生活のバランスも良くなり、普段通り働き続けた同僚よりも、会社にとどまろうという気持ちが高まったという。一晩でも週末でも本当の意味で休息し、もっと長くもっと頻繁に休暇をとり、仕事中は90分ごとに休憩し、短い昼寝の時間をとり、或いは最低でも夜7~8時間の睡眠をとる。そうすれば、仕事と休息のリズミカルな波ができ、私たちの健康と生産性は大いに改善される。このことは圧倒的な数の研究で実証されている。〈参考図書〉
【忙しい社長のための「休む技術」】(集中力・モチベーション・生産性を高める最新科学)
以上の様な参考記事を見ていると、日本より海外の方が休暇に対する意識が高いような感じがしますよね。
それはやはり、海外では能率を重視するのに対して、日本では、より組織力を重視するということを意味しているのでしょうか?
確かに、日本企業の様に長期雇用を前提としたゼネラリスト育成を重視した雇用慣行の中にあっては、能率ばかりを重視するわけにはいかないこともあるのかもしれません。
能率の上がらない中での忍耐力や努力が重要であったり、お金を得ることが当たり前ではないことを教育することが重要であったり、能率の上がらない時間帯に入っても、苦難を乗り越え皆で協力してその日のうちに1つの事をやり遂げることで、組織員としての結束力を高めること自体が重要であったりとかです。あと組織員としての問題として、疲れているのは一人ではないということでしょうか?
テレビのドミノ大会で得られる様な資質がより重要なことがあるということでしょうか?
各チーム目標のドミノを設計して、最終的にはきれいにすべてのドミノを倒し、一つの絵を完成させることを競い合う番組なのですが、必ずしもすべてのドミノが倒れなくても、各チーム目標のドミノを設計していく中で日を追うごとに、チームメンバーの結束力が高まっていく様子が報道される内容となっています。
当然、各チームとも目標設計したドミノを時間内に完成させ、最終日にすべてのドミノを倒すことを目標とするわけですが、個人的には、必ずしもすべてのドミノを倒すこと自体が重要なのではなく、その目標に至る過程においてチーム全員が1つの目標に向かい苦難を乗り越え最終的には見事な結束力を発揮する成果を重視している番組内容ではないかと思っています。
中でも、チームメンバーの一人の担当したエリアのドミノが原因で、ドミノ完成前に1/3とか半分のドミノが倒れてしまい、涙ぐみながら責任を感じたその担当者が徹夜でドミノを直していると、他のメンバーが1人また1人と布団の中から出てきて最終的には皆で壊れたドミノを修正するシーンなんかはとても感動します。
勿論、チームのメンバーの心が見事に一致し設計したドミノが、最終日にすべてきれいに倒れて見事な絵が完成するクライマックスのシーンが一番感動するわけですが・・・・
それにしても、北朝鮮のマスゲームは、いつ見ても芸術的な見事さですよね!
訓練中に隊列を乱した人には、何か厳しい懲罰とかが与えられているのでしょうか?
仕事とは、人格の延長戦である。成就である。人が己の存在意義を確かめ、己の価値と人間性をはかる術の一つである。
〈ピーター・ドラッガー〉
ブライアントレーシーの著書「大富豪になる人の小さな習慣術」(徳間書店)より
ここでもう一つ資料からの抜粋を引用したいと思います。
最近は特定の労働者に大きな負担がかかる傾向にあります。仕事漬けになると生活リズムも乱れ、仕事の能率も下がります。 ほどよく休むことで社員の私生活は充実し、仕事に対するヤル気も出て、作業効率も上がります。さらに、仕事がうまくいくことで私生活にもハリが出る、というような好循環も生まれます。また、社員がイキイキと仕事をすれば、会社の生産性が向上し、メンタルヘルス対策や余分な残業代などのコストも削減できます。企業イメージも高まり、優秀な人材の確保にもつながります。 このように、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現は、社員にとっても会社にとっても大きなメリットをもたらします。
敢て、上記抜粋の中に出典を書かなかったのですが、皆さん、どこの国の資料からの抜粋だと思いますか?
北朝鮮のプロパガンダ?ありそうな話ですが、残念(?)ながら違います。
実は、我国日本の厚生労働省作成の労働政策説明パンフレット【「労働時間等見直しガイドライン」活用の手引き】に記載されていた中の一分を引用しました。
実は、実務家の方は別にして、大半の日本の労働者というのは、わが国の労働行政というのは有給休暇の推進にあまり積極的ではないという印象をお持ちだったのではと思ったからです。(私の今回のテーマ記事も、海外資料からのスタートとなっていますもんね。)
しかし、意外?にも前述した海外資料と同じような内容の事が、資料の中に記載されているではありませんか?
「手引き」自体は平成28年8月作成のものですが、「手引き」の 内容である「労働時間等見直しガイドライン」というのは、労働時間等設定改善法第4条1項*1に基づき作成された指針の事で、事業主及びその団体が、労働時間等の設定の改善について適切に対処するために必要な事項について定めたものです。
その指針の作成の基となっている労働時間等設定改善法について簡単に説明させていただくと、従来の1992年(平成4年)に成立した「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」(以降、略して時短促進法という。)という平成13年3月末までの時限立法を改正する形で、平成17年に制定された法律です。
その従来の時短促進法は、全労働者を平均しての年間総実労働時間を1800時間までとすることを目標として完全週休二日制の普及促進などの取り組みをするために制定されました。のちに年間総実労働時間を1,800時間にまで減らすことはおおむね達成できたが、指針の中でも述べられている通り、それは短時間労働者の比率の上昇によるもので、正社員の年間総実労働時間は臨時措置法制定後も2,000時間を超えている状況であること、また労働時間分布の長短二極分化の進展が見られ全労働者の平均で目標を用いることは時宜に合わなくなってきたこともあるため、現在の労働時間設定改善法では、家庭生活、自発的な職業能力開発、地域活動等に必要とされる時間と労働時間を柔軟に組み合わせ、心身共に充実した状態で意欲と能力を十分に発揮できる環境を整備していくことを目標としています。
【「みんなが欲しかった!社労士の教科書 2019年度版〈TAC出版〉、ウィキペディアより】
法に基づき定められる指針自体に強制力はなく、「事業主が講ずべき一般的な措置」に反しても罰則等の適用は受けませんが、「有給休暇を取得しやすい環境の整備」に関しては、法律の第2条に以前から規定されるとともに、指針の 「事業主が講ずべき一般的な措置」の中でも取り上げられていたのです。
平成28年8月の資料「手引き」と話は前後しますが、そんな中にあってその「手引き」の中でも取り上げられていた通り、特定の労働者に大きな負担がかかる傾向にあるといった労働時間の長短二極化が年次有給休暇の取得率が依然として5割を下回った状態であること、さらに、長い労働時間等の業務に起因した脳・心臓疾患に係る労災認定件数は高水準で推移していることや、急速な少子高齢化、労働者の意識や抱える事情の多様化等が進んでいるといった問題が指摘されるようになり、 このような情勢の中、今後とも労働時間の短縮が重要であることは言うまでもないが、全労働者を平均しての年間総実労働時間1,800時間という目標を用いることは時宜に合わなくなってきたことから、むしろ、経済社会を持続可能なものとしていくためには、その担い手である労働者が、心身の健康を保持できることはもとより、職業生活の各段階において、家庭生活、自発的な職業能力開発、地域活動等に必要とされる時間と労働時間を柔軟に組み合わせ、心身共に充実した状態で意欲と能力を十分に発揮できる環境を整備していくことが必要となっているということで、そのことが前述した通り現在の労働時間等設定改善法の目標となっているとされています。
その様な流れの中でまず、キッズウィーク(地域ごとに夏休みなどの一部を他の日に移して学校休業日を分散化する取組)への対応や、労働者が裁判員として刑事裁判に参画しやすくするとともに、平成29年6月9日に閣議決定された「規制改革実施計画」で示された転職しても転職が不利にならない仕組みをつくるため、「労働時間等見直しガイドライン」及び「育児・介護休業指針」が改正され、平成29年10月1日より適用されています。
(1)労働時間等見直しガイドラインの改正点
ポイント①
「地域の実情に応じ、労働者が子どもの学校休業日や地域のイベント等に合わせて年次有給休暇を取得できるよう配慮すること」 が盛り込まれました。
ポイント②
「公民権の行使又は公の職務の執行をする労働者について、公民としての権利を行使し、 又は公の職務を執行する労働者のための 休暇制度等を設けることについて検討すること」が盛り込まれました。
ポイント③
「仕事と生活の調和や、労働者が転職により不利にならないようにする観点から、雇入れ後初めて年次有給休暇を付与するまでの継続勤務期間を短縮すること、年次有給休暇の最大付与日数に達するまでの継続勤務 期間を短縮すること等について、事業場の 実情を踏まえ検討すること」が盛り込まれました。
(2)育児・介護休業指針の改正点
「子の看護休暇及び介護休暇について、労使協定の締結をする場合であっても、事業所の雇用管理に伴う負担との調和を勘案し、当該事業主に引き続き雇用された期間が短い労働者であっても、一定の日数について は、子の看護休暇及び介護休暇の取得ができるようにすることが望ましいものであることに配慮すること」が盛り込まれました。
以上の様に今現在の「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)は、上述した平成29年10月1日から適用されたもので運用されているわけですが、今般、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号。略して「働き方改革法」という。)が成立し、勤務間インターバルを導入する努力義務や時間外労働の上限規制が新設されることに伴い、「今後の労働時間法制等の在り方について(建議)」(平成27年2月13日労働政策審議会建議。略して「建議」という。)等も踏まえ、「労働時間等見直しガイドライン」が改正され、平成31年4月1日から適用されることとされています。
今回はここまでとしたいと思います。
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所長 百武祐文(ヒャクタケ)まで
*1:第四条 厚生労働大臣は、第二条に定める事項に関し、事業主及びその団体が適切に対処するために必要な指針(以下「労働時間等設定改善指針」という。)を定めるものとする。
*2:第二条 事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。2 事業主は、労働時間等の設定に当たっては、その雇用する労働者のうち、その心身の状況及びその労働時間等に関する実情に照らして、健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対して、休暇の付与その他の必要な措置を講ずるように努めるほか、その雇用する労働者のうち、その子の養育又は家族の介護を行う労働者、単身赴任者(転任に伴い生計を一にする配偶者との別居を常況とする労働者その他これに類する労働者をいう。)、自ら職業に関する教育訓練を受ける労働者その他の特に配慮を必要とする労働者について、その事情を考慮してこれを行う等その改善に努めなければならない。
3 事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する労働者の労働時間等の設定の改善に関し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めなければならない。 4 事業主は、他の事業主との取引を行う場合において、当該他の事業主の講ずる労働時間等の設定の改善に関する措置の円滑な実施を阻害することとなる取引条件を付けない等取引上必要な配慮をするように努めなければならない。
今年1年を振り返る 「社労士らしい?」
いよいよ今年も残すところあとわずかな時間となってしまいました。
読者の皆様におかれましては、大変充実したよい1年だったという人もいれば、もう少し目標に届かなかったという人もいるかもしれませんね。
私個人ごととしても人の事はあまり偉そうには言えない1年でした。
「そんなには悪くない」です。(笑)
それもひとえに読者様のお陰だと心より感謝いたしております。
このサイトブログ記事を書き始めたのが、去年の1月からでした。
何か新しいことを始めてみようと思い立っての事でした。
当然、仕事上のマーケティングも兼ねての事でしたが、そのためにももっと世間の人達に「仕事とは」というものを考えてもらえるきっかけとなるような情報をお伝えしたいと言う思いもありました。
悲惨な報道ニュースもお伝えしましたが、私の私見を記事の中でもお伝えしたように「生きるための仕事」で命を無くしたり働けなくなったりということに、私は昔から憤りを感じていました。
そうは言うけど、「お金もらうためには、いやなことも我慢しなければならないでしょ」というのは解りますが、あまりにも偏った仕事のとらえ方の様な気がしたからです。
勿論、避けられない事故で命を落とすということは「どうしようもないこと」ですよネ。
でも、苛めや過酷な労働が原因での自殺、過労死というのはどうでしょう。
守りたい家族のために一生懸命働いていたはずなのに、大切な家族を置いて他界。
記事でもお伝えした様に、精神疾患には「脆弱論説」があり、個人差がありますよね。
精神的に強い人なんて見ると「この人達につらい立場の仕事変わってくれないかなぁ」って思ったりとか、「この人たちは休みいらないのかぁ⁇」とかです。
だから、上司のパワハラにあっても「パワハラ?なにそれ?」ってケロってしている人もいれば、悩みに悩んで自殺する人もいるのかもしれません。
僕は、後者って思われてます(笑)。
よく他人から、「僕には悩みがないんですよ~」ってからかわれることがあります。
本当は、昔、色々悩んだこともあったんですよ。
その時は、上司を憎んだりもしました。
それから、自分の場合は、偶然社会保険労務士という資格に出会い
セミナーのビデオなんか見てて、「この人たちはなんて楽しそうに仕事をしてるんだろう」って思ったんです。
それで、「俺も絶対社労士になる!」って決めました。
シゴトなので厳しいことも当然ありますけど・・・自分としては正解だったかなと思っています。
仕事に対して前向きな気持ちに変わったからです。
今でも私は個人的に、戦っていることがありますよ。
それは何かというと、悲しいけど
「法務に何ができる。お金がすべてじゃないのか?仕事上の苛めなんてどこに証拠がある? お前達誰のおかげで仕事があるの?」
って挑発してくる人が今もいるんです。
私もお金が大好きです。
ある意味、「生きるための仕事」には我慢しなければならないことも沢山あるとも思っています。
しかし、正しい仕事のルール
というのを知識として多少でも知っているのと、知らずに仕事するのとでは雲泥の差があるのではと経験則上思っています。
相談するのだって、どこにどう相談すればよいかなんてわからないでしょう。
労使どちらもいい分がありますよね!
ですから、私はできるだけ中立の立場を記事の中で貫くはずだったのですが、新聞報道などで年初から労働者が仕事で命を奪われたニュースをみて、今年はどちらかというと「労働者側に偏った記事になっしまったかなぁ」を言う思いがあるのも事実です。
年初は、50件目標で記事を始めたのですが、終わってみたら30件ちょい。
だから
自分の中では、「まぁまぁかな」という思いです。
失敗もありましたね。
本当に申し訳ありません。
緊急記事の中で、もろ勉強不足から皆さんに混乱を招いてしまいました。
労働契約法20条についての記事ですが、後日、リベンジというか最高裁の判決文が手に入ったので、もう一度振り返りで整理できたらと思っています。
それと、もう一つ反省とお詫びがあります。
年内に終わらせるはずの記事が、2件残ったままでした。(笑)
社会保障でしたっけ?
有給休暇?
来年も?
良い記事をお伝えできるよう頑張りたいと思いますので、今後ともご贔屓よろしくお願いいたします。
皆さま、良い新年をお迎えください。
2018年12月31日
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コーヒーブレークQ&A 有給休暇(あなた、低反発の枕買おうか?)
社員Aさん:課長、今まで仕事が忙しく、皆バタバタしていたので言い出しづらかったのですが、私の延期になっていた有給休暇そろそろ取りたいと思っているのですが・・・
先日土曜日の同窓会での同級生の話では、「どこの会社も夏休みがあるのにお宅の会社にはないの?」と不思議な顔をされましたよ。
それで、もしかしたら本当は当社にも社員が請求できる夏休みという制度があって自分が知らないだけかもしれないと思ったんですが、どうなんでしょう?
課長:そんな制度うちの会社にはないよ。君は何年うちの会社で働いてるんです!
今まで当社の就業規則見たことないんですか?
今度時間に余裕があるときにちゃんと見ておきなさい。
それにしても突然じゃないですか? 何か急用とかあるんですか?
子供さん達の夏休みも終わってしまいましたよね!
あっ、そうか、失礼!君のところは子供いなかったんですよね。ところで、例の仕事はどうなったんですか?当社では、今まで営業目標達成できない人がそんなこと言ってきたことはないんですよ。
それに疲れがたまっているのに、なぜ有給休暇が必要なんだね。
社員Aさん:
・・・? いや!私もまさか今月に有給休暇が取れそうになるなんて思ってもいませんでした。ただ、今までずっと延期になっていたもんですから、仕事も順調にすすんでいて、ひと段落してきた今のうちに予定を確認しておきたいなぁと思いまして…土日含めて9日間戴きたいのですが?
課長:
君も想像つくだろうけど、皆同じこと言うんだよ。わかってる?
それに連続5日って、どんなもんなんですかね〜。
慶弔休暇でもあるまいし、土日を含めると9日って、今の日本のサービス業の会社でそんな会社があるなんて聞いたことないよ。
社員Aさん:
しかしですね、こう言っては何ですが、私は今年に入って1日も有給なんて戴いておりませんから、今年の分も含めて30日の有給休暇の請求権があるはずなんですよね?
それに、女房が来年から復職が決まっておりまして、私と2人でゆっくりする時間が少なくなりそうなんです。
課長:私が個人的な有給の残日数まで、頭の中に事細かに入っているわけないだろう?
本部の人事課に確認して給与明細に有給の残日数を記載してもらうからそちらで確認しておいてくれ!
来年になったら5日くらいは、取れるんじゃないか?
皆さんお待たせいたしました。今年の夏は猛暑だったことがとても印象深かったので、夏休みにちなんで有給休暇のテーマを取り上げてみようかと思い立ちました。
私に関しては、前回の投稿からかなりの休養をいただいたおかげで、かなり充電させていただきました。
皆さんは、お盆休みはいかがお過ごしでしたでしょうか?
今年も残すところわずかとなってしまいましたが、夏休みは猛暑でどこにも出かける気がしなかったので、(年末年始の休みにはしっかりと休暇の予定を入れるぞ)と生き込んでいる方もいらっしゃるかもしれませんね。
会社によっては、10連休なんていう話を聞いたりしますよね。
そういう休みが取れる人の中には、Hawaiiなんかで家族とゆっくりされたかたもいらっしゃるかもしれませんよね。
私もサラリーマン時代にはそんな話を聞くたびに「羨ましいなぁ」と思っていた1人でした。
さて、今回のテーマ内容ですが、
出足からなんだか穏やかではない会話からのスタートとなっていますが、有給休暇というとどうしても上記会話の様な労使間のトラブルの種を連想させられてしまうのは私だけではないのではないでしょうか?
そもそも諸外国とは違い、日本の会社では有給休暇について労働基準法第39条に制度が規定されてはいますが、使用者に与える義務までは規定されていませんし、近年の長引く景気低迷や経営環境の急激な変化に対処していくため労働者が職場に遠慮して有給を申請(正式な意味での申請ではなく、有給の時季の指定を意味する。)しにくい環境があることを厚生労働省も認めていて、労働行政の有給促進のための様々な施策にもかかわらず、有給の消化率は50%を切る状態が相も変らぬらず続いているのが現状であるといわれています。*1
さて、上記課長の会話の中にも出てきましたが、そもそも有給休暇はなぜ労働者に必要なのでしょうか?
前述しましたが、有給休暇というと使用者としてはできるだけ与えたくないものであり、逆に労働者の立場からは、できるだけ多く利用したいというもので、職場での労使対立の火種となることが多い労働者の権利ですよね。
私の労働基準監督署での相談員時代の経験からも、有給休暇をもらえないという相談は本当に本当に非常に多かったです。
業種にもよると思いますが、本当に日本のサラリーマンの多くの方が、有給休暇を取れずに悩んでいるんだなぁと思いました。
自分の楽しみのための休暇ならいざ知らず、切実な相談内容としては、働きずくめで休みがないから身体がどうにかなってしまいそうなのに、上司に相談しても休みくれないといったような内容の相談が多かったですね。
さて、話を「なぜ労働者には有給休暇が必要なのか」という内容に戻したいと思いますが、厚生労働省の「労働基準法等の一部を改正する法律案について」という資料の中の、(有給休暇制度の概要)という項目に出てくるその制度趣旨内容を引用すると、次のように記述されています。
○趣旨
労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、法定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与える制度
上記の様に、まさに有給休暇の制度趣旨の中には労働者の心身の疲労を回復させるという一文が含まれており、心身ともに疲弊しきった労働者がその回復を図るために有給休暇の取得権利を主張することは制度趣旨に合致しているわけです。
ただ、同じ職場の労働者は皆同じ条件の労働環境下での労働に従事しているはずですので、誰を優先的に休ませるのかという課題が現場監督者にとっては悩ましい問題であるのは間違いないでしょう。以前の記事でもお伝えしたように、精神的負荷には脆弱性の論理があり、体力とともに個人差があるからです。(心身の弱い人間が得をするという論理)
また、有給休暇の制度趣旨からはおかしな話ですが、使用者の立場としては、「疲れた疲れたと言うけれど、無給でもいいなら休むのか?」と言いたいこともあるかもしれません。
しかしながら、有給休暇制度について定めをした労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律であり、労使合意のうえでもその労働条件を下回ることを許されていない強行法規でありますし、使用者側には、以前お伝えように、民法の信義則上の一般的義務としての労働者に対する安全配慮義務を負っていることからも、いかなる場合においても労働者が有給休暇を取得できないことには問題があるということになるでしょう。使用者に認められている時季変更権は、労働者の適法な時季指定に対して、その求められた時季を別の時期に変更することを求めることができる権利であって、労働者に有給休暇を与えないことを認める権利ではないとされているからです。
前述した厚生労働省の「労働基準法等の一部を改正する法律案について」という資料によると、1年間で年休を1日も取得できていない労働者の 割合:16.4%(平成23年時点の調査)という結果報告が記載されていました。条件等の詳細が不明ですのでなんともいえず、育休取得者等がその中に含まれているかどうかということでも数字の意味あいが違ってくるとは思いますが、それにしても16%は個人的には、多いなという印象をうけました。(それは、病気した時?に備えたくもなるよなという・・・)
最近は日本人の労働者の質の低下が云々言われるようになってきていますが、基本的に日本の労働者は、非常に真面目ですよね。そこに長期景気低迷と急速の国際競争の激化により経営を取り巻く環境が非常に厳しくなったことが企業のリストラクチャリングを加速させたことは説明するまでもないことでしょうけど、そういう環境の中で労働者も生き残りをかけた篩いにかけられる時代を経験しました。売り手市場と言われて久しい昨今でさえ、労働者に求められる資質として「環境変化に素早く適応できる能力」を指摘している人事労務関係の書籍も珍しくありません。(それらの書籍が休暇を取るなと言っているわけではないですので・・・念のため)
以上のような状況が、いまだ(指標は平成23年調査)に有給を1日も取れない労働者が16%も?いるという結果にいくばくか反映されているのでしょうか?
とにもかくにも、国も認めている通り日本人の真面目な気質と日本独自の雇用慣行により日本では有給休暇の取得率が伸びない原因となっているとも考えられますが、その真面目な日本人サラリーマンが有給休暇を取得できない真の理由は何か考えてみると、ざっと次のような理由が浮かんできました。
- みんな忙しそうにしているのに自分が休むのは申し訳ない。
- 有給休暇というのは、いざ病気やケガをして仕事ができなくなった時のためにその間の生活を保障してくれる制度として機能させたい。
- 自分が責任を負っている自分にしかできない仕事があり、自分が休むと仕事が回らない
- 業務に堪えないほど、虚弱体質と思われたくない。
- 上司に偉いと思われたい。会社に必要な人間と思われたい。
- 出向や業務負荷の極端な増加等苛めにあいたくない。
- 過去の昇進昇格者実績を見ていて、有給休暇を取っていない人の方が早く昇進昇格している。
- 一旦何日も休んでしまうと、業務の平準化に相当な期間を要する。
- 休んでいない過酷な状況が営業するうえで、受注につながるほど優位になると思っている。
以上の様に考えると、原因はお金であったり、業務効率化であったり、職場仲間への気兼ねであったりということに思いがいたります。
しかしながら、業務効率化について考えてみると、本当にそのようなことで問題が解決するのかという疑問もわいてきます。
というのも、企業は年々成長することを前提に経営されていますから、今年解決できた問題も翌年には何らかの施策がなければ、同じ問題に行き着くからです。
当然、毎年毎年対前年比売り上げ比率の増加を要求されるのが企業の宿命だと言えるでしょうから、放っておけば必ず業務負荷の増加という問題に直面するはずです。
では、売り上げが下がったら業務負荷が減るのでしょうか?
残念ながらそんなことはないと言われています。
製造業等、受注減に伴う生産調整の結果としてならありうるでしょうが、通常と変わらない仕事をしての売り上げ減という結果なので業務量が減ったわけではないからです。さらに売り上げ回復のための業務が発生しますので、売り上げが減っているのに業務負荷は逆に増加するというカラクリになっているそうです。(以上の論拠は、そのまま書籍からの抜粋ではありませんが、【人件費・要因管理の教科書:日本能率協会コンサルティング 高原暢恭著 労政時報選書】を参考としています。)
この問題を深く掘り下げると、参考図書にある、「人件費・要因管理」の問題にまでいきついてしまいますので、今回の記事では取り上げません。
「うちの会社は社員に対する休暇についての理解がないのでとても休めない」という問題は別項目に検討するとして、ここでは、「忙しすぎてとてもじゃないけど休暇なんか取れない」という労働者の意識に焦点を当ててみたいと思います。
営業の神様と言われるブライアントレーシーの著書に「大富豪になる人の小さな習慣術」(徳間書店)という書籍があるのですが、その書籍の第9章【健康で快適な生活習慣】の中で次のような興味深いことが述べられていました。
定期的に休暇を取る
私のコーチング会社では毎年120日から150日の休みを取るように勧めている。最初の内は、誰も本気にしない。とうてい無理だ、そんなに休めるはずがない、忙しすぎるからといった調子だ。それどころか、もっと休みを減らして、たまる一方の職務を片づけたいという。(略)きちんと休みを取ると、あなたの仕事には少なからず変化が訪れる。まず、頭がすっきりして回転が良くなる。知力と想像力が増す。アイデアと洞察が次々に湧いて、周囲に大きく差をつけることができる。つまり就寝時間を早め、定期的に休暇を取るなどして休む機会を増やし、しっかり休んだ方が、人の生産性はアップし、ミスは減少し、出世のスピードも速まるということにならないだろうか。私はこの主題を、長年にわたり細かく調べてきた。そして導き出した結論は・・・・
(続きは次回)
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コーヒーブレイクQ&A 社会保障の歴史 フヨウの話?
私には重度障害者の姉がいます。姉の心身の状況では満足に働けないため所得は殆どありません。従って、会社員である私が別居中の姉に生活補助費の仕送りをしています。以前は健康保険の被扶養者の認定について、弟妹は生計維持要件さえ満たせば同居要件は不要である一方同じ兄弟姉妹でありながら、兄姉に関しては同居要件が必要とされていたため私の被扶養者とすることができず、国民健康保険に加入していました。今般平成28年10月 1 日より兄姉の同居要件が廃止になったと聞きましたので、私は姉と同居していなくても健康保険の被扶養者とすることができますか?ちなみに私の姉は、来月から療養も兼ね米国に短期滞在する予定ですが、その場合でも被扶養者と認めてもらえるのでしょうか?
いつもの通り、健康保険の被扶養者に関して基本から確認していくことにしましょう。
まずは、健康保険の扶養という制度についてですが、健康保険法には、3条7項に「扶養」の定義が定められています*1が、同じ健康保険であってっも国民健康保険には扶養という制度はありません。
ここで我が国の社会保障制度の歴史につてい簡単に振り返ってみましょう。
我国の社会保障制度の歴史については、厚生労働省の平成23年度版「厚生労働白書」に詳述が出ていますので、要所要所を抜粋したいと思います。
日本の社会保障制度は、医療保険や年金保険に代表される保険の仕組みを用いた社会保険方式*2と、生活保護等に代表される公費財源による公的扶助方式*3とに大別できるが、生活困窮対策が中心であった戦後復興期の一時期を除けば社会保険方式を中核として発展を遂げ、今から50年前の1961(昭和36)年にすべての国民が医療保険及び年金による保障を受けられるという画期的な「国民皆保険・皆年金」を実現した。
以上の様に日本の社会保障制度は「税方式」ではなく、「社会保険方式」を基本としています。
戦後の日本の社会保険制度は、「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利を保障するとした新憲法のもとで、新しい制度として成立するに至りましたが、その基本理念を構築したのは昭和24年に発足し、翌昭和25年10月に「社会保障制度に関する勧告」を内閣総理大臣に提出した社会保障制度審議会*4でした。同審議会での議論は、日本の社会保障制度が国の一般財源の基礎の上に構築されるべきか、社会保険料を財源とする社会保険制度の上に形成されるべきかという問題でしたが、当時の日本の社会保障のモデルとされたイギリスが社会保障方式*5を中心としたということもあり、社会保険方式を採用することとされ、現在でも、基本的にはこれが堅持されています。【平成22年度版 社労士ナンバーワンテキスト(TAC出版)より】
厚生労働省の「各種制度の低所得者対策の経緯等」という資料に社会保障制度に関する勧告(昭和25年社会保障制度審議会)の概要が掲載されていますが、その資料によると、日本国憲法25条を受け、「社会保障制度に関する勧告」(昭和25年10月16日社会保障制度審議会)では、社会保障制度について概ね以下のような考え方を提示しているとされています。
○ 日本国憲法25条*6の規定は、国民には生存権があり、国家には生活保障の義務があることを明らかにしている。
○ いわゆる「社会保障制度」とは、困窮の原因に対し、保険又は直接公の負担において経済保障を図り、生活困窮に陥ったものに対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることである。
○ 国家が責任をとる以上は、国民もまた、社会連帯の精神に立って、それぞれその能力に応じてこの制度の維持と運用に必要な社会的義務を果たさなければならない。
○ 社会保障の中心は、自らそれに必要な経費を負担する社会保険制度としつつ、保険制度のみでは救済し得ない困窮者に対しては、国家が直接扶助し、その最低限度の生活を保障しなければならない。更にすすんで、国民の健康の保持増進のための公衆衛生、国民生活の破綻を防衛するための社会福祉行政の拡充を同時に推進しなければならない。
以上の様に1950(昭和25)年の勧告当時は社会保障の理念は最低限度の生活の保障でしたが、その後、社会保障制度審議会では、1991(平成3)年に設けた社会保障将来像委員会第1次報告「社会保障の理念等の見直しについて」(1993年)の中で、社会保障について、「国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民にすこやかで安心できる生活を保障することを目的として、公的責任で生活を支える給付を行うもの」と定義しました。 同審議会では、この報告等を基にした1995年の勧告*7で、「広く国民にすこやかで安心できる生活を保障すること」が社会保障の基本的な理念であると上述した1950(昭和25)年の勧告当時の社会保障の理念との相違を述べ、国民の自立と社会連帯の考えが社会保障制度を支える基盤となることを強調しました。勧告の中で示された普遍性・公平性・総合性・権利性・有効性という社会保障推進の5原則とそこに示された基本的考え方の多くは、社会保障体制の再構築を求めるものであり、後の介護保険制度の法制化等に結びついたとされています。【厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」より】
日本の社会保障制度の特徴 (厚生労働省「各種制度の低所得者対策の経緯等」より)
1 すべての国民の年金、医療、介護をカバー(国民皆保険・皆年金体制)
・ 社会保障給付の大宗を占める年金・医療・介護は、社会保険方式により運営
・ 年金制度は、高齢期の生活の基本的部分を支える年金を保障
・ 医療保険制度は、「誰でも、いつでも、どこでも」保険証1枚で医療を受けられる医療を保障
・ 介護保険制度は、加齢に伴う要介護状態になっても自立した生活を営むことが出来るよう必要な介護を保障
2 社会保険方式に公費も投入し、「保険料」と「税」の組み合わせによる財政運営
・社会保障の財源は、約60%が保険料。約30%が公費、約10%が資産収入等で、保険料中心の構成
3 「サラリーマン(被用者)グループ」と「自営業者等グループ」の2本立て
・ サラリーマン(被用者)を対象とする職域保険(健康保険、厚生年金)と自営業者、農業者、高齢者等を対象とする自営業者等グループ(国民健康保険、国民年金)の2つの制度で構成
4 国・都道府県・市町村が責任・役割を分担・連携
・ 年金等は国、医療行政は都道府県、福祉行政は市町村がそれぞれ中心となって、社会保障制度を運営・医療・福祉サービスは、民間主体が重要な役割を果たしている。
社会保障制度の発足の歴史を上述した資料から世界的に振り返ると、労働争議等の労働問題の深刻化という社会情勢と密接に関係しているようです。世界で初めて社会保障制度ができたとされるドイツでも我が国でもそのような労働問題の社会的深刻化が発足の発端とされています。日本初の医療保険の誕生は、まさにそのような混乱の中にあった状況下、政府が、労使関係の対立緩和、社会不安の沈静化を図る観点から、ドイツに倣い労働者を対象とする疾病保険制度の検討を開始し、1922(大正11)年に「健康保険法」を制定したのが始まりとされています。*8
このように、我国の医療保険も年金も、戦前から、工業化の進展に伴う労働問題の発生等に対応して、被用者保険を中心に制度化の動きが進んでいたのですが、終戦直後は、生活困窮者への生活援護施策や感染症対策が中心となったとされています。昭和30年代の初めには被用者保険の整備は進んでいたのですが、農家や自営業者などを中心に国民の多くが医療保険制度や年金制度の対象ではなかったため、1961(昭和36)年に地域保険である国民健康保険、国民年金にこれらの者を加入させることで国民皆保険・皆年金が実現し、以後、国民皆保険・皆年金は日本の社会保障の中核として発展していったとされています。 【厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P32より】
以上の様に我国の国民皆保険・皆年金が実現が昭和36年に実現したということがよく言われているため、国民健康保険ができたのが昭和36年であるかのような誤解があるようですが、実は、国民健康保険が制度化されたのは第一次世界大戦終戦後の1938(昭和13)年4月に制定され、同年7月に施行されています。
制度化のきっかけは、第一次世界大戦終戦後の大正末期の戦後恐慌とその後昭和に入ってからの金融恐慌、世界恐慌と相次いで発生した昭和恐慌が、その後の東北地方を中心に発生した大凶作等と相まって農村を中心とする地域社会を不安に陥れたことだとされています。困窮に陥った農家では赤字が続き、負債の多くを医療費が占めていたとされています。*9 そこで、当時社会保険を所管した内務省は、農村における貧困と疾病の連鎖を切断し、併せて医療の確保や医療費軽減を図るため、農民等を被保険者とする国民健康保険制度の創設を検討したとされています。*10
日本は過去にも、戦時体制に突入することとなる状況下において、健兵健民政策を推進すべく国民健康保険の一大普及計画が全国で実施され、1945(昭和20)年には組合数、被保険者数ともに一定の量的拡大に成功しましたが、組合数の量的拡大は必ずしも質を伴うものでなく、戦局悪化のため皆保険計画は目標どおりに進まなかったという経緯があります。しかしながら国民健康保険は、先進国に前例のある被用者保険と異なり、日本特有の地域保険としての性格を有していたため、国民健康保険の誕生は、日本の医療保険が労働保険の域を脱し国民全般をも対象に含むこととなり、戦後の国民皆保険制度展開の基礎が戦前のこの時期に作り上げられたことを意味したとされています。
上述したように、その後我国の「国民皆保険・皆年金」は、1955(昭和30)年頃に始まった「神武景気」による本格的な経済成長といわゆる「人口ボーナス」という時代の波に支えられて達成されることになりますが、当時の国民健康保険の医療給付については、その給付範囲、給付率とも健康保険などの被用者保険と比べて水準が低いという問題*11があったとされており、国民健康保険の給付率について被用者保険の水準にできるだけ近づけることが要請され、1961(昭和36)年の国民健康保険法改正により世帯主の結核性疾病又は精神障害について同年10月より給付率が5割から7割に引上げられ、1963(昭和38)年の同法改正によって世帯主の全疾病について原則として給付率が7割に引上げられ、更にその後、1966(昭和41)年の同法改正によって世帯員*12に対する法定給付割合が5割から7割に引上げられることが決定し、1968(昭和43)年1月より実施されたという経緯をたどることになります。
日本は、高度経済成長の始まる前述の神武景気の頃(昭和30年頃)より核家族化の傾向があったとされていますが、その後昭和30年代後半にはその傾向が顕著となっていき、老人に対する扶養意識の減退がみられるようになったとされており、そのことが一人暮らし老人や寝たきり老人の問題を顕在化させる結果となり、世界で初めての老人関係法と言われる老人福祉法(1963年)の制定につながります。
国連の定義では、65歳以上人口比が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会と言われていますが、日本は1970年(昭和45年)に高齢化社会の仲間入りを果たし、1955年頃まで横ばいで推移していた高齢化率は、この年を境に上昇に転じ、高齢化社会の仲間入りを果たして僅か24年後の1994年(平成6年)には高齢化率が14.5%を上回り高齢社会に突入したとされています。
以上の様な高齢化の進展や高度経済成長に伴う社会構造の変化にともないもたらされた世帯構造の変化等に伴い、家庭が担っていた扶養能力の低下がますます顕著となり、社会保障需要は一層増大する形となっていったということです。
一般的に言って、経済が成長し、企業規模が拡大していくと組織での働き方も全国規模の転勤等が当たり前となっていくという理由なども核家族化を加速させた要因の一つと考えてよいと思います。
今回の記事のメイン資料である【厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」】の中でも、日本が国連定義の高齢化社会の仲間入りをした1970(昭和45)年には、高度経済成長に伴う求人難のため、当時の新規学校卒業者の主力であった新規高卒者に対する企業の求人倍率は7倍にも達し、企業にとっては労働者の確保・定着を図ることが重要な課題とされたことが、「日本型雇用慣行」を大企業を中心に普及・拡大させた要因として説明されていますが、その日本型雇用慣行の普及・定着はサラリーマンとして働く夫とそれを支える専業主婦という世帯構成の一般化をもたらしたとしています。
その後、日本は二度にわたるオイルショックを経験し、経済は低成長時代を迎えることになるのですが、それに伴い1970年代以降、上述した専業主婦の割合が低下し、代わって共働き世帯が増加していきバブル経済が崩壊してからの1990年代以降は、専業主婦世帯を上回るようになったということです。
このような共働き世帯の増加は、女性の労働者の増加という形を意味しますが、それはそのまま女性の社会での活躍という社会進出の進展を意味するものではなく、日本古来の固定的な性別役割分業を前提とした単純、補助的な業務に限定し男性とは異なる取扱いをおこなうというもので、必ずしも女性の能力発揮を可能とするような環境が整えられているとは言えない状況にあり、そのような環境を整備することが大きな課題とされていた状況を踏まえ1985(昭和60)年に男女雇用機会均等法が制定されることになります。同法の制定により、女性の社会進出が一層進むことになったということですが、こうした女性労働者達が仕事を続けるうえでの困難な障害を克服し、仕事も家庭も充実した生活を送ることができる働きやすい環境づくりを進めるため、1991(平成3)年に「育児休業等に関する法律」が、1999(平成11)年には「育児・介護休業法」が制定されるという流れになります。
高齢化の問題の一つである老人医療の問題については、1963(昭和38)年に前述した老人福祉法が制定されていたのですが、日本が高齢化社会に突入する1970(昭和45)年当時は、一般的に高齢者は低収入で当時の年金制度も未成熟であったことや家族給付率が5割であったことから、老人医療費の無料化を求める声が強かったことや高齢者たちが高額な医療費を避けるため受療を敬遠するような問題を避けるため、福祉元年と言われる1973(昭和48)年1月からは、70歳以上の高齢者を対象とした老人医療費支給制度が老人福祉法を一部改正する形で制度化され、高齢者の医療費負担が無料化されました。さらに、同年には医療保険制度では、健康保険の家族給付率の引上げ(5 割から7割)や高額療養費制度の創設などが行われます。
その後、 経済成長の鈍化にもかかわらず、医療費の伸びは増加傾向の一途をたどることになるのですが、そのような状況の下での医療保険財政の大幅に悪化に対処するため、1984(昭和59)年にサラリーマンの被保険者本人自己負担が1割に、1997(平成9)年には1割から2割へ、更に2002(平成14)年度には3割に引上げられるといった健康保険法の改正が行われます。
一方、1973(昭和48)年からの高齢者を対象とした老人医療費支給制度による老人医療費の無料化は、その後の「病院のサロン化」や「過剰受診・過剰診療」の問題を引き起こし国民健康保険の財政を圧迫することになったため、1982(昭和57)年の「老人保健法」*13の制定に伴い終了することになります。高齢者医療制度については、高齢者の自己負担を1割、現役並み所得の場合は2割とした(2008年に3割に引上げ)上で、老人保健法の対象年齢を70歳から75歳への引上げ、公費負担割合を3割から5割への引上げ等の改正が行われますが、2006(平成18)年に成立した「健康保険法等の一部を改正する法律」 により、2008年4月から老人保健制度に代わる後期高齢者医療制度が実施されることになります。
以上、今回は、設定問答の健康保険の扶養に関するテーマに入る前に、我国の社会保障の歴史について、医療保険制度を中心に振り返りを試みました。我が国の国民皆保険・皆年金については、文字通り年金制度とのかかわりを抜きにはあり得ないのですが、スペースの都合等もあり年金制度の歴史変遷まで触れることはしませんでした。興味のある方は、今回のメイン資料である「平成23年度版 厚生労働白書」に詳述の解説がありますので、参考にしてください。
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*1:健康保険法:(最終更新:平成二十七年五月二十九日公布(平成二十七年法律第三十一号)改正):3条7 この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者をいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者は、この限りでない。一 被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下この項において同じ。)の直系尊属、配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この項において同じ。)、子、孫及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの 二 被保険者の三親等内の親族で前号に掲げる者以外のものであって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの 三 被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの 四 前号の配偶者の死亡後におけるその父母及び子であって、引き続きその被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの
*2:社会保険とは、保険の技術を用いて保険料を財源として給付を行う仕組みであり、国や公的な団体を保険者とし、被保険者は強制加入が原則である。医療保険制度や年金保険制度が典型的な例である。
*3: 社会扶助とは、租税を財源にして保険の技術を用いずに給付を行う仕組みであり、国や地方公共団体の施策として、国民や住民に対して現金またはサービスの提供が行われる仕組みである。その典型は、公的扶助制度である生活保護制度であるが、児童福祉、障害福祉といった社会福祉制度や、児童手当や福祉年金(国民年金制度創設時に、既に高齢のために提供対象外となった層に対する措置として、保険料負担を必要としない無拠出の年金制度)も含まれる
*4:内閣総理大臣の諮問機関として昭和24(1949)年に発足し、我国の社会保障制度について、50年余にわたり審議・勧告等を行っていたが、平成13(2001)年の中央省庁の再編に伴い廃止された。1947(昭和22)年、GHQの招聘により来日したワンデル博士を団長とするアメリカ社会保障制度調査団の調査報告書に基づき、1948(昭和23)年12月に社会保障制度審議会が設立された。社会保障制度審議会は首相の直轄とされ、国会議員、学識経験者、関係諸団体代表及び関係各省事務次官40名で構成された。
*5:1942(昭和17)年の英国のベヴァリッジ報告は社会保障制度の主要手段として社会保険を位置づけ、欧米諸国の福祉国家の考えの基礎となった。日本でも、日本国憲法の制定により 社会保障に対する国の責務が規定され、社会保障制度審議会も1950(昭和25)年の「社会保障制度に関する勧告」において社会保険を中核に社会保障制度を構築すべきとした。
*6: 日本国憲法第25条は、(1)「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(2)「国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と、規定している。
*7:「社会保障体制の再構築(勧告)~安心して暮らせる21世紀の社会をめざして」
*8:日本では、第1次世界大戦(1914年~1918年)をきっかけに空前の好景気を迎え、重化学工業を中心に急速に工業化が進展し、労働者数は大幅に増加した。一方で、急激なインフレで労働者の実質賃金は低下したほか、米価の急上昇により全国で米騒動が発生した。また、第1 次世界大戦後は一転して「戦後恐慌」と呼ばれる不況となり、大量の失業者が発生した。このため、賃金引上げや解雇反対等を求める労働争議が頻発し、労働運動が激化した。【厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P35より】
*9:困窮に陥った農家では欠食児童や婦女子の身売りが続出し、大きな社会問題となった。【厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P36より】
*10:当時の国民健康保険の実施主体は現在のように市町村ではなく、組合単位で設立することができることとされていて、その設立も加入も基本的に任意であった。また、保険給付には療養、助産・葬祭給付があり、その種類や範囲は組合で決めることができるとされた。【厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P36より】
*11:給付の範囲については、往診、歯科診療における補てつ、入院の際の給食、寝具設備の給付は、当分の間、行わなくてよいとされていたため、これらの給付の制限を行っている保険者が少なくなかった。【厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P45より】
*12:世帯員とは、世帯を構成する各人をいう。ただし、社会福祉施設に入所している者、単身赴任者(出稼ぎ者及び長期海外出張者を含む。)、遊学中の者、別居中の者、預けた里子、収監中の者を除く。厚生労働省のサイト資料「世帯員とは」より
*13:老人保健法は、①老人医療費支給制度を廃止し、高齢者にも一部負担を求めることとしたこと、②老人医療費に要する費用について国、地方公共団体が3割(国20%、都道府県5%、 市町村5%)を負担し、各保険者が7割を拠出することにより全国民が公平に負担することとし、国民健康保険財政の救済策を講じたこと、③疾病予防や健康づくりを含む総合的な老人保健医療対策を盛り込むことなど、負担の公平、健康への自覚や適正な受診を促すという趣旨の法律であった。 2008年4月に「高齢者の医療の確保に関する法律」と改称された。【厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P57より】
暑中お見舞い申し上げます。
最近少し記事のペースが落ちたんじゃない?
いやぁ本当にそう思います。
ゴーストライター(私が勝手に名付けた、私の中の別人格)はやる気になっているみたいなのですが・・・
少しでも良いものを書こうと思って気負いすぎてしまった感も否めないではないですね。
私が住む九州では、7月9日に梅雨明けしましたが、その一日前まで物凄い豪雨でしたから、信じられないほどの天候の差を感じています。熱い。
今年ももうすぐ、社労士試験日がやってきます。
もう10年以上前の話になってしまいましたが、いつも試験日は猛暑です。
受験者の皆様は、くれぐれも身体に十分注意して試験に臨んでください。
それと、毎回携帯電話や時計のアラームで退場になる方が必ずいらっしゃいますので
併せて注意しましょう。
ということで、記事を楽しみにしてくれている読者の方達へ
次回記事もう少しお待ちくださいというご案内でした。
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コーヒーブレークQ&A 社会保険の適用拡大(かつ丼うまいか?)
Q. 先日、貴事務所から当社の質問に対してご回答いただいた通り、定年再雇用者の資格の同日得喪の手続きを行うため管轄年金事務所に行きました。その時持参した書類は、特別支給の老齢厚生年金の受給権者のみの得喪の書類と他の継続雇用者の分も含む賞与支払い届でしたが、後日、年金事務所職員の方から電話があり、「賞与支払い届に載っている他の60歳到達者は、継続雇用されないのですか?その場合でも資格喪失届は必要ですよ」と言われました。それと当社は、従業員が約700名の中小企業なのですが、今回、社会保険の適用拡大が行われていますが、該当漏れはないですかともいわれました。どのような事か説明してください。
A.
前回の御社のご質問の回答の際、「報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金の受給権者である被保険者であって、定年による退職後継続して雇用される者については、使用関係がいったん中断したものとみなし、事業主から被保険者資格喪失届および被保険者資格取得届を提出させる取扱いとして差し支えないこととされています。」という回答の仕方をしたため、誤解を与えてしまったようです。
もう一度、原則から確認させていただきます。
1.被保険者資格の同日得喪の特例的取扱い
原則:同一の事業所において雇用契約上一旦退職した者が1日の空白もなく引き続き雇用された場合は、退職金の支払いの有無又は身分関係若しくは職務内容の変更の有無にかかわらず、その者の事実上の使用関係は中断なく存続していますから、被保険者の資格も存続し、資格の得喪の手続きは要しません。
特例:被保険者であって、定年による退職後継続して雇用される者については、使用関係がいったん中断したものとみなし、事業主から被保険者資格喪失届および被保険者資格取得届を提出させる取扱いとして差し支えないこととされています。
この特例的取扱いについては、従来は特別支給(60歳代前半)の老齢厚生年金受給権者のみが対象の特例でしたが、平成22年9月から定年制の有無や定年退職であるかどうかに関わらず60歳〜64歳までの受給権者の退職後継続再雇用であれば対象とされ、更に平成25年4月からの老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢の引き上げにともない、60歳以降に退職後継続雇用されるすべての者に適用が拡大されています。
従って、今回の御社のご質問にもある通り、御社の定年再雇用対象者の中に報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金受給権者がいない場合であっても、その者が60歳以上の定年後再雇用者に該当している者であれば適用の対象になることになります。
しかしながら、前回の記事で御社のケースを検証すると、資格取得時報酬が給与締め日と実際の支給日との関係で減額された報酬とはなりませんので、同日得喪の手続きを踏む具体的な必要性というもの自体考えられません。(退職日を境に案分支給される賞与の賞与支払い届は、資格の同日得喪の手続き有無とは関係なく賞与支払い日から5日以内に提出しなければならないからです。)
ただし、今から説明する御社からのもう一つのご質問である社会保険の適用拡大の問題があります。
2.社会保険の適用拡大
㋐ 平成28年10月より従来、内翰(ないかん)の基準(4分の3基準)として取り扱われていた社会保険の適用基準が法律により明確化されました。 (健康保険法第3条9、厚生年金保険法第12条5*1)
㋑ 特定適用事業所に勤務する短時間労働者に関しては上記基準をみたしていない場合であってっも一定の要件に該当することにより適用対象者となります。
㋒ 平成29年4月1日からは、500人以下の企業等でも、①労使合意にもとづき申出する法人・個人の事業所、②地方公共団体に属する事業所に勤務する短時間労働者は被保険者の適用対象となっています。(国に属するすべての事業所は平成28年10月から適用開始)
㋐ 適用基準の明確化
改正前(内翰) |
改正後(法律) |
(a)1日または1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が常時雇用者のおおむね4分の3以上 |
(a)1日または1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上 |
(b)上記基準に該当しない場合でも、就労形態や勤務内容等から総合的に勘案し、常用的使用関係にあると認められる場合は被保険者となります |
(b)廃止 |
㋑特定適用事業所に勤務する短時間労働者
平成28年10月からは、前期「4分の3基準」を満たさなくとも、次の要件をすべて満たすことにより社会保険への適用が拡大されています。
①週の所定労働時間が20時間以上
②賃金の月額が8.8万円以上(年収106万円以上)*2
③勤務期間が1年以上見込まれる
④学生でない(夜間、通信、定時制の方は除きます。)
➄従業員501人以上の企業(特定適用事業所)*3に勤務している
要件に社会保険への適用が拡大されています。
㋒平成29年4月1日からの適用拡大
・上記㋑の①~④の要件を満たすこと
・任意特定適用事業所*4に勤務している若しくは地方公共団体に属する事業所に勤務している
3.特定適用事業所の取り扱い
以上の様に、社会保険の適用拡大が行われているわけですが、今回の適用拡大の実施に伴い、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合は、法人事業所であっても個人事業所であっても、各適用事業所がその者に係る被保険者資格取得届を事務センター(又は年金事務所)へ届け出る必要があります。
(健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者資格取得については、健康保険組合へ届け出ることになります。)
所謂 4分の3基準を満たさない場合でも上記㋑の5要件を満たす場合に適用される特定適用事業所に該当しているかの判断については、常時500人を超える被保険者を使用しているか否かがその判断基準になります。
従って、御社は従業員が約700名であるということですが、その使用する従業員のうち500人を超える被保険者を使用している状態が常時に該当しなければ、特定適用事業所には該当しないことになります。
常時500人を超えるとは、法人番号が同一の適用事業所で被保険者(短時間労働者を除き、共済組合員を含む)の数が1年で6カ月以上500人を超えると見込まれる場合をいい、そのような状態が見込まれる場合には、「特定適用事業所該当届」を管轄の年金事務所へ届け出る必要があります。
要件を満たしているにもかかわらず提出がない場合であっても、日本年金機構において判定を行い要件を満たしていることが確認できた場合は「特定適用事業所該当通知書」が送付されることになっています。
一旦、特定適用事業所に該当した場合は、使用される厚生年季保険の被保険者の総数が常時500人を超えなくなった場合であっても、引き続き特定適用事業所であるものとして取り扱われるのが原則ですが、使用される被保険者の4分の3以上の同意を得たことを証する書類を添えて、事務センター(又は年金事務所)へ「特定適用事業所不該当届」を届け出た場合は、対象の適用事業所は特定適用事業所に該当しなくなったものとして扱われることになります。
その場合の手続きとしては、法人事業所の場合は、特定適用事業所該当届の届出方法と同様に、同一の法人番号を有するすべての適用事業所を代表する本店又は主たる事業所から、事務センター(又は年金事務所)へ特定適用事業所不該当届を届け出ることになります。このとき、各適用事業所は、適用拡大の実施に伴い新たに被保険者資格を取得した短時間労働者に係る被保険者資格喪失届を事務センター(又は年金事務所)へ届出る必要があります。
(健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者資格取得については、健康保険組合へ届け出ることになります。)
さて、御社の今回の継続再雇用対象者についてですが、今回の適用拡大で何か影響があるでしょうか?
まずは、今回の適用拡大で、従来の内翰(ないかん)の基準(おおむね4分の3以上基準)として取り扱われていた社会保険の適用基準が法律により明確化(4分の3以上基準)されたことに伴い、「基準を満たさない場合であっても、就労形態や勤務内容等から総合的に勘案し常用的使用関係が認められる場合には被保険者とする」という取り扱いが廃止されたことがあります。
御社の継続再雇用対象者の中に、そのような総合勘案で被保険者扱いとなっていた者は、上記取扱いの廃止により被保険者資格を喪失することになるのかが問題となります。
しかしながら、今回の適用拡大での取り扱いでは、4分の3基準及び5要件を満たしていない場合であっても、施行日前から被保険者資格を取得しており、施行日以降も引き続き同じ事業所に使用されている間は、引き続き被保険者資格を有する扱いとされます。
従って、御社の継続再雇用が適用拡大の施行日前に行われていた場合には、ケースによっては新たな基準の影響を受けるか否かが変わってくることがありえます。
まず、継続再雇用時点で従来基準(内翰(ないかん)の基準)により継続雇用後も被保険者とされていたのであれば、施行日後も4分の3基準や5要件に関係なく引き続き被保険者扱いとなりますので何も影響がないということになります。
問題は、継続再雇用の時点で従来基準(内翰(ないかん)の基準)により継続雇用後は被保険者とされず(4分の3基準を満たさない有期雇用契約やパート等の就労形態)、資格喪失扱いになっていた者でも施行日後に新基準を満たした場合には被保険者とされることがあるということです。
(4分の3基準について)
就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間または所定労働日数が4分の3基準を満たさないものであっても、実際の労働時間及び労働日数が連続する2月において4分の3基準を満たした場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれるときは、4分の3基準を満たした月の3月目の初日に資格を取得します。
(5要件について)
短時間労働者として5要件をすべて満たした場合は、4分の3基準と関係なくその時点から、被保険者の資格を取得します。
以上の様に御社定年再雇用に関しては、適用拡大施行前に被保険者資格を喪失している者のみ影響することが考えられますが、御社も含めそのようなことが問題になるケースというのは殆どないと思われます。
ですから御社としては、定年再雇用に与える影響よりは、今まで社会保険の被保険者でなかった従業員で新たな適用対象となる者がでてくることによる人員計画に与える影響の方が重大であろうと思われます。
因みに、適用拡大後の継続再雇用の考えについては、新しい基準(4分の3基準や5要件)でそのまま適用の可否が判断されるということです。
その他5要件の注意事項
(週の所定労働時間が20時間以上について)
4週5休制等のため、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し一定ではない場合等は、当該周期における1週間の所定労働時間を平均し算出します。
また、所定労働時間が1カ月単位で定められている場合、1年間を52週とし、1カ月を12分の52週とし、1カ月の所定労働時間を12分の52で除して算出しますが、所定労働時間が1年単位で定められている場合は、その1年の所定労働時間を52で除して算出します。
夏季休暇等のため、夏季の特定の月の所定労働時間が例外的に短く定められている場合や繁忙期間中の特定の月の所定労働時間が例外的に長く定められている場合等は、当該特定の月以外の通常の月の所定労働時間を12分の52で除して算出します。
(勤務期間が1年以上見込まれる について)
雇用契約書その他書面においてその契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されているが、契約更新が1日ないし数日の間をあけて行われる場合は、就労の実態に照らして事実上の使用関係が中断することなく存続していると判断することができる場合には、雇用期間が継続して1年以上見込まれることとして取り扱うこととされています。
しかし、逆に雇用期間中であっても、一定期間勤務することを要しない期間において事実上の使用関係が失われることが明確である場合は、雇用期間は継続して1年以上見込まれないものとして取り扱われることになります。
雇用期間が1年未満である場合であっても、次の㋐㋑のいずれかに該当する時は、雇用期間が継続して1年以上見込まれることとして取り扱われます。
㋐就業規則、雇用契約書等その他書面においてその契約が更新される旨または更新される場合がある旨が明示されていること
㋑同一の事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により1年以上雇用された実績があること
ただし、㋐㋑のいずれかに該当するときであっても、労使双方により、1年以上雇用しないことについて合意しているときは、雇用期間が継続して1年以上見込まれないこととして取り扱われます。
日々雇用されている者の場合や、2ヶ月以内の雇用期間で使用されている者の場合、従来とおり法に定められた所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った日から被保険者資格を取得する扱いとなります。
(賃金の月額が8.8万円以上について)
賃金月額の対象は、基本給及び諸手当で判断されますが、標準報酬月額の基礎となる報酬月額と違い、次の①~④の賃金は含まれません。
①臨時に支払われる賃金
②1月を超える期間ごとに支払われる賃金
③時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金
④最低賃金において参入しないことを定める賃金
従って、施行日前に資格喪失していた御社の社員が、再雇用契約により賃金月額が8.8万円以上となっている場合であっても、その金額の中に上記①~④の金額が含まれている場合には、その金額を控除後の金額が8.8万円に達していなければ資格取得することはありません。
ギリギリ8.8万円以上により被保険者資格を取得した場合であっても、保険料の算定の基礎となる報酬月額には、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものが含まれるため、短時間労働者の被保険者資格の取得に当たっての要件(月額8.8万円以上)の判定の際に算入しなかった諸手当等も加味して報酬月額が算出されます。
従って、企業側としては新たに発生する社会保険料を含め人件費を極力抑えたい場合には、残業手当の基礎賃金に含まれない手当てを増やして対処するしかないということになりますが、社会保険の適用を受け将来受け取る年金を増やせることは、労働者の企業側への忠誠心を高める等リテンションに関わることであると同時に、生活関連手当の廃止や統廃合を検討している企業にとってはそのきっかけを失い、温存させなければならないことになってしまい賃金制度を含む人事制度改定に少なからず影響を与えることも考えられます。従って、成果主義的賃金制度改定を考える場合は、短期的なコスト増と受け止め、経過的措置を含め長期的に人件費がバランスするような制度設計を検討するしかないと思います。
一方で、被保険者の資格取得後に月額賃金が8.8万円未満となった場合の取り扱いは、
原則:賃金月額が基準を下回ったことの原因が資格取得後に雇用契約等が見直されたことによる場合を除き、被保険者資格を喪失することはありません。
例外:雇用契約等に変更はなくとも、状態的に8.8万円を下回る状況が続く場合は、実態を踏まえたうえで資格喪失することになります。
日給や時間給によって賃金が定められている場合は、被保険者の資格を取得する月前1月間に同じ事業所において同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける最も近似した状態にある者が受けた報酬の額の平均額を算出します。
ただし、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける最も近似した状態にある者がいないような場合は、個別の雇用契約等に基づいて月額賃金を算出します。
なお、 健康保険の被扶養者の認定についての収入要件に変更はありませんが、年収が130万円未満であっても4分の3基準または5要件を満たした場合は、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。雇用保険の取扱いも同様であるため、週20時間未満で勤務する場合は、厚生年金保険・健康保険に加入できないだけでなく、雇用保険にも加入できないこととなりますので注意してください。
同時に2ヶ所以上の事業所で被保険者資格の取得要件を満たした場合、被保険者は、いずれか一つの事業所を選択いただき、その事業所を管轄する年金事務所および健康保険組合を選択する場合は健康保険組合へ「被保険者所属選択・2以上事業所勤務届」を提出いただく必要があります。(選択した事業所が健康保険組合に加入している場合、当該健康保険組合へも届け出る必要があります。)
なお、被保険者資格の取得要件を満たすか否かについては、各事業所単位で判断をおこなうこととしており、2ヶ所以上の事業所における月額賃金や労働時間等を合算することはしません。
以上平成28年10月からの適用拡大に伴い、約25万人のパートタイマーが新たに短時間労働者として健康保険・厚生年金保険の被保険者の対象となったとされています。
4.任意特定適用事業所の取り扱い
以上、特定適用事業所に該当したことによる主な留意事項を述べてきましたが、平成 29 年4月1日からは、500 人以下の企業にお勤めの方も、労使合意(働いている方々の2分の1以上と事業主の方が社会保険に加入することについて合意すること)がなされれば、上記㋑の①~④の要件を全て満たす短時間労働者の方は、企業単位で社会保険に加入できるようになりました。
加入に当たっては、事業主の方が管轄の年金事務所(健康保険組合に加入している企業については、健康保険組合にも申出を行っていただくことが必要です。)に対して、「任意特定適用事業所申出書」を提出することにより行います。
申出書の提出の際には、労使合意を行っている旨の同意書を添付する必要となりまが、同意対象者となるのは、(・ 厚生年金保険の被保険者・ 70 歳以上被用者・ 上記㋑の①~④の要件を全て満たす短時間労働者)です。
同意の方法は、同意対象者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合の同意が必要になります。
同意対象者の過半数で組織する労働組合がない場合は、⑴ 同意対象者の過半数を代表する者の同意または、⑵同意対象者の2分の1以上の同意のいずれかが必要になります。
そして、年金事務所等が事業主の方からの申出を受理した日に、上記㋑の①~④の要件を全て満たす短時間労働者の方は社会保険に加入することになります。
同意書に一律の有効期間はなく、申出が受理された後に、過半数代表者が退職した場合や同意した者が過半数割れした場合などでも改めて同意を取り直す必要はありませんが、その後の事情変更により、厚生年金保険の被保険者及び 70 歳以上被用者の4分の3以上の同意を得て、事業主が管轄の年金事務所等に社会保険から脱退する旨の申出を行い、受理された場合には、受理された日の翌日に、短時間労働者の方の社会保険の資格が喪失することになります。
その場合の申出も「4分の3以上同意対象者」の4分の3以上で組織する労働組合がある場合は、その労働組合の同意が必要になります。
労働組合がない場合は、⑴「4分の3以上同意対象者」の4分の3以上を代表する者の同意または、⑵「4分の3以上同意対象者」の4分の3以上の同意のいずれかの同意が必要になります。
以上が適用拡大の概要ですが、上述したように新たな社会保険の適用拡大は、企業にとって一方でコストである反面、今まで社会保険に加入した働き方を求めていながらも基準を満たせず加入できなかった労働者にとっては魅力ある制度であることは間違いありません。今回の適用拡大による短時間労働者への社会保険の適用が、企業の魅力を向上させ、 優秀な人材の確保にも効果的と考えられますので、企業の人員計画の中での適正人件費との均衡を考慮しつつも上手に活用しましょう。
モデルケース(月収88,000円) 保険料 増える年金額(目安)
40年間加入 月額8,000円/年額96,000円 月額19,300円/年額231,500円 × 終身
20年間加入 月額8,000円/年額96,000円 月額 9,700円/年額115,800円 × 終身
1年間加入 月額8,000円/年額96,000円 月額 500円/年額5,800円 × 終身
適用拡大に関する詳細は厚生労働省ホームページを参照してください。
平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大) |厚生労働省
【参考文献・資料】
(参考文献)
・「社会保険のてびき 平成30年度版 社会保険研究所(編)」
・「社会保険の事務手続き 平成30年度版 社会保険研究所(編)」
(参考資料)
・「厚生労働省 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A 集」
・「厚生労働省 労使合意に基づく適用拡大Q&A集」
tel.0942-75-0482
労務管理事務所 ワークライフマネジメント研究所
所長 百武祐文(ヒャクタケ)まで
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*1:この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。(健保) 次の各号のいずれかに該当する者は、第九条及び第十条第一項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。(厚年):事業所に使用される者であって、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)第二条に規定する通常の労働者(以下この号において「通常の労働者」という。)の一週間の所定労働時間の四分の三未満である同条に規定する短時間労働者(以下この号において「短時間労働者」という。)又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの イ一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。ロ 当該事業所に継続して一年以上使用されることが見込まれないこと。ハ 報酬(最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、第四十二条第一項の規定の例により算定した額が、八万八千円未満であること。ニ 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十条に規定する高等学校の生徒、同法第八十三条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。
*2:賃金月額に算入しない項目例:結婚手当、賞与、割増賃金、制皆勤手当、通勤手当、家族手当等
*3:法人番号が同一の適用事業所で被保険者(短時間労働者を除き、共済組合員を含む)の数が1年で6カ月以上500人を超えると見込まれる事業所