コーヒーブレークQ&A 有給休暇(あなた、低反発の枕買おうか?)

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 社員Aさん:課長、今まで仕事が忙しく、皆バタバタしていたので言い出しづらかったのですが、私の延期になっていた有給休暇そろそろ取りたいと思っているのですが・・・ 

先日土曜日の同窓会での同級生の話では、「どこの会社も夏休みがあるのにお宅の会社にはないの?」と不思議な顔をされましたよ。

それで、もしかしたら本当は当社にも社員が請求できる夏休みという制度があって自分が知らないだけかもしれないと思ったんですが、どうなんでしょう?

 

課長:そんな制度うちの会社にはないよ。君は何年うちの会社で働いてるんです!

今まで当社の就業規則見たことないんですか?

今度時間に余裕があるときにちゃんと見ておきなさい。

それにしても突然じゃないですか? 何か急用とかあるんですか?

子供さん達の夏休みも終わってしまいましたよね!

あっ、そうか、失礼!君のところは子供いなかったんですよね。ところで、例の仕事はどうなったんですか?当社では、今まで営業目標達成できない人がそんなこと言ってきたことはないんですよ。

それに疲れがたまっているのに、なぜ有給休暇が必要なんだね。

 

社員Aさん:

・・・? いや!私もまさか今月に有給休暇が取れそうになるなんて思ってもいませんでした。ただ、今までずっと延期になっていたもんですから、仕事も順調にすすんでいて、ひと段落してきた今のうちに予定を確認しておきたいなぁと思いまして…土日含めて9日間戴きたいのですが?

 

課長:

君も想像つくだろうけど、皆同じこと言うんだよ。わかってる?

それに連続5日って、どんなもんなんですかね〜。

慶弔休暇でもあるまいし、土日を含めると9日って、今の日本のサービス業の会社でそんな会社があるなんて聞いたことないよ。

 

社員Aさん:

しかしですね、こう言っては何ですが、私は今年に入って1日も有給なんて戴いておりませんから、今年の分も含めて30日の有給休暇の請求権があるはずなんですよね?

それに、女房が来年から復職が決まっておりまして、私と2人でゆっくりする時間が少なくなりそうなんです。

 

課長:私が個人的な有給の残日数まで、頭の中に事細かに入っているわけないだろう?

本部の人事課に確認して給与明細に有給の残日数を記載してもらうからそちらで確認しておいてくれ!

来年になったら5日くらいは、取れるんじゃないか?

 

皆さんお待たせいたしました。今年の夏は猛暑だったことがとても印象深かったので、夏休みにちなんで有給休暇のテーマを取り上げてみようかと思い立ちました。

私に関しては、前回の投稿からかなりの休養をいただいたおかげで、かなり充電させていただきました。

皆さんは、お盆休みはいかがお過ごしでしたでしょうか?

今年も残すところわずかとなってしまいましたが、夏休みは猛暑でどこにも出かける気がしなかったので、(年末年始の休みにはしっかりと休暇の予定を入れるぞ)と生き込んでいる方もいらっしゃるかもしれませんね。
会社によっては、10連休なんていう話を聞いたりしますよね。 

そういう休みが取れる人の中には、Hawaiiなんかで家族とゆっくりされたかたもいらっしゃるかもしれませんよね。
私もサラリーマン時代にはそんな話を聞くたびに「羨ましいなぁ」と思っていた1人でした。

さて、今回のテーマ内容ですが、

出足からなんだか穏やかではない会話からのスタートとなっていますが、有給休暇というとどうしても上記会話の様な労使間のトラブルの種を連想させられてしまうのは私だけではないのではないでしょうか?

そもそも諸外国とは違い、日本の会社では有給休暇について労働基準法第39条に制度が規定されてはいますが、使用者に与える義務までは規定されていませんし、近年の長引く景気低迷や経営環境の急激な変化に対処していくため労働者が職場に遠慮して有給を申請(正式な意味での申請ではなく、有給の時季の指定を意味する。)しにくい環境があることを厚生労働省も認めていて、労働行政の有給促進のための様々な施策にもかかわらず、有給の消化率50%を切る状態相も変らぬらず続いているのが現状であるといわれています。*1

 さて、上記課長の会話の中にも出てきましたが、そもそも有給休暇はなぜ労働者に必要なのでしょうか?

前述しましたが、有給休暇というと使用者としてはできるだけ与えたくないものであり、逆に労働者の立場からは、できるだけ多く利用したいというもので、職場での労使対立の火種となることが多い労働者の権利ですよね。

私の労働基準監督署での相談員時代の経験からも、有給休暇をもらえないという相談は本当に本当に非常に多かったです。

業種にもよると思いますが、本当に日本のサラリーマンの多くの方が、有給休暇を取れずに悩んでいるんだなぁと思いました。

自分の楽しみのための休暇ならいざ知らず、切実な相談内容としては、働きずくめで休みがないから身体がどうにかなってしまいそうなのに、上司に相談しても休みくれないといったような内容の相談が多かったですね。

さて、話を「なぜ労働者には有給休暇が必要なのか」という内容に戻したいと思いますが、厚生労働省労働基準法等の一部を改正する法律案について」という資料の中の、(有給休暇制度の概要)という項目に出てくるその制度趣旨内容を引用すると、次のように記述されています。

○趣旨

労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、法定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与える制度

 上記の様に、まさに有給休暇の制度趣旨の中には労働者の心身の疲労を回復させるという一文が含まれており心身ともに疲弊しきった労働者がその回復を図るために有給休暇の取得権利を主張することは制度趣旨に合致しているわけです。

ただ、同じ職場の労働者は皆同じ条件の労働環境下での労働に従事しているはずですので、誰を優先的に休ませるのかという課題が現場監督者にとっては悩ましい問題であるのは間違いないでしょう。以前の記事でもお伝えしたように、精神的負荷には脆弱性の論理があり、体力とともに個人差があるからです。(心身の弱い人間が得をするという論理)

また、有給休暇の制度趣旨からはおかしな話ですが、使用者の立場としては、「疲れた疲れたと言うけれど、無給でもいいなら休むのか?」と言いたいこともあるかもしれません。

しかしながら、有給休暇制度について定めをした労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律であり、労使合意のうえでもその労働条件を下回ることを許されていない強行法規でありますし、使用者側には、以前お伝えように、民法の信義則上の一般的義務としての労働者に対する安全配慮義務を負っていることからも、いかなる場合においても労働者が有給休暇を取得できないことには問題があるということになるでしょう。使用者に認められている時季変更権は、労働者の適法な時季指定に対して、その求められた時季を別の時期に変更することを求めることができる権利であって、労働者に有給休暇を与えないことを認める権利ではないとされているからです。

 

前述した厚生労働省の「労働基準法等の一部を改正する法律案について」という資料によると、1年間で年休を1日も取得できていない労働者の 割合16.4%(平成23年時点の調査)という結果報告が記載されていました。条件等の詳細が不明ですのでなんともいえず、育休取得者等がその中に含まれているかどうかということでも数字の意味あいが違ってくるとは思いますが、それにしても16%は個人的には、多いなという印象をうけました。(それは、病気した時?に備えたくもなるよなという・・・)

最近は日本人の労働者の質の低下が云々言われるようになってきていますが、基本的に日本の労働者は、非常に真面目ですよね。そこに長期景気低迷と急速の国際競争の激化により経営を取り巻く環境が非常に厳しくなったことが企業のリストラクチャリングを加速させたことは説明するまでもないことでしょうけど、そういう環境の中で労働者も生き残りをかけた篩いにかけられる時代を経験しました。売り手市場と言われて久しい昨今でさえ、労働者に求められる資質として「環境変化に素早く適応できる能力」を指摘している人事労務関係の書籍も珍しくありません。(それらの書籍が休暇を取るなと言っているわけではないですので・・・念のため)

以上のような状況が、いまだ(指標は平成23年調査)に有給を1日も取れない労働者が16%も?いるという結果にいくばくか反映されているのでしょうか?

とにもかくにも、国も認めている通り日本人の真面目な気質と日本独自の雇用慣行により日本では有給休暇の取得率が伸びない原因となっているとも考えられますが、その真面目な日本人サラリーマンが有給休暇を取得できない真の理由は何か考えてみると、ざっと次のような理由が浮かんできました。

  • みんな忙しそうにしているのに自分が休むのは申し訳ない。
  • 有給休暇というのは、いざ病気やケガをして仕事ができなくなった時のためにその間の生活を保障してくれる制度として機能させたい。
  • 自分が責任を負っている自分にしかできない仕事があり、自分が休むと仕事が回らない
  • 業務に堪えないほど、虚弱体質と思われたくない。
  • 上司に偉いと思われたい。会社に必要な人間と思われたい。
  • 出向や業務負荷の極端な増加等苛めにあいたくない。
  • 過去の昇進昇格者実績を見ていて、有給休暇を取っていない人の方が早く昇進昇格している。
  • 一旦何日も休んでしまうと、業務の平準化に相当な期間を要する。
  • 休んでいない過酷な状況が営業するうえで、受注につながるほど優位になると思っている。

 以上の様に考えると、原因はお金であったり、業務効率化であったり、職場仲間への気兼ねであったりということに思いがいたります。

しかしながら、業務効率化について考えてみると、本当にそのようなことで問題が解決するのかという疑問もわいてきます。

というのも、企業は年々成長することを前提に経営されていますから、今年解決できた問題も翌年には何らかの施策がなければ、同じ問題に行き着くからです。

当然、毎年毎年対前年比売り上げ比率の増加を要求されるのが企業の宿命だと言えるでしょうから、放っておけば必ず業務負荷の増加という問題に直面するはずです。

では、売り上げが下がったら業務負荷が減るのでしょうか?

残念ながらそんなことはないと言われています。

製造業等、受注減に伴う生産調整の結果としてならありうるでしょうが、通常と変わらない仕事をしての売り上げ減という結果なので業務量が減ったわけではないからです。さらに売り上げ回復のための業務が発生しますので、売り上げが減っているのに業務負荷は逆に増加するというカラクリになっているそうです。(以上の論拠は、そのまま書籍からの抜粋ではありませんが、【人件費・要因管理の教科書日本能率協会コンサルティング 高原暢恭著 労政時報選書】を参考としています。)

この問題を深く掘り下げると、参考図書にある、「人件費・要因管理」の問題にまでいきついてしまいますので、今回の記事では取り上げません。

「うちの会社は社員に対する休暇についての理解がないのでとても休めない」という問題は別項目に検討するとして、ここでは、「忙しすぎてとてもじゃないけど休暇なんか取れない」という労働者の意識に焦点を当ててみたいと思います。

営業の神様と言われるブライアントレーシーの著書に「大富豪になる人の小さな習慣術」徳間書店という書籍があるのですが、その書籍の第9章【健康で快適な生活習慣】の中で次のような興味深いことが述べられていました。

 

定期的に休暇を取る

私のコーチング会社では毎年120日から150日の休みを取るように勧めている。最初の内は、誰も本気にしない。とうてい無理だ、そんなに休めるはずがない、忙しすぎるからといった調子だ。それどころか、もっと休みを減らして、たまる一方の職務を片づけたいという。(略)きちんと休みを取ると、あなたの仕事には少なからず変化が訪れる。まず、頭がすっきりして回転が良くなる。知力と想像力が増す。アイデアと洞察が次々に湧いて、周囲に大きく差をつけることができる。つまり就寝時間を早め、定期的に休暇を取るなどして休む機会を増やし、しっかり休んだ方が、人の生産性はアップし、ミスは減少し、出世のスピードも速まるということにならないだろうか。私はこの主題を、長年にわたり細かく調べてきた。そして導き出した結論は・・・・

 

(続きは次回)

 

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*1: 年次有給休暇の取得状況:平成 28 年(又は平成 27 会計年度)1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く。)は労働者1人平均 18.2 日(前年 18.1 日)、そのうち労働者が取得した日数は 9.0日(同 8.8 日)で、取得率 49.4%(同 48.7%)となっている。取得率を企業規模別にみると、1,000 人以上が 55.3%(同 54.7%)、300~999 人が 48.0%(同 47.1%)、100~299 人が 46.5%(同 44.8%)、30~99 人が 43.8%(同 43.7%)となっている。平成29年就労条件総合調査より

コーヒーブレイクQ&A 社会保障の歴史 フヨウの話?

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私には重度障害者の姉がいます。姉の心身の状況では満足に働けないため所得は殆どありません。従って、会社員である私が別居中の姉に生活補助費の仕送りをしています。以前は健康保険の被扶養者の認定について、弟妹は生計維持要件さえ満たせば同居要件は不要である一方同じ兄弟姉妹でありながら、兄姉に関しては同居要件が必要とされていたため私の被扶養者とすることができず、国民健康保険に加入していました。今般平成28年10月 1 日より兄姉の同居要件が廃止になったと聞きましたので、私は姉と同居していなくても健康保険の被扶養者とすることができますか?ちなみに私の姉は、来月から療養も兼ね米国に短期滞在する予定ですが、その場合でも被扶養者と認めてもらえるのでしょうか?

 

いつもの通り、健康保険の被扶養者に関して基本から確認していくことにしましょう。

まずは、健康保険の扶養という制度についてですが、健康保険法には、3条7項に「扶養」の定義が定められています*1が、同じ健康保険であってっも国民健康保険には扶養という制度はありません。

ここで我が国の社会保障制度の歴史につてい簡単に振り返ってみましょう。

我国の社会保障制度の歴史については、厚生労働省平成23年度版「厚生労働白書」に詳述が出ていますので、要所要所を抜粋したいと思います。

日本の社会保障制度は、医療保険や年金保険に代表される保険の仕組みを用いた社会保険方式*2と、生活保護等に代表される公費財源による公的扶助方式*3とに大別できるが、生活困窮対策が中心であった戦後復興期の一時期を除けば社会保険方式を中核として発展を遂げ、今から50年前の1961(昭和36)年すべての国民が医療保険及び年金による保障を受けられるという画期的な国民皆保険・皆年金」を実現した。

以上の様に日本の社会保障制度は「税方式」ではなく、「社会保険方式」を基本としています。

戦後の日本の社会保険制度は、「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利を保障するとした新憲法のもとで、新しい制度として成立するに至りましたが、その基本理念を構築したのは昭和24年に発足し、翌昭和25年10月に「社会保障制度に関する勧告」を内閣総理大臣に提出した社会保障制度審議会*4でした。同審議会での議論は、日本の社会保障制度が国の一般財源の基礎の上に構築されるべきか、社会保険料を財源とする社会保険制度の上に形成されるべきかという問題でしたが、当時の日本の社会保障のモデルとされたイギリスが社会保障方式*5を中心としたということもあり、社会保険方式を採用することとされ、現在でも、基本的にはこれが堅持されています。【平成22年度版 社労士ナンバーワンテキスト(TAC出版)より】

厚生労働省「各種制度の低所得者対策の経緯等」という資料に社会保障制度に関する勧告(昭和25年社会保障制度審議会)の概要が掲載されていますが、その資料によると、日本国憲法25条を受け、「社会保障制度に関する勧告」(昭和25年10月16日社会保障制度審議会)では、社会保障制度について概ね以下のような考え方を提示しているとされています。

日本国憲法25条*6の規定は、国民には生存権があり、国家には生活保障の義務があることを明らかにしている。

○ いわゆる社会保障制度」とは、困窮の原因に対し、保険又は直接公の負担において経済保障を図り生活困窮に陥ったものに対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることである

国家が責任をとる以上は、国民もまた、社会連帯の精神に立って、それぞれその能力に応じてこの制度の維持と運用に必要な社会的義務を果たさなければならない

社会保障の中心は、自らそれに必要な経費を負担する社会保険制度としつつ、保険制度のみでは救済し得ない困窮者に対しては、国家が直接扶助し、その最低限度の生活を保障しなければならない。更にすすんで、国民の健康の保持増進のための公衆衛生、国民生活の破綻を防衛するための社会福祉行政の拡充を同時に推進しなければならない。

以上の様に1950(昭和25)年の勧告当時は社会保障の理念最低限度の生活の保障でしたが、その後、社会保障制度審議会では、1991(平成3)年に設けた社会保障将来像委員会第1次報告「社会保障の理念等の見直しについて」(1993年)の中で、社会保障について、「国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民にすこやかで安心できる生活を保障することを目的として、公的責任で生活を支える給付を行うもの」と定義しました。 同審議会では、この報告等を基にした1995年の勧告*7で、「広く国民にすこやかで安心できる生活を保障すること」社会保障の基本的な理念であると上述した1950(昭和25)年の勧告当時の社会保障の理念との相違を述べ、国民の自立と社会連帯の考え社会保障制度を支える基盤となることを強調しました。勧告の中で示された普遍性・公平性・総合性・権利性・有効性という社会保障推進の5原則とそこに示された基本的考え方の多くは、社会保障体制の再構築を求めるものであり、後の介護保険制度の法制化等に結びついたとされています。厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」より】

 

 

日本の社会保障制度の特徴 厚生労働省「各種制度の低所得者対策の経緯等」より)

1 すべての国民の年金、医療、介護をカバー国民皆保険・皆年金体制)

社会保障給付の大宗を占める年金医療介護は、社会保険方式により運営

・ 年金制度は、高齢期の生活の基本的部分を支える年金を保障

医療保険制度は、「誰でも、いつでも、どこでも」保険証1枚で医療を受けられる医療を保障

介護保険制度は、加齢に伴う要介護状態になっても自立した生活を営むことが出来るよう必要な介護を保障

社会保険方式に公費も投入し、「保険料」と「税」の組み合わせによる財政運営

社会保障の財源は、約60%が保険料。約30%が公費、約10%が資産収入等で、保険料中心の構成

3 「サラリーマン(被用者)グループ」と「自営業者等グループ」の2本立て

・ サラリーマン(被用者)を対象とする職域保険(健康保険、厚生年金)と自営業者、農業者、高齢者等を対象とする自営業者等グループ(国民健康保険国民年金)の2つの制度で構成

4 国・都道府県・市町村が責任・役割を分担・連携

・ 年金等は国、医療行政は都道府県、福祉行政は市町村がそれぞれ中心となって、社会保障制度を運営・医療・福祉サービスは、民間主体が重要な役割を果たしている。

 

社会保障制度の発足の歴史を上述した資料から世界的に振り返ると、労働争議等の労働問題の深刻化という社会情勢と密接に関係しているようです。世界で初めて社会保障制度ができたとされるドイツでも我が国でもそのような労働問題の社会的深刻化が発足の発端とされています。日本初の医療保険の誕生は、まさにそのような混乱の中にあった状況下、政府が、労使関係の対立緩和、社会不安の沈静化を図る観点から、ドイツに倣い労働者を対象とする疾病保険制度の検討を開始し、1922(大正11)年「健康保険法」を制定したのが始まりとされています。*8

このように、我国の医療保険も年金も、戦前から、工業化の進展に伴う労働問題の発生等に対応して、被用者保険を中心に制度化の動きが進んでいたのですが、終戦直後は、生活困窮者への生活援護施策や感染症対策が中心となったとされています。昭和30年代の初めには被用者保険の整備は進んでいたのですが、農家や自営業者などを中心に国民の多くが医療保険制度や年金制度の対象ではなかったため、1961(昭和36)年地域保険である国民健康保険国民年金にこれらの者を加入させることで国民皆保険・皆年金が実現し、以後、国民皆保険・皆年金は日本の社会保障の中核として発展していったとされています。 厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P32より】

以上の様に我国の国民皆保険・皆年金が実現が昭和36年に実現したということがよく言われているため、国民健康保険ができたのが昭和36年であるかのような誤解があるようですが、実は、国民健康保険が制度化されたのは第一次世界大戦終戦後の1938(昭和13)年4月制定され、同年7月施行されています。

制度化のきっかけは、第一次世界大戦終戦後の大正末期の戦後恐慌とその後昭和に入ってからの金融恐慌世界恐慌と相次いで発生した昭和恐慌が、その後の東北地方を中心に発生した大凶作等と相まって農村を中心とする地域社会を不安に陥れたことだとされています。困窮に陥った農家では赤字が続き、負債の多くを医療費が占めていたとされています。*9 そこで、当時社会保険を所管した内務省は、農村における貧困と疾病の連鎖を切断し、併せて医療の確保や医療費軽減を図るため、農民等を被保険者とする国民健康保険制度の創設を検討したとされています。*10

 日本は過去にも、戦時体制に突入することとなる状況下において、健兵健民政策を推進すべく国民健康保険の一大普及計画が全国で実施され、1945(昭和20)年には組合数、被保険者数ともに一定の量的拡大に成功しましたが、組合数の量的拡大は必ずしも質を伴うものでなく、戦局悪化のため皆保険計画は目標どおりに進まなかったという経緯があります。しかしながら国民健康保険は、先進国に前例のある被用者保険と異なり、日本特有の地域保険としての性格を有していたため、国民健康保険の誕生は、日本の医療保険が労働保険の域を脱し国民全般をも対象に含むこととなり、戦後の国民皆保険制度展開の基礎が戦前のこの時期に作り上げられたことを意味したとされています。

上述したように、その後我国の「国民皆保険・皆年金」は、1955(昭和30)年頃に始まった「神武景気」による本格的な経済成長といわゆる「人口ボーナス」という時代の波に支えられて達成されることになりますが、当時の国民健康保険の医療給付については、その給付範囲、給付率とも健康保険などの被用者保険と比べて水準が低いという問題*11があったとされており、国民健康保険の給付率について被用者保険の水準にできるだけ近づけることが要請され、1961(昭和36)年国民健康保険法改正により世帯主結核性疾病又は精神障害について同年10月より給付率が5割から7割に引上げられ、1963(昭和38)年同法改正によって世帯主の全疾病について原則として給付率が7割に引上げられ、更にその後、1966(昭和41)年同法改正によって世帯員*12に対する法定給付割合が5割から7割に引上げられることが決定し、1968(昭和43)年1月より実施されたという経緯をたどることになります。

日本は、高度経済成長の始まる前述の神武景気の頃(昭和30年頃)より核家族化の傾向があったとされていますが、その後昭和30年代後半にはその傾向が顕著となっていき、老人に対する扶養意識の減退がみられるようになったとされており、そのことが一人暮らし老人寝たきり老人の問題を顕在化させる結果となり、世界で初めての老人関係法と言われる老人福祉法(1963年)の制定につながります。 

 国連の定義では、65歳以上人口比が7%を超えると高齢化社会14%を超えると高齢社会と言われていますが、日本は1970年(昭和45年)に高齢化社会の仲間入りを果たし、1955年頃まで横ばいで推移していた高齢化率は、この年を境に上昇に転じ、高齢化社会の仲間入りを果たして僅か24年後の1994年(平成6年)には高齢化率が14.5%を上回り高齢社会に突入したとされています。

以上の様な高齢化の進展や高度経済成長に伴う社会構造の変化にともないもたらされた世帯構造の変化等に伴い、家庭が担っていた扶養能力の低下がますます顕著となり、社会保障需要は一層増大する形となっていったということです。

一般的に言って、経済が成長し、企業規模が拡大していくと組織での働き方も全国規模の転勤等が当たり前となっていくという理由なども核家族化を加速させた要因の一つと考えてよいと思います。

今回の記事のメイン資料である厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」】の中でも、日本が国連定義の高齢化社会の仲間入りをした1970(昭和45)年には、高度経済成長に伴う求人難のため、当時の新規学校卒業者の主力であった新規高卒者に対する企業の求人倍率7倍にも達し、企業にとっては労働者の確保・定着を図ることが重要な課題とされたことが、「日本型雇用慣行」を大企業を中心に普及・拡大させた要因として説明されていますが、その日本型雇用慣行の普及・定着はサラリーマンとして働く夫とそれを支える専業主婦という世帯構成の一般化をもたらしたとしています。

その後、日本は二度にわたるオイルショックを経験し、経済は低成長時代を迎えることになるのですが、それに伴い1970年代以降、上述した専業主婦の割合が低下し、代わって共働き世帯増加していきバブル経済が崩壊してからの1990年代以降は、専業主婦世帯を上回るようになったということです。

 このような共働き世帯の増加は、女性の労働者の増加という形を意味しますが、それはそのまま女性の社会での活躍という社会進出の進展を意味するものではなく、日本古来の固定的な性別役割分業を前提とした単純、補助的な業務に限定し男性とは異なる取扱いをおこなうというもので、必ずしも女性の能力発揮を可能とするような環境が整えられているとは言えない状況にあり、そのような環境を整備することが大きな課題とされていた状況を踏まえ1985(昭和60)年男女雇用機会均等法が制定されることになります。同法の制定により、女性の社会進出が一層進むことになったということですが、こうした女性労働者達が仕事を続けるうえでの困難な障害を克服し、仕事も家庭も充実した生活を送ることができる働きやすい環境づくりを進めるため、1991(平成3)年育児休業等に関する法律」が、1999(平成11)年には「育児・介護休業法」が制定されるという流れになります。

高齢化の問題の一つである老人医療の問題については、1963(昭和38)年に前述した老人福祉法が制定されていたのですが、日本が高齢化社会に突入する1970(昭和45)年当時は、一般的に高齢者は低収入で当時の年金制度も未成熟であったことや家族給付率が5割であったことから、老人医療費の無料化を求める声が強かったことや高齢者たちが高額な医療費を避けるため受療を敬遠するような問題を避けるため、福祉元年と言われる1973(昭和48)年1月からは、70歳以上の高齢者を対象とした老人医療費支給制度が老人福祉法を一部改正する形で制度化され、高齢者の医療費負担が無料化されました。さらに、同年には医療保険制度では、健康保険の家族給付率の引上げ(5 割から7割)や高額療養費制度の創設などが行われます。

 その後、 経済成長の鈍化にもかかわらず、医療費の伸びは増加傾向の一途をたどることになるのですが、そのような状況の下での医療保険財政の大幅に悪化に対処するため、1984(昭和59)年にサラリーマンの被保険者本人自己負担1割に、1997(平成9)年には1割から2割へ、更に2002(平成14)年度には3割に引上げられるといった健康保険法の改正が行われます。

一方、1973(昭和48)年からの高齢者を対象とした老人医療費支給制度による老人医療費の無料化は、その後の「病院のサロン化」「過剰受診・過剰診療」の問題を引き起こし国民健康保険の財政を圧迫することになったため、1982(昭和57)年の「老人保健法」*13の制定に伴い終了することになります。高齢者医療制度については、高齢者の自己負担を1割、現役並み所得の場合は2割とした(2008年に3割に引上げ)上で、老人保健法の対象年齢を70歳から75歳への引上げ、公費負担割合を3割から5割への引上げ等の改正が行われますが、2006(平成18)年に成立した「健康保険法等の一部を改正する法律」 により、2008年4月から老人保健制度に代わる後期高齢者医療制度が実施されることになります。

 

以上、今回は、設定問答の健康保険の扶養に関するテーマに入る前に、我国の社会保障の歴史について、医療保険制度を中心に振り返りを試みました。我が国の国民皆保険・皆年金については、文字通り年金制度とのかかわりを抜きにはあり得ないのですが、スペースの都合等もあり年金制度の歴史変遷まで触れることはしませんでした。興味のある方は、今回のメイン資料である平成23年度版 厚生労働白書」に詳述の解説がありますので、参考にしてください。

 

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*1:健康保険法(最終更新:平成二十七年五月二十九日公布(平成二十七年法律第三十一号)改正)3条7 この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者をいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者は、この限りでない。 被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下この項において同じ。)の直系尊属、配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この項において同じ。)、子、孫及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの  被保険者の三親等内の親族で前号に掲げる者以外のものであって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの  被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの  前号の配偶者の死亡後におけるその父母及び子であって、引き続きその被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの

*2:社会保険とは、保険の技術を用い保険料を財源として給付を行う仕組みであり、国や公的な団体を保険者とし、被保険者は強制加入が原則である医療保険制度金保険制度が典型的な例である。

*3: 社会扶助とは、租税を財源にして保険の技術を用いずに給付を行う仕組みであり、国や地方公共団体の施策として、国民や住民に対して現金またはサービスの提供が行われる仕組みである。その典型は、公的扶助制度である生活保護制度であるが、児童福祉、障害福祉といった社会福祉制度や、児童手当福祉年金国民年金制度創設時に、既に高齢のために提供対象外となった層に対する措置として、保険料負担を必要としない無拠出の年金制度)も含まれる

*4:内閣総理大臣の諮問機関として昭和24(1949)年に発足し、我国の社会保障制度について、50年余にわたり審議・勧告等を行っていたが、平成13(2001)年中央省庁の再編に伴い廃止された。1947(昭和22)年、GHQの招聘により来日したワンデル博士を団長とするアメリ社会保障制度調査団の調査報告書に基づき、1948(昭和23)年12月に社会保障制度審議会が設立された。社会保障制度審議会は首相の直轄とされ、国会議員、学識経験者、関係諸団体代表及び関係各省事務次官40名で構成された。

*5:1942(昭和17)年の英国のベヴァリッジ報告社会保障制度の主要手段として社会保険を位置づけ、欧米諸国の福祉国家の考えの基礎となった。日本でも、日本国憲法の制定により 社会保障に対する国の責務が規定され、社会保障制度審議会1950(昭和25)年社会保障制度に関する勧告」において社会保険を中核に社会保障制度を構築すべきとした。

*6: 日本国憲法第25条は、(1)「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(2)「国は、すべての生活部面について社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と、規定している。

*7:社会保障体制の再構築(勧告)~安心して暮らせる21世紀の社会をめざして」

*8:日本では、第1次世界大戦(1914年~1918年)をきっかけに空前の好景気を迎え、重化学工業を中心に急速に工業化が進展し、労働者数は大幅に増加した。一方で、急激なインフレで労働者の実質賃金は低下したほか、米価の急上昇により全国で米騒動が発生した。また、第1 次世界大戦後は一転して「戦後恐慌」と呼ばれる不況となり、大量の失業者が発生した。このため、賃金引上げや解雇反対等を求める労働争議が頻発し、労働運動が激化した。厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P35より】

*9:困窮に陥った農家では欠食児童や婦女子の身売りが続出し、大きな社会問題となった。厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P36より】

*10:当時の国民健康保険の実施主体は現在のように市町村ではなく、組合単位で設立することができることとされていて、その設立も加入も基本的に任意であった。また、保険給付には療養助産葬祭給付があり、その種類や範囲は組合で決めることができるとされた。厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P36より】

*11:給付の範囲については、往診、歯科診療における補てつ、入院の際の給食、寝具設備の給付は、当分の間、行わなくてよいとされていたため、これらの給付の制限を行っている保険者が少なくなかった。厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P45より】

*12:世帯員とは、世帯を構成する各人をいう。ただし、社会福祉施設に入所している者、単身赴任者(出稼ぎ者及び長期海外出張者を含む。)、遊学中の者、別居中の者、預けた里子、収監中の者を除く。厚生労働省のサイト資料「世帯員とは」より

*13:老人保健法は、①老人医療費支給制度を廃止し、高齢者にも一部負担を求めることとしたこと、②老人医療費に要する費用について国、地方公共団体が3割(国20%、都道府県5%、 市町村5%)を負担し、各保険者が7割を拠出することにより全国民が公平に負担することとし、国民健康保険財政の救済策を講じたこと、③疾病予防や健康づくりを含む総合的な老人保健医療対策を盛り込むことなど、負担の公平、健康への自覚や適正な受診を促すという趣旨の法律であった。 2008年4月に「高齢者の医療の確保に関する法律」と改称された。厚生労働省 平成23年度版「厚生労働白書」P57より】 

暑中お見舞い申し上げます。

最近少し記事のペースが落ちたんじゃない?

いやぁ本当にそう思います。

ゴーストライター(私が勝手に名付けた、私の中の別人格)はやる気になっているみたいなのですが・・・

少しでも良いものを書こうと思って気負いすぎてしまった感も否めないではないですね。

私が住む九州では、7月9日に梅雨明けしましたが、その一日前まで物凄い豪雨でしたから、信じられないほどの天候の差を感じています。熱い。

今年ももうすぐ、社労士試験日がやってきます。

もう10年以上前の話になってしまいましたが、いつも試験日は猛暑です。

受験者の皆様は、くれぐれも身体に十分注意して試験に臨んでください。

それと、毎回携帯電話や時計のアラームで退場になる方が必ずいらっしゃいますので

併せて注意しましょう。

ということで、記事を楽しみにしてくれている読者の方達へ

次回記事もう少しお待ちくださいというご案内でした。

 

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コーヒーブレークQ&A 社会保険の適用拡大(かつ丼うまいか?)

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Q. 先日、貴事務所から当社の質問に対してご回答いただいた通り、定年再雇用者の資格の同日得喪の手続きを行うため管轄年金事務所に行きました。その時持参した書類は、特別支給の老齢厚生年金の受給権者のみの得喪の書類と他の継続雇用者の分も含む賞与支払い届でしたが、後日、年金事務所職員の方から電話があり、「賞与支払い届に載っている他の60歳到達者は、継続雇用されないのですか?その場合でも資格喪失届は必要ですよ」と言われました。それと当社は、従業員が約700名の中小企業なのですが、今回、社会保険の適用拡大が行われていますが、該当漏れはないですかともいわれました。どのような事か説明してください。

 

A.

前回の御社のご質問の回答の際、「報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金の受給権者である被保険者であって、定年による退職後継続して雇用される者については、使用関係がいったん中断したものとみなし、事業主から被保険者資格喪失届および被保険者資格取得届を提出させる取扱いとして差し支えないこととされています。」という回答の仕方をしたため、誤解を与えてしまったようです。

もう一度、原則から確認させていただきます。

1.被保険者資格の同日得喪の特例的取扱い

原則:同一の事業所において雇用契約上一旦退職した者が1日の空白もなく引き続き雇用された場合は、退職金の支払いの有無又は身分関係若しくは職務内容の変更の有無にかかわらず、その者の事実上の使用関係は中断なく存続していますから、被保険者の資格も存続し、資格の得喪の手続きは要しません

特例:被保険者であって、定年による退職後継続して雇用される者については、使用関係がいったん中断したものとみなし、事業主から被保険者資格喪失届および被保険者資格取得届を提出させる取扱いとして差し支えないこととされています。

 この特例的取扱いについては、従来は特別支給(60歳代前半)の老齢厚生年金受給権者のみが対象の特例でしたが、平成22年9月から定年制の有無や定年退職であるかどうかに関わらず60歳〜64歳までの受給権者の退職後継続再雇用であれば対象とされ、更に平成25年4月からの老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢の引き上げにともない、60歳以降に退職後継続雇用されるすべての者に適用が拡大されています。

従って、今回の御社のご質問にもある通り、御社の定年再雇用対象者の中に報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金受給権者がいない場合であっても、その者が60歳以上の定年後再雇用者に該当している者であれば適用の対象になることになります。

しかしながら、前回の記事で御社のケースを検証すると、資格取得時報酬が給与締め日と実際の支給日との関係で減額された報酬とはなりませんので、同日得喪の手続きを踏む具体的な必要性というもの自体考えられません。(退職日を境に案分支給される賞与の賞与支払い届は、資格の同日得喪の手続き有無とは関係なく賞与支払い日から5日以内に提出しなければならないからです。)

ただし、今から説明する御社からのもう一つのご質問である社会保険の適用拡大の問題があります。

 

2.社会保険の適用拡大

㋐ 平成28年10月より従来内翰(ないかん)の基準(4分の3基準)として取り扱われていた社会保険の適用基準法律により明確化されました。           (健康保険法第3条9、厚生年金保険法第12条5*1

㋑ 特定適用事業所に勤務する短時間労働者に関しては上記基準をみたしていない場合であってっも一定の要件に該当することにより適用対象者となります。

㋒ 平成29年4月1日からは、500人以下の企業等でも、①労使合意にもとづき申出する法人・個人の事業所、②地方公共団体に属する事業所に勤務する短時間労働者は被保険者の適用対象となっています。(国に属するすべての事業所は平成28年10月から適用開始)

 

 

㋐ 適用基準の明確化

改正前(内翰)

改正後(法律)

(a)1日または1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が常時雇用者のおおむね4分の3以上

(a)1日または1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上

(b)上記基準に該当しない場合でも、就労形態や勤務内容等から総合的に勘案し、常用的使用関係にあると認められる場合は被保険者となります

(b)廃止

 

 ㋑特定適用事業所に勤務する短時間労働者

平成28年10月からは、前期「4分の3基準」を満たさなくとも、次の要件をすべて満たすことにより社会保険への適用が拡大されています。

①週の所定労働時間が20時間以上
②賃金の月額が8.8万円以上(年収106万円以上)*2               ③勤務期間が1年以上見込まれる                         ④学生でない(夜間、通信、定時制の方は除きます。)
➄従業員501人以上の企業(特定適用事業所)*3に勤務している

要件に社会保険への適用が拡大されています。

 

㋒平成29年4月1日からの適用拡大

・上記㋑の①~④の要件を満たすこと

・任意特定適用事業所*4に勤務している若しくは地方公共団体に属する事業所に勤務している

 

3.特定適用事業所の取り扱い 

以上の様に、社会保険の適用拡大が行われているわけですが、今回の適用拡大の実施に伴い、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合は、法人事業所であっても個人事業所であっても、各適用事業所がその者に係る被保険者資格取得届を事務センター(又は年金事務所)へ届け出る必要があります。
健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者資格取得については、健康保険組合へ届け出ることになります。)

所謂 4分の3基準を満たさない場合でも上記㋑の5要件を満たす場合に適用される特定適用事業所に該当しているかの判断については、常時500人を超える被保険者を使用しているか否かがその判断基準になります。

 従って、御社は従業員が約700名であるということですが、その使用する従業員のうち500人を超える被保険者を使用している状態が常時に該当しなければ、特定適用事業所には該当しないことになります。

常時500人を超えるとは、法人番号が同一の適用事業所で被保険者(短時間労働者を除き、共済組合員を含む)の数が1年で6カ月以上500人を超えると見込まれる場合をいい、そのような状態が見込まれる場合には、「特定適用事業所該当届」を管轄の年金事務所へ届け出る必要があります。

要件を満たしているにもかかわらず提出がない場合であっても、日本年金機構において判定を行い要件を満たしていることが確認できた場合は「特定適用事業所該当通知書」が送付されることになっています。

一旦、特定適用事業所に該当した場合は、使用される厚生年季保険の被保険者の総数が常時500人を超えなくなった場合であっても、引き続き特定適用事業所であるものとして取り扱われるのが原則ですが、使用される被保険者の4分の3以上の同意を得たことを証する書類を添えて、事務センター(又は年金事務所)へ「特定適用事業所不該当届」を届け出た場合は、対象の適用事業所は特定適用事業所に該当しなくなったものとして扱われることになります。 

その場合の手続きとしては、法人事業所の場合は、特定適用事業所該当届の届出方法と同様に、同一の法人番号を有するすべての適用事業所を代表する本店又は主たる事業所から、事務センター(又は年金事務所)へ特定適用事業所不該当届を届け出ることになります。このとき、各適用事業所は、適用拡大の実施に伴い新たに被保険者資格を取得した短時間労働者に係る被保険者資格喪失届を事務センター(又は年金事務所)へ届出る必要があります。
健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者資格取得については、健康保険組合へ届け出ることになります。)

 さて、御社の今回の継続再雇用対象者についてですが、今回の適用拡大で何か影響があるでしょうか?

まずは、今回の適用拡大で、従来の内翰(ないかん)の基準(おおむね4分の3以上基準)として取り扱われていた社会保険の適用基準が法律により明確化(4分の3以上基準)されたことに伴い、「基準を満たさない場合であっても、就労形態や勤務内容等から総合的に勘案し常用的使用関係が認められる場合には被保険者とする」という取り扱いが廃止されたことがあります。

御社の継続再雇用対象者の中に、そのような総合勘案で被保険者扱いとなっていた者は、上記取扱いの廃止により被保険者資格を喪失することになるのかが問題となります。

しかしながら、今回の適用拡大での取り扱いでは、4分の3基準及び5要件満たしていない場合であっても、施行日前から被保険者資格を取得しており、施行日以降も引き続き同じ事業所に使用されている間は、引き続き被保険者資格を有する扱いとされます。

従って、御社の継続再雇用が適用拡大の施行日前に行われていた場合には、ケースによっては新たな基準の影響を受けるか否かが変わってくることがありえます。

まず、継続再雇用時点で従来基準(内翰(ないかん)の基準)により継続雇用後も被保険者とされていたのであれば、施行日後も4分の3基準や5要件に関係なく引き続き被保険者扱いとなりますので何も影響がないということになります。

問題は、継続再雇用の時点で従来基準(内翰(ないかん)の基準)により継続雇用後は被保険者とされず(4分の3基準を満たさない有期雇用契約やパート等の就労形態)、資格喪失扱いになっていた者でも施行日後に新基準を満たした場合には被保険者とされることがあるということです。

(4分の3基準について)

就業規則雇用契約書等で定められた所定労働時間または所定労働日数が4分の3基準を満たさないものであっても、実際の労働時間及び労働日数連続する2月において4分の3基準を満たした場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれるときは、4分の3基準を満たした月の3月目の初日に資格を取得します。

(5要件について)
短時間労働者として5要件をすべて満たした場合は、4分の3基準と関係なくその時点から、被保険者の資格を取得します。

以上の様に御社定年再雇用に関しては、適用拡大施行前に被保険者資格を喪失している者のみ影響することが考えられますが、御社も含めそのようなことが問題になるケースというのは殆どないと思われます。

ですから御社としては、定年再雇用に与える影響よりは、今まで社会保険の被保険者でなかった従業員で新たな適用対象となる者がでてくることによる人員計画に与える影響の方が重大であろうと思われます。

因みに、適用拡大後の継続再雇用の考えについては、新しい基準(4分の3基準や5要件)でそのまま適用の可否が判断されるということです。

 

その他5要件の注意事項

(週の所定労働時間が20時間以上について)

4週5休制等のため、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し一定ではない場合等は、当該周期における1週間の所定労働時間を平均し算出します。
また、所定労働時間が1カ月単位で定められている場合、1年間を52週とし、1カ月を12分の52週とし、1カ月の所定労働時間を12分の52で除して算出しますが、所定労働時間が1年単位で定められている場合は、その1年の所定労働時間を52で除して算出します。
夏季休暇等のため、夏季の特定の月の所定労働時間が例外的に短く定められている場合や繁忙期間中の特定の月の所定労働時間が例外的に長く定められている場合等は、当該特定の月以外の通常の月の所定労働時間を12分の52で除して算出します。

(勤務期間が1年以上見込まれる について)
雇用契約書その他書面においてその契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されているが、契約更新が1日ないし数日の間をあけて行われる場合は、就労の実態に照らして事実上の使用関係が中断することなく存続していると判断することができる場合には、雇用期間が継続して1年以上見込まれることとして取り扱うこととされています。
しかし、逆に雇用期間中であっても、一定期間勤務することを要しない期間において事実上の使用関係が失われることが明確である場合は、雇用期間は継続して1年以上見込まれないものとして取り扱われることになります。

 雇用期間が1年未満である場合であっても、次の㋐㋑のいずれかに該当する時は、雇用期間が継続して1年以上見込まれることとして取り扱われます。

就業規則雇用契約書等その他書面においてその契約が更新される旨または更新される場合がある旨が明示されていること

㋑同一の事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により1年以上雇用された実績があること
ただし、㋐㋑のいずれかに該当するときであっても、労使双方により、1年以上雇用しないことについて合意しているときは、雇用期間が継続して1年以上見込まれないこととして取り扱われます。

日々雇用されている者の場合や、2ヶ月以内の雇用期間で使用されている者の場合、従来とおり法に定められた所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った日から被保険者資格を取得する扱いとなります。

(賃金の月額が8.8万円以上について)

賃金月額の対象は、基本給及び諸手当で判断されますが、標準報酬月額の基礎となる報酬月額と違い、次の①~④の賃金は含まれません

①臨時に支払われる賃金 

②1月を超える期間ごとに支払われる賃金 

③時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金

最低賃金において参入しないことを定める賃金

従って、施行日前に資格喪失していた御社の社員が、再雇用契約により賃金月額が8.8万円以上となっている場合であっても、その金額の中に上記①~④の金額が含まれている場合には、その金額を控除後の金額が8.8万円に達していなければ資格取得することはありません。

ギリギリ8.8万円以上により被保険者資格を取得した場合であっても、保険料の算定の基礎となる報酬月額には、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものが含まれるため、短時間労働者の被保険者資格の取得に当たっての要件(月額8.8万円以上)の判定の際に算入しなかった諸手当等も加味して報酬月額が算出されます。

従って、企業側としては新たに発生する社会保険料を含め人件費を極力抑えたい場合には、残業手当の基礎賃金に含まれない手当てを増やして対処するしかないということになりますが、社会保険の適用を受け将来受け取る年金を増やせることは、労働者の企業側への忠誠心を高める等リテンションに関わることであると同時に、生活関連手当の廃止や統廃合を検討している企業にとってはそのきっかけを失い、温存させなければならないことになってしまい賃金制度を含む人事制度改定に少なからず影響を与えることも考えられます。従って、成果主義的賃金制度改定を考える場合は、短期的なコスト増と受け止め、経過的措置を含め長期的に人件費がバランスするような制度設計を検討するしかないと思います。

一方で、被保険者の資格取得後に月額賃金が8.8万円未満となった場合の取り扱いは、

原則:賃金月額が基準を下回ったことの原因が資格取得後に雇用契約等が見直されたことによる場合を除き、被保険者資格を喪失することはありません。

例外:雇用契約等に変更はなくとも、状態的に8.8万円を下回る状況が続く場合は、実態を踏まえたうえで資格喪失することになります。

日給や時間給によって賃金が定められている場合は、被保険者の資格を取得する月前1月間に同じ事業所において同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける最も近似した状態にある者が受けた報酬の額の平均額を算出します。
ただし、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける最も近似した状態にある者がいないような場合は、個別の雇用契約等に基づいて月額賃金を算出します。 

なお、 健康保険の被扶養者の認定についての収入要件に変更はありませんが、年収が130万円未満であっても4分の3基準または5要件を満たした場合は、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。雇用保険の取扱いも同様であるため、週20時間未満で勤務する場合は、厚生年金保険・健康保険に加入できないだけでなく、雇用保険にも加入できないこととなりますので注意してください。

同時に2ヶ所以上の事業所で被保険者資格の取得要件を満たした場合、被保険者は、いずれか一つの事業所を選択いただき、その事業所を管轄する年金事務所および健康保険組合を選択する場合は健康保険組合「被保険者所属選択・2以上事業所勤務届」を提出いただく必要があります。(選択した事業所が健康保険組合に加入している場合、当該健康保険組合へも届け出る必要があります。)

なお、被保険者資格の取得要件を満たすか否かについては、各事業所単位で判断をおこなうこととしており、2ヶ所以上の事業所における月額賃金や労働時間等を合算することはしません。

以上平成28年10月からの適用拡大に伴い、約25万人のパートタイマーが新たに短時間労働者として健康保険・厚生年金保険の被保険者の対象となったとされています。

 

4.任意特定適用事業所の取り扱い

以上、特定適用事業所に該当したことによる主な留意事項を述べてきましたが、平成 29 年4月1日からは、500 人以下の企業にお勤めの方も、労使合意(働いている方々の2分の1以上と事業主の方が社会保険に加入することについて合意すること)がなされれば、上記㋑の①~④の要件を全て満たす短時間労働者の方は、企業単位で社会保険に加入できるようになりました。

加入に当たっては、事業主の方が管轄の年金事務所(健康保険組合に加入している企業については、健康保険組合にも申出を行っていただくことが必要です。)に対して、「任意特定適用事業所申出書」を提出することにより行います。

申出書の提出の際には、労使合意を行っている旨の同意書を添付する必要となりまが、同意対象者となるのは、(・ 厚生年金保険の被保険者70 歳以上被用者上記㋑の①~④の要件を全て満たす短時間労働者)です。

同意の方法は、同意対象者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合の同意が必要になります。
同意対象者の過半数で組織する労働組合がない場合は、⑴ 同意対象者の過半数を代表する者の同意または、⑵同意対象者の2分の1以上の同意のいずれかが必要になります。
そして、年金事務所等が事業主の方からの申出を受理した日に、上記㋑の①~④の要件を全て満たす短時間労働者の方は社会保険に加入することになります。

同意書に一律の有効期間はなく、申出が受理された後に、過半数代表者が退職した場合や同意した者が過半数割れした場合などでも改めて同意を取り直す必要はありませんが、その後の事情変更により、厚生年金保険の被保険者及び 70 歳以上被用者の4分の3以上の同意を得て、事業主が管轄の年金事務所等に社会保険から脱退する旨の申出を行い、受理された場合には、受理された日の翌日に、短時間労働者の方の社会保険の資格が喪失することになります。

その場合の申出も「4分の3以上同意対象者」の4分の3以上で組織する労働組合がある場合は、その労働組合の同意が必要になります。
労働組合がない場合は、⑴「4分の3以上同意対象者」の4分の3以上を代表する者の同意または、⑵「4分の3以上同意対象者」の4分の3以上の同意のいずれかの同意が必要になります。

 

以上が適用拡大の概要ですが、上述したように新たな社会保険の適用拡大は、企業にとって一方でコストである反面、今まで社会保険に加入した働き方を求めていながらも基準を満たせず加入できなかった労働者にとっては魅力ある制度であることは間違いありません。今回の適用拡大による短時間労働者への社会保険の適用が、企業の魅力を向上させ、 優秀な人材の確保にも効果的と考えられますので、企業の人員計画の中での適正人件費との均衡を考慮しつつも上手に活用しましょう。

モデルケース(月収88,000円) 保険料 増える年金額(目安)
40年間加入 月額8,000円/年額96,000円 月額19,300円/年額231,500円 × 終身
20年間加入 月額8,000円/年額96,000円 月額 9,700円/年額115,800円 × 終身
1年間加入 月額8,000円/年額96,000円 月額 500円/年額5,800円 × 終身

 

 適用拡大に関する詳細は厚生労働省ホームページを参照してください。

 平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大) |厚生労働省

 

【参考文献・資料】

 (参考文献)

・「社会保険のてびき 平成30年度版 社会保険研究所(編)」

・「社会保険の事務手続き 平成30年度版 社会保険研究所(編)」

(参考資料)

・「厚生労働省 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A 集」

・「厚生労働省 労使合意に基づく適用拡大Q&A集」

 

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*1:この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。(健保) 次の各号のいずれかに該当する者は、第九条及び第十条第一項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。(厚年):事業所に使用される者であって、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)第二条に規定する通常の労働者(以下この号において「通常の労働者」という。)の一週間の所定労働時間の四分の三未満である同条に規定する短時間労働者(以下この号において「短時間労働者」という。)又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの 一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。 当該事業所に継続して一年以上使用されることが見込まれないこと。 報酬(最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、第四十二条第一項の規定の例により算定した額が、八万八千円未満であること。 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十条に規定する高等学校の生徒、同法第八十三条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。

*2:賃金月額に算入しない項目例:結婚手当、賞与、割増賃金、制皆勤手当、通勤手当、家族手当等

*3:法人番号が同一の適用事業所で被保険者(短時間労働者を除き、共済組合員を含む)の数が1年で6カ月以上500人を超えると見込まれる事業所

*4:従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている事業所

コーヒーブレークQ&A 経歴詐称(学歴詐称)がなければ採用?

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Q.

当社就業規則には経歴詐称についての懲戒規定はないのですが、「その他の理由により会社の秩序を著しく乱した者」という規定があります。今回、採用面接時に非常に感じがよく、履歴書も優秀で健康面も問題がないと期待して採用していた当社社員の中に学歴を詐称していることが判明した社員がでてきました。当社としては非常に期待していた社員なだけに残念なのですが、今後の当社の企業秩序の事も考えると、現状のまま在籍させておくことにも問題があると判断しました。当社はこの社員を上記その他懲戒規定により懲戒解雇とすることができますか?

 

A.

ご質問の内容についてはいわゆる「経歴詐称」と言われる問題ですが、いつも通り「経歴詐称」の定義からおさらいしていきましょう。

経歴詐称とは、労働者が企業に採用される際に提出する履歴書や面接等において、学歴・職歴・犯罪歴・病歴などを詐称し、若しくは真実を秘匿することをいい、多くの企業の就業規則において懲戒解雇事由とされています。【Q&A労働法実務シリーズ6 解雇・退職 中町誠・中山慈夫(編) 加茂善仁(著)中央経済社

ここで、使用者の有する懲戒権についてですが、使用者は、自ら事業を経営する者として、あらゆる経営資源を一定の規律の基に秩序付け、事業の安定的発展に資するよう努める責務を有しているといえ、そういった要請に基づき自らの組織の秩序に合わないものを排除する権限を当然に有するのではないかを思われていますが、懲戒解雇は読んで字のごとく企業秩序違反に対する最も重い制裁を意味しています。一般的に使用者の有する解雇の自由に関しては、労働契約関係にその根拠を有していますが、同じ解雇ではあっても懲戒解雇の場合は社会的制裁の意味合いがあるという意味では同様ではありません。懲戒解雇事由に該当した場合は、退職金や賞与の不支給を定めた懲戒規定も数多く存在しますし、なんといっても一番の制裁的意味合いは社会復帰の困難さにあると言っても過言ではないでしょう。本人の正社員としての社会復帰を困難にし、不本意非正規雇用労働者に甘んじて生きていくことを強いられることも珍しくないからです。そういった意味で、労使対等の立場で締結されるべきである労働契約において、使用者のみが当然にそのような社会的制裁色の強い懲戒権を有していると解するのは困難であると説明されています。確かにそのような懲戒解雇の持つ社会的制裁色の強い機能が、労働者に与えるリスク回避的な思考に基づく秩序維持に果たす役割を過小評価できないと思いますが、懲戒権は労働契約に基づき使用者に当然に認められる権利ではなく、労使対等の立場で締結される労働契約上の特別の合意が必要であるとされています。

具体的には就業規則に、制裁の種類と程度を具体的に定めた懲戒既定の存在と、その様な規定の労働者への周知が必要になります。

そして、上記懲戒解雇を含む懲戒の性質から、そのような規定の存在と労働者への周知があれば、それだけで使用者の行使した懲戒権が正当と認められるわけではありません。以前の記事でもお伝えしたように、使用者の懲戒権の行使については、解雇権の乱用の法理によるチェックと同様、懲戒権の乱用がないかの司法による厳しいチェックがあります。従って、懲戒解雇の場合は解雇権濫用の法理プラス懲戒権の乱用の法理の二重のチェックを受けなければなりません。労働契約法には、その第15条で懲戒について、同16条に解雇について、過去の様々な判例から確立されてきたとされるそれぞれの権利濫用法理を労働契約締結に関する民事的ルールとして条文化しています。*1

更に上記解雇と懲戒の権利濫用法理の条文とは別に、労働者と使用者双方に適用される労働契約の原則として契約法では同3条4項においては、それぞれの権利義務についての信義誠実の原則を、同条5項においては、それぞれの労働契約の基づく権利行使に当たっての濫用禁止の規定を定めています。*2

  参考として、労働契約法制定当初に厚生労働省により発出された通達【労働契約法の施行について】(平成20年1月23日 基発第0123004号)による、同15条(懲戒)の内容の説明によると、使用者が労働者を懲戒することができる場合であっても、その懲戒が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には権利濫用に該当するものとして無効となることを明らかにするとともに、権利濫用であるか否かを判断するに当たっては、労働者の行為の性質及び態様その他の事情が考慮されることを規定したものであると説明しています。更に、同15条の懲戒とは、労働基準法89条第9号の「制裁」と同義であり、同条により、当該事業場に懲戒の定めがある場合には、その種類及び程度について就業規則に記載することが義務付けられているものであることと説明されています。

今回の御社の質問の中に、経歴詐称による懲戒を定めた就業規則がないということですから、まずは労働基準法の関係でいえば、御社が就業規則作成が義務付けられている常時使用労働者数10人以上の事業場であれば、経歴詐称による懲戒を定めた就業規則がないまま当該社員を当該学歴詐称を含む経歴詐称を理由に懲戒解雇を行えば、労働基準法89条の就業規則作成義務に違反することになります。一方で、そのような就業規則がない場合であっても、当該労働者との労働契約で「学歴詐称を含む経歴詐称があった場合は、懲戒解雇に処する」という内容を含む労働契約を締結していた場合はどうでしょうか?

残念ながらその場合であっても、労働基準法の有する強行的直立的効力により、当該労働契約は無効となり、その無効となった労働契約は労働基準法の定める基準まで引き上げられますので、やはり、経歴詐称を直接の理由に懲戒解雇はできないということになります。因みに労働契約法12条でも、労働基準法13条と同様、就業規則違反の労働契約の効力についての無効の規定が設けられており、無効となった労働契約の部分については、就業規則に定める基準によるという直立的効力の規定が定められています

 それでは、御社のご質問通り、その他の懲戒の定め「その他の理由により会社の秩序を著しく乱した者」を適用することには問題ないでしょうか?

もし適用できれば、労働基準法89条の違反の問題はクリアできることになります。

その問題を検討するため、懲戒解雇の一般的諸原則について復習も兼ね振り返ってみたいと思います。

上述したように、使用者の有する懲戒権は労働契約の特別の合意に基づき行使される民事上の権利と過去の多くの判例から解されていますが、その社会的制裁色の強さから刑事罰罪刑法定主義*3に類似した諸原則が適用されるとされています。

①明確性・該当性の原則

明確性というのは就業規則等に懲戒の種類と程度を明らかにした規定があるかどうかということであり、該当性というのは、原処分を行った事実が懲戒事由に該当しているかどうかということです。

②相当性の原則

上記①の要件を満たしていても、当該処分が社会通念に照らし相当でなければならないということです。

③不遡及の原則

処分当時に認識していなかった事実をもって、遡って懲戒の理由とすることはできないという原則のことです。

一事不再理の原則(二重罰の禁止)

判決を受け確定した事件に関しては、同じ事件で再び裁判することは許さないとする刑事訴訟法上の原則を懲戒処分に当てはめたもの。

1つの処分対象となった同じ事実をもって、別の懲戒処分の理由とすることはできないという原則のことです。

➄手続保障(弁明の機会)

懲戒処分を行う場合においては、その手続きの際に、弁明の機会を与える必要があるとする原則のことです。

⑥平等主義(不当な動機・目的の有無)

同じ種類・程度の違反を行ったものに対しては、その処分の内容も平等でなければならないという原則のことです。

【お気楽社労士の特定社労士受験ノート 特定社会保険労務士 佐々木昌司(著)住宅新報社

以上の様に、使用者の有する懲戒権には、原則、上記のような厳しい諸原則が適用されることになります。

問題の経歴詐称についてですが、一般的に経歴詐称の事実があってもそれだけで懲戒解雇ができるわけではないとされています。経歴詐称による懲戒解雇が有効とされるためには、重要な経歴の詐称であることが必要とされています。従って、御社の場合も、経歴詐称の事実があったのみでは、懲戒の規定は適用できないことになるため、 御社のその他懲戒の定め「その他の理由により会社の秩序を著しく乱した者」を適用するためには、その経歴詐称により会社の秩序を著しく乱した者である必要があります。(①明確性・該当性の原則)

前述したように懲戒の対象となるような重要な経歴の詐称には、学歴職歴犯罪歴年齢病歴などが代表的な項目とされています。

今回のご質問で問題とされているのは、学歴詐称に関することですが、学歴詐称についてはいわゆる学歴を本人の事実の学歴よりも高く詐称する場合のみならず、低く詐称する場合の問題も含まれます。また、学歴を高く詐称する問題については、高卒を大卒というように実際の学位よりも高い学位を詐称する場合のみならず、学位を詐称していなくても実際の卒業した学校よりもレベルの高い学校を卒業したように詐称することや、実際には中退で卒業していないにもかかわらず、高卒、大卒と卒業したかのように詐称することも含まれるとされています。

さて、その学歴詐称を含む重要な経歴詐称が何故上記の様な厳しい処分の正当な懲戒解雇の対象となりうるのでしょうか?

まず、そもそも重要な経歴の詐称とはどのようなことを言うのかについてですが、裁判例の中に、懲戒規定の解釈を述べて説明しているものがあるので次に引用します。

次に、前記条項にいう「重要な経歴をいつわり」とは如何なる場合をいうかを考えるに、それは、経歴のうち、使用者の認識の有無が当該労働者の採否に関して決定的な影響を与えるものについての秘匿又は詐称、換言すれば、労働者が真実の経歴を申告ないし回答したならば、社会通念上、使用者において雇用契約を締結しなかったであろうという因果関係の存在が認められる場合をいうものと解するのが相当である。

日本鋼管鶴見造船所事件1977年6月14日横浜地裁判決】

 

労働者が雇用契約の締結に際し、経歴について真実を告知していたならば、使用者は当該雇用契約を締結しなかったであろうと客観的に認められるような場合には、経歴詐称それ自体が、使用者と労働者との信頼関係を破壊するものであるといえることからすると、前記のような場合には、具体的な財産的損害の発生やその蓋然性がなくとも、「重要な経歴をいつわり採用された場合」に該当するというべきである。

【メッセ事件東京地裁平成22年11月10日判決】

従って、経歴詐称の事実があったとしても、上記裁判例で定義されているような状況にないようなケースでの経歴詐称の場合は、重要な経歴の詐称には該当しないということになり、そのような経歴詐称による懲戒解雇処分は、内容的には前述した、懲戒の諸原則である該当性の原則②相当性の原則を満たしていないことになりますので無効と判断されます。

 債務者は、昭和六〇年三月以降は、高卒以上の学歴の者でなければ採用しない方針である旨主張する(〈証拠略〉にも、これに副う部分がある。)。しかし、(証拠略)によれば、右の時点以降も、高卒未満の学歴の者が採用されていることが疎明されるから、債務者において真実この学歴要件を重視していることについては疑問があり(⑥平等主義)、この点は、少なくとも、就業規則五五条三号所定の「重要な経歴」にあたるとすることはできない。

【近藤化学工業事件1994年9月16日大阪地裁決定】

 

前認定のとおり、控訴会社は現場作業員として高校卒以下の学歴の者を採用する方針をとっていたものの募集広告に当って学歴に関する採用条件を明示せず、採用のための面接の際被控訴人に対し学歴について尋ねることなく、また、別途調査するということもなかった。控訴人は二か月間の試用期間を無事に了え、その後の勤務状況も普通で他の従業員よりも劣るということはなく、また、上司や同僚との関係に円滑を欠くということもなく、控訴会社の業務に支障を生じさせるということはなかったのであるから被控訴人の本件学歴詐称により控訴会社の経営秩序をそれだけで排除を相当とするほど乱したとはいえず、本件学歴詐称が経歴詐称に関する前記条項所定の懲戒事由に該当するものとみることはできず、本件主位的解雇の意思表示は、その余の点につき判断を加えるまでもなく、無効というべきである。

【西日本アルミニウム工業事件(1980年1月17日 福岡高裁判決)】

 学歴詐称のケースではなく、年齢詐称のケースですが、重要な経歴の詐称に該当するか否かの判断で問題とされるのは、①該当性の原則や②相当性の原則のみならず、③不遡及の原則が問題とされているものもあります。

使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである。これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによれば、本件懲戒解雇は、被上告人が休暇を請求したことやその際の応接態度等を理由としてされたものであって、本件懲戒解雇当時、上告人において、被上告人の年齢詐称の事実を認識していなかったというのであるから、右年齢詐称をもって本件懲戒解雇の有効性を根拠付けることはできない。

【山口観光事件1996年9月26日最高裁第一小法廷判決】

 以上の様に、経歴詐称に関しては重要な経歴の詐称については懲戒の対象にされているわけですが、多くの裁判例によると、その重要な経歴詐称が懲戒処分の対象となる根拠について、労使の信頼関係を基礎とする労働契約における継続的雇用関係により生ずる労働者の労働契約締結時における信義則上の義務にあるとしています。*4

 ところで、雇用契約は、継続的な契約関係であって、それは労働者と使用者との相互の信頼関係に基礎を置くものということができるから、使用者が、雇用契約の締結に先立ち、雇用しようとする労働者の経歴等、その労働力の評価と関係のある事項について必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は、信義則上、真実を告知すべき義務を負っているというべきである就業規則三八条四号もこれを前提とするものと解される。そして、最終学歴は、右(1)の事情のもとでは原告の労働力の評価と関係する事項であることは明らかであり、原告は、これについて真実を申告すべき義務を有していたということができる。

モデル裁判例【炭研精工事件1990年2月27日東京地裁判決

 

雇用関係は、労働力の給付を中核としながらも、労働者と使用者との相互の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係であるといえることからすると、使用者が、雇用契約の締結に先立ち、雇用しようとする労働者に対し、その労働力評価に直接関わる事項や、これに加え、企業秩序の維持に関係する事項について必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は、信義則上、真実を告知すべき義務を負うものというべきである。したがって、労働者が前記義務に違反し、「重要な経歴をいつわり採用された場合」、当該労働者を懲戒解雇する旨定めた本件就業規則の規定は合理的であるといえる。

【メッセ事件東京地裁平成22年11月10日・労判1019号13頁】 

 

一般に企業が労働者を採用するにあたって履歴書を提出させ、あるいは採用面接において経歴の説明を求めるのは、労働者の資質、能力、性格等を適性に評価し、当該企業の採用基準に合致するかどうかを判定する資料とするためであるから、かかる経歴についての申告を求めることは企業にとって当然のことといわなければならない。従って、その反面として、企業に採用され、継続的な契約関係に入ろうとする労働者は、当該企業から履歴書の提出を求められ、あるいは採用面接の際に経歴についての質問を受けたときは、これについて真実を告げるべき信義則上の義務があるというべきであり、これを偽り詐称することは右にいう信義則上の義務に違背するものである。

【都島自動車商会事件1987年2月13日大阪地決定】

以上の様に、学歴詐称を含む重要な経歴の詐称については、労働者の信義則上の義務に違背する者であるため、当該労働者を懲戒解雇する旨定めた懲戒規定は合理的であるとされています。

しかしながら一方で、経歴詐称はプロセス審査を重視する労働法の中にあっても、労働契約締結場面での問題であり、経営秩序を侵害するものではないので、懲戒事由たり得ないのではないかという疑問が生じないともいえません。

そのことついて前記 日本鋼管鶴見造船所事件1977年6月14日横浜地裁判決】は次のように説明しています。

そもそも、使用者が労働者を雇用する際に、学歴、職歴等その経歴を申告させるのは、これら労働者の過去の行跡をもって従業員としての適格性の有無を判断し、かつは、採用後の賃金、職種等の労働条件につき、これを正当に評価決定するための資料を得ることにあるから、これに、所謂終身雇用制が一般化して、雇用契約関係は労使双方の相互信頼を基調とする継続的な人間関係にまで及んでいる現状を合わせ考えると、労働者は、雇用されるに際し、その経歴等の申告を求められたときには、使用者に叙上の諸点についての認識を誤らせないよう真実のそれを申告ないし回答すべき信義則上の義務があるものというべきである。したがって、労働者が経歴等を詐称して雇用された場合には、右信義則上の義務に違背しているのみならず、使用者の欺罔された容態のもとにおいて、本来従業員たりえないのに従業員たる地位を取得し、さらには、あるべきものと異なる職種賃金を得て企業内の適正な労務配置、賃金体系等を乱していることになるから、就業規則あるいは労働協約においてかような経歴詐称を懲戒解雇事由として規定することには、それなりの合理的な理由と必要性があるというべきである。

 原告は、経歴詐称は、労働契約成立過程における問題にすぎず、経営秩序を侵害するものではないので、懲戒事由たり得ないと主張するが、上来の説示から明らかなように、右主張は、採ることができない。

 最後に、学歴詐称の問題ではないのですが、犯罪歴に関する詐称の問題で、

履歴書の賞罰欄にいう「罰」とは一般に確定した有罪判決(いわゆる「前科」)を意味するから、使用者から格別の言及がない限り同欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわゆる「前歴」)まで記載すべき事由はないと解される。

【マルヤマタクシー事件1985年9月19日仙台地裁判決】

とされていますので、併せ注意が必要です。

以上今回は、経歴詐称の中の学歴詐称の相談を想定して、懲戒の諸原則を含め説明させていただきました。経歴詐称による懲戒処分も懲戒である以上、刑罰に関する罪刑法定主義に類似する諸原則が適用されると解されています。従って、懲戒規定にその種類と程度を詳細に規定していることを満たしているだけでなく、懲戒手続に関しても、懲戒の対象となった行為と処分の内容とが均衡のとれたものであること等客観的相当性が求められますので、今回の記事が経営者の皆様のそういった再認識に何らかのお役に立てたなら幸いに思います。

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【参考文献】
・【Q&A労働法実務シリーズ6 解雇・退職 中町誠・中山慈夫(編) 加茂善仁(著)中央経済社
・【法律用語がわかる辞典 尾崎哲夫(著)自由国民社
・【お気楽社労士の特定社労士受験ノート 特定社会保険労務士 佐々木昌司(著)住宅新報社

【参考資料】

学歴詐称Wikipedia

独立行政法人労働政策研究・研修機構サイト  雇用関係紛争判例

〈(61)【服務規律・懲戒制度等】経歴詐称〉

 

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*1:【労働契約法】(懲戒)第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。(解雇)第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

*2:【労働契約法】(労働契約の原則)第三条 1〜3項(略): 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

*3:罪刑法定主義一定の行為を犯罪としこれに刑罰を科すためには、あらかじめ法の規定がなければならないという考え方をいいます。その趣旨は、国家機関による恣意的な刑事罰の行使を防ぎ国民の自由を保障することにあります。「法律なければ犯罪なく、法律なければ刑罰なし」という標語で示されることも多く、近代刑法の基本原則の一つです。罪刑法定主義は、次のような内容を伴います。①慣習刑法の排除 ②絶対的不定期刑の禁止 ③類推解釈の禁止 ④遡及処罰の禁止 ➄明確性の原則 ⑥実体的適正 【法律用語がわかる辞典 尾崎哲夫(著)自由国民社】より

*4:【信義則違反を理由になし得るものではないとする判例・・・そして使用者の保持する懲戒解雇権を右の如く解すれば、懲戒解雇に値する重大な経歴詐称もしくは不正入社とは、使用者をして労働力の評価ひいてはその組織づけを著しく誤らしめる事実を意味し、且つそれは企業組織に対する危険を排除するため認められるものであって労働契約締結上の信義則違反を理由としてなし得るものではないこと明らかである。富士通信機製造事件1963年6月12日 横浜地裁決定〉

緊急報告!注目の労働契約法20条初の最高裁判決

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2018年5月3日 (定年後再雇用(その2)何歳まで働く?)というタイトル記事の中で触れた、使用者側の提示する労働条件の相違が、労働契約法20条に違反するか否かの問題で、いずれも上告中であり、労働契約法第20条についての初の最高裁判決ということで、その判断の行方が注目されていた2件の運送会社の事件である、Ⓐ 長澤運輸事件(東京高判平成 28 年 11 月2日判決)Ⓑハマキョウレックス事件(大阪高平成28年7月26日判決)最高裁判決が6月1日に下されました。両事件はどちらも本年4月20日(Ⓐ)4月23日(Ⓑ)に最高裁での口頭弁論を終えており、同日付の本年6月1日に判決言い渡しが確定していました。

話の内容に入る前に、同記事の中で不適切な表現があったとの指摘を受けましたので、お詫びと訂正内容をお伝えして本題に入りたいと思います。

(訂正箇所)

トヨタ自動車事件の高裁判決が出されたのが、前述したハマキョウレックス事件高裁判決(大阪高平成28年7月26日判決)の2か月後というタイミングであったため、現場が混乱したといわれています。定年前後で職務内容が同一であれば、労働条件を相違させすぎても駄目、使用者が賃金節約や雇用調整の弾力性を図るために職務の内容を変更しすぎるのも駄目という様な碁石を置かれたような結論の事を言っているようです。

という部分ですが、正確には、ハマキョウレックス事件は正社員と契約社員の労働条件の相違が労働契約法20条に違反しないかどうかが争われている事件であり、定年後再雇用の定年前後の労働条件の差異が問題とされている長澤運輸事件とは違い、継続雇用の問題として扱われているわけではありません。同じ運送業のしかも労働契約法20条に違反しているかどうかが争われているため、よく対比して語られていますが、継続雇用の記事の中で扱っていたため多大な誤解を招いているという指摘です。

それと、現場が混乱しているという表現のところはそのハマキョウレックス事件とトヨタ事件との対比で語られているわけではなく、長澤運輸事件とトヨタ事件での対比として語られている内容です。以上のような不適切な表現があったことにより、まさに現場を混乱させてしまったことをこの場をお借りしてお詫びさせていただきたいとおもいます。

さて、本題についてですが、

記事の中で、近年相次いでいるのが、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めた労働契約法第20条に関する判決で、多くのケースで基本給格差を容認する一方、諸手当では厳格な判断が下されているということを2018年4月10日付、労働新聞の電子版記事を引用して説明させていただきました。

労働契約法第20条は、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、①労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。という内容の条文です。

高年法は、企業の実情に応じた柔軟な措置を想定しているとされてはいますが、法の趣旨に反したり、公序良俗や他の労働関係法令に違反するような労働条件を許容するものではありません。上記二つの事件共に、①の内容が同様であるにもかかわらず、再雇用後の労働条件が相違することは、労働契約法20条の趣旨に反し違法であるということで争われていました。

ここで、2018年5月3日 (定年後再雇用(その2)何歳まで働く?)の記事のまとめを振り返っておきたいと思います。

⑴ 高年齢者雇用安定法が求めているのは、継続雇用制度の導入であるり、
事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではない。

⑵ 事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法違反となるものではない。

⑶ 高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関し、事業主と労働者間で継続雇用後の労働条件について決めることができる。

⑷ 期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、①労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

⑸ その他の事情として考慮すべきことについて、上記①及び②を提示するほかに特段の制限を設けていないから、労働条件の相違が不合理であるか否かについては、上記①及び②に関連する諸事情を幅広く総合的に考慮して判断すべきものと解される。

労働協約は労働者に有利な条項と不利な条項が一体として規定されることが多く一般論としては、労働協約は労働者に不利な事項についても規範的効力を有するといわざるを得ないが、賃金や退職金などの重要な労働条件についての不利益については一部労働者のみに被る不利益性の程度や内容次第では、賃金面における変更の合理性を判断する際に労組の同意を大きな考慮要素と評価することは相当ではないと判断される場合がある。
(但し、労組と協約締結や協議と尽くしていることが望ましい事は言うまでもない。)

⑺ 社会通念に照らし当該労働者にとって到底受け入れ難いような職務内容を提示するなど実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められない場合においては,当該事業者の対応は改正高年法の趣旨に明らかに反するものであるといわざるを得ない。

⑻ 改正高年法の定める継続雇用制度を採用するにあたり,再雇用との文言を用いているが,その運用の適否を検討するにあたっては,上記の改正高年法の趣旨に従い,あくまで継続雇用の実質を有しているか否かという観点から考察すべきものであると判断されている。

⑼ 使用者の提示した継続雇用後の労働条件が無効となった場合でも、法自体から直ちに従前の労働条件での雇用契約が成立したと解されないこともあるが、民事的責任(債務不履行不法行為に基づく損害賠償責任)は生じうる。

上記Ⓐ長澤運輸事件に関しては、1審判決では、考慮要素①②が同一である以上、賃金額に差を設けることは、その相違の程度にかかわらず、これを正当と解すべき特段の事情がない限り不合理であるとの評価を免れないと判断したのに対して、高裁判決では本件相違は、上記①②③に照らして不合理なものとはいえず、労働契約法 20 条に違反するとは認められないと判断しています。
更に、定年前と同一の職務に従事させながら、賃金額を 20~24%程度切り下げたことが社会的相当性を欠くとはいえず、労働契約法または公序(民法 90 条)に反し違法であるとは認められないとして、労働者側の主位的請求も予備的請求のいずれも理由がないという結論となっていました。

長澤運輸の高裁判決に関しては、後述のⒷハマキョウレックス事件の高裁判決とは異なり、賃金構成の各項目について、具体的中身を検討しながら不合理性を判断をしていませんが、そのことについて同高裁判決では、定年前後で上記①②が変わらないまま一定程度賃金が減額されることは一般的であり社会的に容認されていることのほか、正社員の「能率給」に対応する嘱託社員の「歩合給」につき上記「能率給」より支給割合を高くしていること、無事故手当を正社員より増額して支払ったことがあること、老齢厚生年金の報酬比例部分が支給されない期間について調整給を支払ったことがあることなど、正社員との賃金の差額を縮める努力をしたことに照らすと、個別の諸手当の支給の趣旨を考慮しても、不合理であるとは認められないというような説明をしています。

前述した労働新聞の最近の労働契約法20条をめぐる裁判例の傾向からすると、その意味をどうとらえるか、同高裁判決が、定年前と同一の職務に従事させながら、賃金額を 20~24%程度切り下げたことが社会的相当性を欠くとはいえず・・と述べ、更に、(賃金構成の各項目について不合理性を判断せよとの被控訴人らの主張について)のところでは、定年前後で上記①②が変わらないまま一定程度賃金が減額されることは一般的であり社会的に容認されている・・・と述べていることからすると、定年前と同一の職務に従事させながら、賃金額を 20~24%程度切り下げたことに社会的相当性があるかどうかという観点に主眼があり、その社会的相当性について(正社員との賃金の差額を縮める努力)という表現を用い、企業側の労働者側への賃金減額という労働条件の不利益変更の代償措置的な考えに基づき全体評価しているように読めます。

個人的には、労働契約法20条に違反するかどうかということを控訴人が問うていることに関して、特に長澤運輸事件に関しては、考慮要素①②が同様であるにもかかわらず、賃金額を 20~24%程度切り下げたことに対して、労働契約法20条に違反ではない(合法である)ことの理由付けとして、我国における定年再雇用後の労働条件の社会的相当性を当てはめているようにも読めます。

その様に考えるならば、上記高裁判決は、我国における65歳までの安定した雇用の確保措置を講ずることにより全員参加型社会を実現するという国家政策課題があり、社会的に強く要請されているために企業の実情に応じた柔軟な措置を想定した高年齢者雇用安定法の趣旨を労働契約法20条に優先させたような結論ということができるかもしれません。

勿論、同高裁判決は控訴人の定年再雇用後の労働契約形態が有期雇用契約であるため、本件の有期労働契約には、労働契約法 20 条の規定が適用されることになると認定していますから、 考慮要素の①②が同様であるという前提からすると、個別具体的に踏み込んだ検討をした場合に明らかに契約法20条に反する内容である場合は、違法の判断が優先されていたと思いたいものですが、高年法の趣旨を総論と例えるなら「総論賛成各論反対」という程の不合理性はないというような判断の表現の仕方のようにも読め、個人的には、同高裁判決が「本件相違は、上記①②③に照らして不合理なものとはいえず、労働契約法 20 条に違反するとは認められない」という判断表現を使用しているだけに何となくすっきりしない感が残るのも事実です。

さて、以上を踏まえ同事件の一昨日の最高裁判断如何ということですが・・・・

まず、労働契約法20条の条文(期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては)との文言から、正社員と非正社員との待遇の差について定めた条文だと言えます。

しかしながら、上述したように長澤運輸事件は、もともとがハマキョウレックス事件の様な正社員と非正社員との待遇差を問題としているわけではなく、定年後再雇用の定年前後の労働条件の差異が問題とされている事案であり、そのような定年再雇用後の労働条件の相違が、労働契約法 20 条の「期間の定めがあることにより」生じたも のであるといえるかも争点とされていました。

昨日2018年6月2日付け、朝日新聞2面の記事によれば、最高裁判決は定年後に再雇用された非正社員に、雇用期間の定めの有無で労働条件に不合理な格差をつけることを禁じる労働契約法20条が適用されると認定したことを伝えています。

更に、昨日早朝ヤフーニュースによると、同高裁判決とは違い、契約用20条の不合理性の判断について、賃金項目の各項目を個別に判断すべきとの判断について次のように伝えています。

非正規格差に関する最高裁の初判断をどう読むか~日本型雇用の終わりの始まり~(倉重公太朗) - 個人 - Yahoo!ニュース

使用者は,雇用及び人事に関する経営判断の観点から,労働者の職務内容及び変更範囲にとどまらない様々な事情を考慮して,労働者の賃金に関する労働条件を検討するものということができる。また,労働者の賃金に関する労働条件の在り方については,基本的には,団体交渉等による労使自治に委ねられるべき部分が大きいということもできる

と判断し、労契法20条の「その他の事情」として、定年後再雇用という点も考慮すべきとしました

 その上で、定年後再雇用の特殊性については

使用者が定年退職者を有期労働契約により再雇用する場合当該者を長期間雇用することは通常予定されていない。また,定年退職後に再雇用される有期契約労働者は,定年退職するまでの間,無期契約労働者として賃金の支給を受けてきた者であり,一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されている

として、定年前正社員との違いを述べた上で

有期契約労働者と無期契約労働者との賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては,当該賃金項目の趣旨により,その考慮すべき事情や考慮の仕方も異なり得るというべきである。

として、各項目を個別に判断すべきとしました

上記ヤフーニュースの伝える内容の意味について、前述の同日付朝日新聞では次のように説明しています。

判決は、再雇用者については、定年までに正社員として賃金を受け取ってきた/通常は長期間雇用することが予定されていない/一定の要件を満たせば年金を受け取れる・・といった点に着目。こうした点を③の「その他の事情」として考慮すべきだと判断した。そのうえで、嘱託社員と正社員の具体的な賃金格差などを検討し、賃金格差の大半については「不合理とはいえない」と判断した。

定年再雇用後の有期労働契約に関しては労働契約法20条の考慮要素③の「その他の事情」として考慮され不合理性が判断されるとはいっても、定年再雇用という特殊事情のみをもって正社員との労働条件の相違の不合理性が否定されると安易に考えるべきでないと考えます。

上記引用した最高裁の考えの中で、

有期契約労働者と無期契約労働者との賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては,当該賃金項目の趣旨により,その考慮すべき事情や考慮の仕方も異なり得るというべきであると述べていることには留意が必要です。

結論としては、「従業員に出勤を奨励する趣旨で支給されるもの」として精勤手当のみが労働者に認められています。

 

次にⒷハマキョウレックス事件の方ですが、こちらの事件に関しては、以前の記事でもほとんど内容的に触れていませんでしたので、最高裁の結論をお伝えする前に概要だけ説明させていただくと、

同1審判決(大津地彦根支判平成27年9月16日)

労契法20条の「不合理と認められるもの」とは、有期契約労働者と無期契約労働者間の当該労働条件上の相違が、それら労働者間の職務内容や職務内容・配置の変更の範囲の異同にその他の事情を加えて考察して、当該企業の経営・人事制度上の施策として不合理なものと評価せざるを得ないものを意味する。

被告におけるこれら労働者間の職務内容や職務内容・配置の変更の範囲の異同等を考察すれば、少なくとも無事故手当作業手当給食手当住宅手当皆勤手当及び家族手当一時金の支給定期昇給並びに退職金の支給に関する正社員と契約社員との労働契約条件の相違は、被告の経営・人事制度上の施策として不合理なものとはいえないから、労働契約法20条に反しない。しかし、通勤手当については、通勤手当が交通費の実費の補填であることからすると、公序良俗に反するとまではいえないが、被告の経営・人事制度上の施策として不合理なものであり(被告は、正社員の場合は配置転換により長距離通勤が予定されていると主張するが,そうだとしても,正社員の下限の金額が,契約社員の上限の金額を上回っていることの説明にはならないはずである)、労働契約法20条の『不合理と認められるもの』に当たる。労働契約法20条に反する労働契約の条件は同条により無効となるが、同法12条のような特別の定めがないのに、無効とされた労働契約の条件が無期契約労働者の労働条件によって自動的に代替されることになるとの効果を同法20条の解釈によって導くことは困難であるから・・労働契約の条件が同条に違反する場合については,別途会社が不法行為責任を負う場合があるにとどまる。

 

高裁判決(大阪高平成28年7月26日)

正社員のドライバーの業務内容と契約社員のドライバーの業務内容は大きな相違があるとは認められない。
しかし、正社員と契約社員との間には、職務遂行能力の評価や教育訓練等を通じた人材の育成等による等級・役職への格付け等を踏まえた広域移動や人材登用の可能性といった人材活用の仕組みの有無に基づく相違が存する。
したがって、「不合理と認められるもの」に当たるか否かについて判断するに当たっては、労働契約法20条所定の考慮事情を踏まえて、個々の労働条件ごとに慎重に検討しなければならない。無事故手当作業手当給食手当通勤手当については、契約社員に対して同手当を支給しないことは、期間の定めがあることを理由とする相違というほかなく、労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」に当たる。住宅手当皆勤手当については、契約社員には同手当を支給しない扱いをすることが、労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」に当たると認めることまではできない。

労働契約法20条に違反する労働条件の定めは無効というべきであり、同条に違反する労働条件の定めを設けた労働契約を締結した場合は、民法709条の不法行為が成立する場合がありうる。

しかし、労働契約法は、同法20条に違反した場合の効果として、同法12条や労働基準法13条に相当する規定を設けていないこと、労働契約法20条により無効と判断された有期契約労働者の労働条件をどのように補充するかについては、労使間の個別的あるいは集団的な交渉に委ねられるべきものであることからすれば、裁判所が、明文の規定がないまま、労働条件を補充することは、できる限り控えるべきである。
したがって、関係する就業規則労働協約、労働契約等の規定の合理的な解釈の結果、有期労働契約者に対して、無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則労働協約、労働契約等の規定を適用し得る場合はともかく、そうでない場合には、不法行為による損害賠償責任が生じ得るにとどまる。(以上、「弁護士オフィシャルWEBサイト 竹村 淳」より)

 以上のように、同事件においては1審判決では、契約法20条の不合理性の判断について、同条の各要素を考察し、当該企業の経営・人事制度上の施策として不合理なものと評価せざるを得ないものを意味するとして、通勤手当のみの支給不支給の相違を不合理と判断していたのに対し、同高裁判決においては、同条の考慮要素の①労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度は同様でありながらも、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲に相違があるため、「不合理と認められるもの」に当たるか否かについて判断するに当たっては、労働契約法20条所定の考慮事情を踏まえて、個々の労働条件ごとに慎重に検討しなければならないとし、無事故手当作業手当給食手当通勤手当4つの手当てについて、労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」に該当するとしていました。

 同事件の最高裁判決についてですが、先述した早朝ヤフーニュースによると次のように伝えています。

労契法20条は、職務の内容等が異なる場合であっても,その違いを考慮して両者の労働条件が均衡のとれたものであることを求める規定であるところ,両者の労働条件が均衡のとれたものであるか否かの判断に当たっては、労使間の交渉や使用者の経営判断を尊重すべき面があることも否定し難い。

(略)

 【ハマキョウレックス事件の結論】 

今回の最高裁は、上記4つの手当については結論を維持しつつ、皆勤手当について、その支給の趣旨は運送業務を円滑に進めるために実際に出勤するトラック運転手を一定数確保する必要があることから、皆勤を奨励する点にあるとし、トラック運転という職務内容が異ならない以上は、出勤を確保する必要性については差異が生ずるものではないとして、皆勤手当を支給しないのは不合理としました。

 朝日新聞の朝刊では、正社員と非正社員の待遇の差はどのような場合に「不合理」となるのかについての最高裁の判断について次のようなことを説明しています。

1日の最高裁判決は「賃金の総額を比較するだけでなく、手当など項目の趣旨を個別に考慮すべきだ」との判断を示した。場合によっては、別の賃金項目の有無や内容も考慮して、正社員と非正社員との間の差について判断すべきだ、という立場だ。

【以上のように、6月1日付の二つの運送会社の労働契約法20条違反をめぐっての最高裁判断は、労働者にとって定年後の労働契約ということでは同一であっても、結果として、高年法の定める定年再雇用であるか、通常の嘱託の再雇用であるかによって明暗が分かれた結果となった形です。上告側からすれば、高裁判決から一歩前進した結果となったとはいえ、以上のような定年後の働き方としては同一内容であるにもかかわらず結論が二分したことに対して憤りをあらわにしていると同新聞記事では伝えています。】

(上記下線部分が、不適切な表現となっています。緊急報告ということで急いでの執筆で、筆者の確認不足からくるエラーとなってしまいました。新聞記事の内容としても、同じような働き方で結論が二分したことに対して、上告人が憤りを示しているというような表現になっていました。あくまでハマキョウレックスは正社員と契約社員間の労働条件の相違が問題となっているケースであり、定年後嘱託の労働条件ではありません。ご迷惑をおかけした関係者の方々にこの場を借りてお詫びさせていただきます。

 

 

最高裁は、契約法20条に違反していると判断され無効とされた労働条件についてですが、同条には直律効がなく、損害賠償請求が認められるのみであるという高裁と同様の判断を示したと伝えらえれています。(上述ヤフーニュースより)

従って、形式的には将来に向かっての労働条件についての労使対等の立場による合意の原則が実現できるのであれば、比較対象労働者と同一でない労働条件で雇用を継続させることができるということになるのでしょうが、裁判にまでなって争われた労働条件についてそのような合意を労働者から取り付けることは、相違する手当に代わる何か経済上の利益を提示できる場合等でなければ困難だと思います。

では企業側としては、どのような労働条件の相違ならば不合理と判断されないのかということになりますが、そのことにも関連する内容のことについて同朝日新聞の朝刊記事が次のような内容の事を説明しています。

非正社員の待遇改善を図る同一労働同一賃金は、政府が今国会に提出した働き方改革関連法案の柱の一つだ。労働契約法の改正案などが含まれており、今国会で成立すれば、大企業は2020年4月、中小企業は21年4月に適用される。非正社員と正社員の待遇差が不合理かどうか判断する際の基準を明確化した点が、大きな特徴だ。改正法の成立後に、どういう待遇差が不合理になるか、手当ごとになどに具体的に示すガイドライン(指針)が策定されることになる。政府が16年12月に公表した指針案では、「将来の役割や期待が異なる」といった抽象的な理由では、待遇格差を設ける根拠にならないとの考え方を示した。

更に、大企業の中には既に、働き方改革法案の動きを見据え、正社員と非正社員の手当ての格差を見直す明るい動きがある一方で、政府が想定する正社員の水準まで非正社員の待遇を引き上げることとは逆の動きも出てきていることを伝えています。

私たちの生活に影響を与えている給与項目の中に、終身雇用の申し子ともいえる生活関連手当というものがあります。家族手当、住宅手当、食事手当、地域手当、単身赴任手当、寒冷地手当、通勤手当などが該当しますが、特別な事情で生活費負担が大きくなるものについて、雇用確保の視点から優遇しようという趣旨のものです。この生活関連手当の多くは、成果主義時代の中で縮小・廃止傾向で進んでいるとされています。

また、今回の二つの最高裁事件の中でも問題とされていた精勤手当や皆勤手当てについては、業績奨励手当関連の種類に属し、この手当に関しても最近縮小傾向にあるとされています。これら諸手当、特に生活関連手当は、近年縮小・廃止の方向で給与制度改革を行っている企業が多くなってきているということであり、その諸手当の主な削減方法としては、①単純に削減・廃止 ②基本給に組み入れる ③賞与に組み入れる等の方法があるとされています。【賃金・給与制度の教科書 (株)日本能率協会コンサルティング 高原暢恭(著)労務行政出版より】 

 

前回の社会保障費の記事の中でも書いたように、現在の我が国の労働市場は売り手市場が続いており、特に中小企業ではどの様に自社に有用な人材を獲得・定着させていくかは極めて重要な課題となっています。従って、長澤運輸事件の高裁判決でも述べていた通り、法により義務化された定年再雇用後の労働条件に関しては、企業経営上や人事上の施策として正規雇用の人件費よりもコストを節約しようという意識が働きやすいとも言えますが、それでも中小の場合は大手のように資金が潤沢ではないのが通常ですので、売り手市場で新卒者獲得競争が激しさを増している昨今においては、育児や介護と仕事の両立支援が整備されていることをしっかりとアピールできることや、自社での仕事が社会でどのような貢献役割を果たしているのか、仕事を通じてどのような資格技術を身に着けていくことができるのかといった具体的魅力的なキャリアパスをしめせることも有能な人材を確保するための有効な手段となると思われますので長年自社で活躍してくれた有能な高齢継続労働者が活躍できる場としての環境づくりの中での実現が望まれているといえるでしょう。一方で、企業は昨今の急激な情報化やグローバル化の流れの中で自社の存続をかけ、様々なイノベーションを模索することが必要不可欠であり、自社の人件費を適正に管理することも使用者の重要な使命であり責務といえます。

従って、前述した有能な高齢継続労働者が活躍できる場としての環境づくりと自社に適正な人件費管理を両立できるような給与制度改定が今後の大きな課題になると思われますので、今国会で成立を目指している労働契約法の改正案の中の(指針)については、そのような両立に資する内容を期待して今回の記事を終えたいと思います。

 

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社会保障費 「かねカネ金」の世の中どう生きる?

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 「190兆円」

さて、上の金額は何の数字かお分かりでしょうか?

実は、日本の2040年度の社会保障費の推計だそです。

2018年5月22日(火)朝日新聞朝刊によると、65歳以上の高齢者数がほぼピークを迎える2040年に社会保障給付費は188兆2千億~190兆円となるとの推計を政府が21日の経済財政諮問会議で公表したとのことで、40年度の推計を出したのは今回が初めてだということです。同年には高齢化率が35.3%となり、高齢者の医療や介護、年金に係る費用が増えるためで、今年度(18年度)の1.6倍となるとのことです。

一方で、社会保障費の主たる負担者である生産年齢人口は大幅な減少が予想されており、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、15~64歳は7562万人(60%)から5978万人(54%)になるとしています。

高齢者入りする団塊ジュニア世代(71年~74年)とバブル世代、団塊世代の多さを反映し、高齢者数は3920万人とほぼピークに達するそうです。私はいわゆるバブル世代ですが、世代間・世代内の公平な給付と負担のあり方が問われているなかにあって、この上記3世代は愛煙家が特に多いので、タバコを吸う私としては、40年度にはタバコ1箱の値段がいったいいくらになっているのか非常に気がかりです。

 同新聞によると、深刻なのは費用の問題だけでなく、介護・医療の担い手となる人材不足も懸念されています。15~64歳40年までに1584万人減少する見込みであるのに対し、介護や医療の分野に必要な人材数は事務職員も含むと今より242万人増加するとしており、介護現場に限っても、厚生労働省が21日に発表した需給推計によれば、25年度時点約34万人が不足するそうです。

現状でも、特別養護老人ホームにおいて、入居待ちの状態であり病床が空いている状況にあるにもかかわらず常勤職員が不足しているため入居させられない状態が続いている施設があることを伝えています。

 ここで少し、介護保険施設に関しておさらいをすると、介護保険施設とは介護保険サービスで利用できる公的な施設のことをいい、介護老人福祉施設特別養護老人ホーム)②介護老人保健施設老健)③介護療養型医療施設(療養病床)3種類がありますが、なかでも①介護老人福祉施設特別養護老人ホーム)は、入所費用が少なくて済むことから、もっとも人気がある施設で、そのため、何年間も入所を待つケースも珍しくないとされています。(安心介護のサイトページより)https://ansinkaigo.jp/knowledge/245

介護老人福祉施設 - Wikipediaより抜粋】

介護老人福祉施設(かいごろうじんふくししせつ)とは、介護保険法に基づいて介護保険が適⽤される介護サービスを⼿掛ける施設である。これら の施設は⽼⼈福祉法第 11 条に基づく市町村によ る入所措置の対象施設となっており、その⽂脈では特別養護老人ホーム(通称:特養)と呼ばれる。基本的に、要介護 3 から 5 のいずれかの要介護認定を受けている⼈が対象となる。これら施設⼊所者の 97.2% は認知症を持っており、さらに 61.7% は寝たきり状態である。平均在所⽇数は1405.1⽇であった(2013年)。 慢性的に供給不⾜となっており、2014年では⼊所申込者(待機者)は52.4万⼈、うち要介護4-5は 8.7万⼈であった。

 上記のように、特別養護老人ホームに関しては、新聞やテレビの特集でも入所待ちがよく話題になりますが、今のままでは、40年度には更に拍車がかかる勢いということが懸念されます。場合によっては、現在の入所条件がさらに厳しくなることも考えておいた方がよいかもしれませんね。或いは入所に篩いをかけるため費用アップなんていうことになれば、普通のサラリーマンが定年退職後の終焉の住処についても、時代の流れとともに現在の核家族化が見直されていくかもしれません。そうなれば、少子化の影響も手伝って子供が1〜2人の世帯が多い現在においては、介護の負担を配偶者である妻ばかりに負わせることもできないでしょう*1から、介護をしながら仕事を続けていくことが今以上に困難になってくることも予想されます。以上の様な特養への入居待ちの状態や介護職員の不足の問題、更に、費用負担の問題について国としてはどのような対策を考えているのでしょうか?その中の費用負担増に関してですが、新聞記事の中で次のようなことを伝えています。

負担増の議論が実質的に封印されている中、厚労省対策として打ち出すのは、健康上問題なく日常生活を過ごせる健康寿命延伸だ。平均寿命との差を縮められれば医療や介護を必要とする期間が短くなるとの算段からだ。現在の健康寿命男性72.14歳女性74.79歳で、厚労省は40年度までにそれぞれ3歳延ばすことを目指す。

さて、記事の中で記者が、どれだけ社会保障給付費の抑制に役立つか未知数と述べているような疑問を呈したくなるような結果が出ている政府の統計があります。

 平成29年版高齢社会白書内閣府は、健康寿命について次のように述べています。

健康寿命が延びているが、平均寿命に比べて延びが小さい)

日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、平成25(2013)年時点で男性が71.19年、女性が74.21年となっており、それぞれ13(2001)年と比べて延びている。しかし、13(2001)年から25(2013)年までの健康寿命の延び(男性1.79年、女性1.56年)は、同期間における平均寿命の延び(男性2.14年、女性1.68年)と比べて小さい(図1-2-3-3)。

 å³1ï¼2ï¼3ï¼3ãå¥åº·å¯¿å½ã¨å¹³å寿å½ã®æ¨ç§»

 以上のように、平成13(2001)年〜平成25(2013)年までの12年間の健康寿命の延び(男性1.79年、女性1.56年)からすると、単純計算では今後20年で3歳延ばせることになるのでしょうが、平均寿命の伸びを伴っていることを見逃してはいけないでしょう。何か特別な対策でもあるのかと問題提起したくなってしまいます。

更に、平成29年度版の同白書には見出しがなかったため、平成28年度版を引用していますが、認知症については次のようなショッキングなことが述べられていました。

(平成37(2025)年には65歳以上の認知症患者数が約700万人に増加)

65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症患者数462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)であったが、37(2025)年には約700万人、5人に1人になると見込まれている(図1-2-3-3)(平成29年版高齢社会白書も同内容)

 å³1ï¼2ï¼3ï¼3ã65歳以ä¸ã®èªç¥çæ£èæ°ã¨æççã®å°æ¥æ¨è¨

 5人に1人ですよ!言葉は悪いですが、下手すると日本は「ぼけ老人」ばかりになってしまうということですよ。少子化の現在においてそのような状態になってしまった時に、誰が面倒見てくれるのでしょうね。

「お金!」*2と答えた方は、銀行と良い付き合いができます。(笑)

 さて、ではそのお金についての意識はどうなっているのでしょうか?

同白書による意識調査によると、次のような結果となっています。

介護が必要になった場合の費用負担について、内閣府の調査で60歳以上の人に尋ねたところ、「特に用意しなくても年金等の収入でまかなうことができると思う」42.3%、「貯蓄だけでは足りないが、自宅などの不動産を担保にお金を借りてまかなうことになると思う」が7.7%、「資産の売却等でまかなうことになると思う」が7.4%、「子どもからの経済的な援助を受けることになると思う」9.9%「その場合に必要なだけの貯蓄は用意していると思う」20.3%となっている(図1-2-3-9)。

 å³1ï¼2ï¼3ï¼9ãä»è­·ãå¿è¦ã«ãªã£ãå ´åã®è²»ç¨è² æã«é¢ããæè­

 予想通り、年金と預金で賄えると思っている人が大多数ですね。特に年金を頼りにしている人が多いということもわかります。そのように考えると、年金の悪口を言う人たちもいますが、今後我が国での老後の生活において年金の果たす役割はますます重要になってくるものと思われます。(銀行員であった一昔前であれば、将来のための預金を呼びかけ、良い仕事をした仕事帰りに美味しい生ビールでも飲みに行きたくなるような話です。)

5人に1人となると、もはや他人事ではないような気もしていますが、認知症になった時に若いときから貯蓄に励んできた資産や在宅介護の希望などの本人の意向はどう担保したらよいでしょう。大半の方は、妻と子供の家族をお持ちでしょうから元気なうちから「自分が呆けた場合はこうしてほしい」とお話ししていると思いますが、現在は任意後見制度*3を利用している人が増えてきていると言われていますので、元気なうちにそういった制度でいざという時の備えをしておくのも一考に値すると思います。ただし、任意後見人の事務内容は、任意後見契約に定められた内容によって決まりますが、代理権付与の対象となる事務である以上法律行為に限られ介護サービスなどの事実行為は含まれないこととされていますので、そのことは頭に入れておくべきでしょう。

【図解による 民法のしくみ 改訂5版 弁護士 神田将(著)自由国民社

従来より、要介護の高齢者のほぼ半数は認知症の影響が認められるにもかかわらず、認知症高齢者へのケアはいまだ発展途上で、ケアの標準化、方法論の確立がなされていないのが現状で 、 介護サービスに関しては、利用者に対て介護サービス事業者を選択するために必要な情報が十分に提供されておら ず、また、提供さ れるサービスに関する苦情が増加していたという事情があり、介護サービスに従事する者の質の向上人材の育成を図る必要があり 、劣悪、悪質な事業者は介護サービス市場から排除されなければならないという課題があり、そういった 以上のような課題に対応するために介護制度の改正が行われてきているとされています。 (KINZAIファイナンシャルプラン 2005 年6月号コラム:社会保険労務士 井戸美枝)

以上のような課題に対して、現場サイドの状況と人手不足に対する国の施策について、上述の新聞記事では次のように伝えています。

現場からは「今でも外国の人材に頼らざるを得ない」との声が上がる。政府は移民政策をとらない姿勢を崩していないが、一方で在留資格*4として新たに「介護」を加え、外国人技能実習生の対象分野に「介護」を設けるなど、実質的に外国人を現場の担い手とする施策に本腰を入れ始めている

 

東洋大の高野龍昭(高齢者福祉)准教授の話

生産年齢人口が大幅に減る2040年には、負担の大半を若年層に依存する現行制度では全く立ち行かなくなる。医療や介護の担い手不足も避けられない。高齢者の活用だけでは足りず、外国人労働者の受け入れを正面から議論することが必要だ。処遇や質の確保など制度は注意深く作らないといけないが、今の政府の動きは遅すぎる。また、特に介護はロボット情報通信技術を積極的に活用し、少ない人手で多くの高齢者に対応できるようにしなければならない。 家事・買い物支援などはボランティアや一般企業のサービスを活用し、専門職は認知症など高度な技能が求められる仕事に集中していかざるを得ない。

前述した白書によれば、施設定員数も介護要員も増加傾向を示していますが、依然として介護職員は不足しており、有効求人倍率は全産業に比べ高水準を示していおり、平成28年(2016年)の介護分野の有効求人倍率3.02倍となっていて全産業の有効求人倍率(1.36倍)の約2.2倍になっているということです。従って、現状で施設定員数だけをじゃんじゃん増やしても介護要員が追い付かない状況なので有効な対策となりえないということです。

 今後将来的に医療技術は進歩していくことでしょう。一説によればクローン技術の医療への応用は物凄い可能性を秘めているそうです。若い健康な時に自分の細胞を保存しておき、その若い細胞により自分に適合する臓器のクローンを作れば、拒否反応は全く出ずに、疲弊した臓器を若返らすことも夢ではないそうです。そうなると、人の寿命は150年くらいまで伸びるかもしれませんよね。(西鋭夫のフーバーレポート【ダイレクトアカデミー】より)

その時前述した「お金」がものをいうのでしょうか?

それとも今後「お金」というのはあまり意味のない存在になっていくのでしょうか?

将来「お金」の意味がどのようなものになっていくかはさておき、現在は「お金」が我々の生存にとって貴重な意味を持っていることに違いはありません。「お金」がかかる話をしすぎると少子化が進んでしまいそうな罪悪感にとらわれてしまうのも、子育てには「お金」がかかるからであり、我々はその「お金」の節約による高齢期における少子化のツケを払わされていると考えると何とも皮肉な話であるように思えてなりません。白書によれば、「治る見込みがない病気になった場合、最期はどこで迎えたいか」について、「自宅」54.6%で最も多く、次いで「病院などの医療施設」27.7%となっているという結果が伝えられているにもかかわらず・・・前述のお金に関する同白書の意識調査では、「子どもからの経済的な援助を受けることになると思う」がたった?10%たらずということです。

私の以前の恩師の信条は、「人間は裏切っても金は裏切らない」でした、。(笑)

我々は社会で生きていて確かにそのような場面に出くわしたりすることがありますが、結局は最後に頼りになるのは人間だと思いたいものです。

それでも長生きすればするほど高齢化していくと信頼できる人間達は少しづつ自分の周囲から減っていき最後は「お金」だけが頼りになるという状況は理解できない訳ではないのですが・・・

しかし、人間よりもお金で買ったアンドロイドの方が、よっぽど人間味あふれていたりすることを想像する高齢をみると、その人間味を作り出しロボットに入力作業を行ったのは誰なんでしょうね!と聞きたい気持ちになります。

 「さて、あなたは自分を助けてくれる人たちを裏切らないために、何をしますか? 」

皆さんにいってるのではありません。私はたまに上記のような質問をされることがあります。「何を望んでるんでしょう? マンション? 高級車?  エルメスのバック? どれもお金がないとできないですね(笑顔)

殆どの社会人の人達が、自分を含め、自分の家族を幸せにするために懸命に働いているでしょう。家族との団らんや少しでも家族に良い生活をさせたいという思いです。或いは、家族には「お金に対して惨めな思いだけはさせたくない」という思いです。

話を介護に戻すと、

厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」によれば、家族の介護・看護を理由とする離職者は、55~64歳層を中心とする比較的高齢の層が多くなっており、離職期間が2年以上の割合が高くなっているそうです。同白書は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「仕事と介護の両立支援に関する調査」 (2012年度厚生労働省委託事業)の調査に結果に基づき、40歳台及び50歳台が介護等を機に仕事を辞めた場合、経済面に加えて、精神面や肉体面でも負担が増したと回答する割合が高くなっていることを伝えており、介護離職経験者にかんしては、転職経験者も未就業者も介護を理由に離職した理由について時間的制約が高い割合を示しています。以上の様な介護就業者の負担を職場での仕事と介護の両立支援に関する取組によって軽減させていくことは今後の高齢化社会において、介護者を家族に抱える労働者の継続就業を考えていくうえで避けて通ることのできない重要な課題となってきています。*5

さらに、同白書は、総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」により介護をしている有業者のうち、就業休止希望者(「この仕事を今後も続けますか」との質問に「仕事をすっかりやめてしまいたい」と回 答した者)が有業者全体に占める割合は6.2%となっており、この割合は介護をしていない有業者(3.9%)よりも高くなっているものの、介護休業制度等を利用することにより、男女ともにその割合は低下していること*6、在職者が仕事と介護の両立のために必要と考える勤務先による支援(複数回答)として、「出社・退社時刻を自分の都合で変えられる仕組み」「残業をなくす/減らす仕組み」など、労働時間の面での支援ニーズが高くなっていることを伝えています。

以上の内容からすると、売り手市場で新卒者獲得競争が激しさを増している昨今においては、大手はもとより中小企業においては特に、育児や介護と仕事の両立支援が整備されていることをしっかりとアピールできることも、自社にとって有能な人材を確保するための有効なアトラクトとなると思われます。

そんな中にあり、「団塊の世代」が60歳台後半に入り、公的年金の支給開始年齢が引き上げられている中で、 企業の高年齢者雇用確保措置の導入は進展しているとされています。*7

高齢者の継続就業に関する意識の動向に関して、「生涯現役」を希望しているという興味深いことが書いてありました。

なぜ、生涯現役なのでしょうね。「お金」でしょうか?

勿論経済的理由も入っていましたが、「お金」回答する割合は、2000年代に年齢階級計では5割程度で推移しているものの、高齢になるほど低下する傾向にあるそうです。一方、「生きがいをみつけるために働く」回答する割合は、 年齢階級計では2割前後で推移しているが、65~69歳及び70歳以上ではほぼ3割台で推移しているそうです。

「最後の逃げ切り世代」と言われる団塊の世代の意識はどうでしょうか?

猛烈社員の仕事・しごと・シゴトのイメージの強い世代ですが・・・

内閣府団塊の世代の意識に関する調査」(2012年)により、団塊の世代が働く理由(三つまで回答)をみると、60歳時点、調査時点ともに「生活費を得るため」が最も多いが、現在仕事をしている理由としては、このほかに「生活費の不足を補うため」「健康維持のため」「将来に備えて蓄えを増やすため」「自由に使えるお金が欲しいため」「生きがいがほしいため」などの多様な回答の割合が高い。団塊の世代は、働き続けるメリットとしてこのようなものを意識していると考えられる。(略)

団塊の世代が働くうえで重視していることをみると、「体力的に無理なく続けられる仕事」「自分のペースで進められる仕事」に次いで「自分の能力を発揮できること」があげられている。高齢者が自分のペースで仕事を 進められるなど、体力的に無理なく続けられ、能力や経験を発揮できるような就労環境を整備 することがますます重要となっている。*8

一方で、若年層の就業意識に関してはどうでしょうか?

企業生き残り10年の時代なんで言われて久しい昨今、今から社会に出ていく若者たちに関しては、老後を迎えるまでの長期社会人生活の中にあって我が国においても1度や2度の転職・企業再編は考えておかなければならない時代になってきたのかもしれません。

そんな中にあって、仕事を変わっても通用する技術や専門知識を身に着けておきたいと志向する人たちも増えてきていると言われています。企業を選ぶ際の基準も仕事を通じて自分のスキルや技術を高められるという項目が顕著になってきていると言われていますよね。今回とりあげた「労働経済の分析」(労働経済白書)でも、専門的知識や技術の持った人の不本意非正規雇用からの正規雇用への成功率の高さが示されていました。

平成29年度の「労働経済の分析」AIの雇用に与える影響について書かれていました。AIの活用により今後産業界での様々なイノベーションが期待されており、その考えられる役割・機能の中には「不足している労働力を補完する」というものも挙げられていました。AIの進展は、人の雇用を代替するものとしてネガティブに語られることが多いという理由から、経済産業省の新産業構造ビジョン中間整理の中で行われた「産業構造・就業構造試算」による分析結果を伝えています。

その分析結果によると、我が国の2030年における労働力人口、就業者、製造業の就業者、非製造業の就業者の増減状況について、就業者は約161万人減少しているものの、働き手の数を示す労働力人口はそれ以上に減少しており、単純に試算すると、2030年までにAIの進展を含めた第四次産業革命に対応したとしても失業者は増加せずむしろ約64万人労働力が不足する状況にあることが分かるとしています。特に自動化などにより AIの利用が進む製造業と比較して、人の対応が求められ、AIの利用だけでは対応できないサー ビス業を中心に就業者が増加することが示唆されるとしており、増加する職種の中にホームヘルパー、介護職員があげられています。*9

これらの職種について、スキル別の職業分類も用いつつ、「技術が必要な職種」「人間的な付加価値を求められる職種」「その他、定型的業務が中心の職種等」に分けてその傾向を確認すると、今後増加が予想される「技術が必要な職種」「人間的な付加価値を求められる職種」適応できる能力を労働者は今後身につけていくことが求められるとしています。

今回は、朝日新聞で取り上げられていた社会保障費の今後の増加見込みの記事をきっかけとして、「仕事」と「お金」の関係をまじえながら、私達国民のディーセントワーク(人間らしく仕事をする)の可能性に必要となる情報の一部を探ってみました。

最後に、平成26年度版「労働経済の分析」の「むすび」を引用して今回のテーマを終わりたいと思います。

【企業パフォーマンスの向上と中核的人材の育成に向けた人材マネジメントの課題】

人材マネジメントの目的は、長期的な企業の競争力を維持・強化していくために、人員配置・教育訓練等の雇用管理、就業条件管理や報酬管理を通じて、人材の働く意欲を喚起し、その能力を最大限発揮させることにあるそのためにも、人材を適材適所で活用し、職場内外での教育訓練によって人的資本の蓄積を図り、労働者の働く意欲を引き出すマネジメントの仕組みが重要である。

さらに、経営戦略を理解し、具体的な計画を策定、行動に移すことができ、また自らが職業生涯を通じて獲得してきた知識・経験・スキルを後進に伝えることができる、企業成長の要となる中核的人材の育成に向けた、戦略的なキャリア設計が企業には求められる。

労働者の就労意欲が高い企業の特徴として、正規雇用労働者・非正規雇用労働者を問わず、 広範な雇用管理に取り組むとともに、人材育成に対しても積極的に取り組んでいることが分かった。こうした企業においては、労働者の定着率や労働生産性、さらに売上高経常利益率も高い傾向にある。さらに、企業の要となる人材として管理職層に着目すると、仕事を通じた経験が管理職層に必要とされる能力を高めていくプロセスが確認された。

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*1:主に家族(とりわけ女性)が介護者となっており、「老老介護」も相当数存在:要介護者等からみた主な介護者の続柄をみると、6割以上が同居している人が主な介護者となっている。その主な内訳をみると、配偶者が26.2%、子が21.8%、子の配偶者が11.2%となっている。また、性別については、男性が31.3%、女性が68.7%と女性が多くなっている要介護者等と同居している主な介護者の年齢についてみると、男性では69.0%、女性では68.5%が60歳以上であり、いわゆる老老介護のケースも相当数存在していることがわかる。介護や看護の理由により離職する人は女性が多い:家族の介護や看護を理由とした離職者数は平成23(2011)年10月から24(2012)年9月の1年間で101.1千人であった。とりわけ、女性の離職者数は81.2千人で、全体の80.3%を占めている【平成29年版高齢社会白書内閣府)】

*2:医療・介護の保険料推計(平均値)【朝日新聞より】:医療保険の分野:協会けんぽ)2018年度10.0%から40年度11.5〜11.8%健康保険組合同9.2から同10.9〜11.2%国民健康保険同7400円から同8200円〜8400円後期高齢者医療制度同5800円から同8000円〜8200円 介護保険の分野:(65歳以上)同5900円から9200円(40歳〜64歳:協会けんぽ、組合)同1.52〜1.57%から同2.6%(40歳〜64歳:国民健康保険同2800円から同4400円

*3:任意後見契約とは、委任者が受任者に対して、精神上の障害により事理弁識能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約で任意後見登記が必要であり、「任意後見監督人」が選任されたときから効力が生ずる定めのあるものを言い、この契約は公正証書によることが必要な要式契約とされている。また、その場合の事理弁識能力は、少なくとも補助の要件に該当する程度と解されている。【図解による 民法のしくみ 改訂5版 弁護士 神田将(著)自由国民社

*4:在留資格の取得とは,日本国籍の離脱や出生その他の事由により入管法出入国管理及び難民認定法)に定める上陸の手続を経ることなく我が国に在留することとなる外国人が,その事由が生じた日から引き続き60日を超えて我が国に在留しようとする場合に必要とされる在留の許可です。在留資格の種類により、国内で活動できる範囲や在留期間に相違があり、例えば、観光目的の短期滞在の在留資格収入を伴う音楽,美術,文学その他の芸術上の活動なども行うことはできません。60日を超えて在留しようとする場合には,当該事由の生じた日から30日以内に在留資格の取得を申請しなければなりません。

*5:厚生労働省平成24年度雇用均等基本調査」によると、介護休業制度の規定があ る事業所割合は、育児休業制度と同様に一貫して上昇しており、事業所規模5人以上では 65.6%、30人以上では89.5%となった。また、介護のための勤務時間短縮等の措置の導入状況をみると、短時間勤務制度(53.9%)、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(29.2%)、介護の場合に利用できるフレックスタイム制(10.7%)、介護に要する経費の援助措置(3.4%) の順で多くなっており、いずれの措置も平成20年度(それぞれ39.9%、20.7%、6.4%、 1.8%)と比較して導入割合が上昇している。厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」より

*6:ここでは介護をしている有業者と介護をしていない有業者とを比較しているが、就業休止を希望する理由として、仕事と介護の両立が 困難であること以外の要因があり得ることに留意する必要がある。厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」より

*7:60歳台の労働力率の推移をみると、60~64歳層では高年齢者雇用確保措置の実施義務化(2006年4月施行)を反映して、2007年及び2008年に上昇し、 その後は男性は75%を上回る水準で推移している。女性は上昇傾向が続いており、2013年は 47.4%となった。65~69歳層では、60~64歳層に比べて水準は低くなるが、団塊の世代が 65歳に到達した2012年以降の上昇が特徴となっており、2013年は男性は50.7%、女性は 29.8%となった。厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」より

*8:定年後に就業継続するためには健康であることが重要である。健康を損なうと就業継続が困難となり、一時的な休暇や休職にとどまらない就業中断につながる可能性もある。厚生労働省「平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」」によると、同年度の請求件数は脳・心臓疾患で784件と高い水準となっており、精神障害においては1,409件で過去最多となっている。また、支給決定件数も高い水準で推移しており、脳・心臓疾患は306件、精神障害は436件となっている。健康を理由とする離職者の中には精神的健康(メンタルヘルス)の不調が原因となっている事例もあると考えられ、不調に陥る前に対処する必要性が高まっている。

(過去記事)

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健康状態への復帰、治療と職業生活の両立を目指す者も多く、その支援が長時間労働の抑制とともに重要な課題となっている。厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」より

*9:増加する職種ホームヘルパー、介護職員約108万人販売従事者約47万人技術者約45万人などとなっている。一方で、減少する職種生産工程従事者約187万人事務職約79万人などとなっている。厚生労働省「平成29年版 労働経済の分析」より