コーヒーブレークQ&A 有給休暇Ⅱ(あなた、今なんじ?)

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今回は、前回に引き続き有給休暇についてのテーマの第2回目です。

前回は、営業の神様ブライアントレーシーの著書「大富豪になる人の小さな習慣術」徳間書店)という書籍の第9章【健康で快適な生活習慣】の中で述べられていた休暇に関する箇所を途中まで引用して終了していました。

忙しくてとても休暇など取れないという労働者の意識に関して参考になればと引用させていただいたわけですが、さて営業の神様、ブライアントレーシーさんが定期的に休暇を取るという主題について長年にわたり細かく調べ導き出した結論は・・・・

 

定期的に休暇を取る
(略)きちんと休みを取ると、あなたの仕事には少なからず変化が訪れる。まず、頭がすっきりして回転が良くなる。知力と想像力が増す。アイデアと洞察が次々に湧いて、周囲に大きく差をつけることができる。つまり就寝時間を早め、定期的に休暇を取るなどして休む機会を増やし、しっかり休んだ方が、人の生産性はアップし、ミスは減少し、出世のスピードも速まるということにならないだろうか。私はこの主題を、長年にわたり細かく調べてきた。そして導き出した結論は・・・・

ひとは1年につき、まる3カ月休暇をとっても、生産性と効率、出力、収入をアップさせられるというものだった。セミナーの参加者は皆、この方法で得られる利益、職場で頭一つ抜けるまでの速さ、そのことで得られる気分の良さに驚きを禁じ得ない。今のところ、この法則に例外は見つかっていない。

 仕事途中にごく短時間の休憩を入れただけで、その後の仕事の効率が上がった経験があるので、何となく理解できる話ですよね。

そこで、もう1つ、その短時間の休憩を含め休息をとることによって得られる効用について書かれた一説を海外の書籍の中から抜粋したいと思います。

 

バケーション効果の研究

(前略)
パフォーマンス自体も休暇の長さと相関関係にあるという証拠が相次いでいる。会計事務所アーンスト・アンド・ヤングの従業員についての2006年の調査では、月に10時間の休暇をとるごとに、従業員の業務評価は翌年に8%ずつ上昇した。休暇を多くとるほど業務評価は改善し、会社にとどまることも多くなった。ほんの少しの休暇時間が増えるだけでも、大きな効果があるようだ。ハーバード・ビジネススクールの2人の教授が、最近になってB・C・Gボストン・コンサルティング・グループ)のコンサルタントを対象にしたプロジェクトを実施した。コンサルタントたちは、週に一晩休みをとり、その晩は一切仕事をしないように指示された。1日ではなく一晩である。この種の調査が実施されるというだけでも、一部の職業で現在の仕事環境がどれほど過酷になっているかがわかる。驚いたことに、この実験はコンサルタント本人たちから強硬な抵抗にあった。週に一晩でもスマートフォンをチェックできず、クライアントと連絡がつかなくなると考えただけで、懸念と不安を引き起こしたのだ。しかし、何とか週に一晩だけオフの時間を作ることができたコンサルタントたちは、半年後の調査では仕事の満足が高くなったと報告した。また、心を開いたコミュニケーションが取れるようになり、仕事と家庭生活のバランスも良くなり、普段通り働き続けた同僚よりも、会社にとどまろうという気持ちが高まったという。一晩でも週末でも本当の意味で休息し、もっと長くもっと頻繁に休暇をとり、仕事中は90分ごとに休憩し、短い昼寝の時間をとり、或いは最低でも夜7~8時間の睡眠をとる。そうすれば、仕事と休息のリズミカルな波ができ、私たちの健康と生産性は大いに改善される。このことは圧倒的な数の研究で実証されている。

〈参考図書〉

【忙しい社長のための「休む技術」(集中力・モチベーション・生産性を高める最新科学)

トニー・シュワルツ、ジーンゴメス・キャサリン・マカーシー(ダイレクト出版)

以上の様な参考記事を見ていると、日本より海外の方が休暇に対する意識が高いような感じがしますよね。 

それはやはり、海外では能率を重視するのに対して、日本では、より組織力を重視するということを意味しているのでしょうか?

確かに、日本企業の様に長期雇用を前提としたゼネラリスト育成を重視した雇用慣行の中にあっては、能率ばかりを重視するわけにはいかないこともあるのかもしれません。

能率の上がらない中での忍耐力や努力が重要であったり、お金を得ることが当たり前ではないことを教育することが重要であったり、能率の上がらない時間帯に入っても、苦難を乗り越え皆で協力してその日のうちに1つの事をやり遂げることで、組織員としての結束力を高めること自体が重要であったりとかです。あと組織員としての問題として、疲れているのは一人ではないということでしょうか?

 テレビのドミノ大会で得られる様な資質がより重要なことがあるということでしょうか?

各チーム目標のドミノを設計して、最終的にはきれいにすべてのドミノを倒し、一つの絵を完成させることを競い合う番組なのですが、必ずしもすべてのドミノが倒れなくても、各チーム目標のドミノを設計していく中で日を追うごとに、チームメンバーの結束力が高まっていく様子が報道される内容となっています。

当然、各チームとも目標設計したドミノを時間内に完成させ、最終日にすべてのドミノを倒すことを目標とするわけですが、個人的には、必ずしもすべてのドミノを倒すこと自体が重要なのではなく、その目標に至る過程においてチーム全員が1つの目標に向かい苦難を乗り越え最終的には見事な結束力を発揮する成果を重視している番組内容ではないかと思っています。

中でも、チームメンバーの一人の担当したエリアのドミノが原因で、ドミノ完成前に1/3とか半分のドミノが倒れてしまい、涙ぐみながら責任を感じたその担当者が徹夜でドミノを直していると、他のメンバーが1人また1人と布団の中から出てきて最終的には皆で壊れたドミノを修正するシーンなんかはとても感動します。

 勿論、チームのメンバーの心が見事に一致し設計したドミノが、最終日にすべてきれいに倒れて見事な絵が完成するクライマックスのシーンが一番感動するわけですが・・・・

それにしても、北朝鮮マスゲームは、いつ見ても芸術的な見事さですよね!

訓練中に隊列を乱した人には、何か厳しい懲罰とかが与えられているのでしょうか?

仕事とは、人格の延長戦である。成就である。人が己の存在意義を確かめ、己の価値と人間性をはかる術の一つである。

〈ピーター・ドラッガー

ブライアントレーシーの著書「大富豪になる人の小さな習慣術」徳間書店)より

 ここでもう一つ資料からの抜粋を引用したいと思います。

 最近は特定の労働者に大きな負担がかかる傾向にあります。仕事漬けになると生活リズムも乱れ、仕事の能率も下がります。 ほどよく休むことで社員の私生活は充実し、仕事に対するヤル気も出て、作業効率も上がります。さらに、仕事がうまくいくことで私生活にもハリが出る、というような好循環も生まれます。また、社員がイキイキと仕事をすれば、会社の生産性が向上し、メンタルヘルス対策や余分な残業代などのコストも削減できます。企業イメージも高まり、優秀な人材の確保にもつながります。 このように、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現は、社員にとっても会社にとっても大きなメリットをもたらします。

敢て、上記抜粋の中に出典を書かなかったのですが、皆さん、どこの国の資料からの抜粋だと思いますか?

北朝鮮プロパガンダ?ありそうな話ですが、残念(?)ながら違います。

実は、我国日本の厚生労働省作成の労働政策説明パンフレット【「労働時間等見直しガイドライン」活用の手引き】に記載されていた中の一分を引用しました。

 実は、実務家の方は別にして、大半の日本の労働者というのは、わが国の労働行政というのは有給休暇の推進にあまり積極的ではないという印象をお持ちだったのではと思ったからです。(私の今回のテーマ記事も、海外資料からのスタートとなっていますもんね。)

 しかし、意外?にも前述した海外資料と同じような内容の事が、資料の中に記載されているではありませんか?

「手引き」自体は平成28年8月作成のものですが、「手引き」の 内容である「労働時間等見直しガイドライン」というのは、労働時間等設定改善法第4条1項*1に基づき作成された指針の事で、事業主及びその団体が、労働時間等の設定の改善について適切に対処するために必要な事項について定めたものです。 

 その指針の作成の基となっている労働時間等設定改善法について簡単に説明させていただくと、従来の1992年(平成4年)に成立した「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」(以降、略して時短促進法という。)という平成13年3月末までの時限立法を改正する形で、平成17年に制定された法律です。

その従来の時短促進法は、全労働者を平均しての年間総実労働時間を1800時間までとすることを目標として完全週休二日制の普及促進などの取り組みをするために制定されました。のちに年間総実労働時間を1,800時間にまで減らすことはおおむね達成できたが、指針の中でも述べられている通り、それは短時間労働者の比率の上昇によるもので、正社員の年間総実労働時間は臨時措置法制定後も2,000時間を超えている状況であること、また労働時間分布の長短二極分化の進展が見られ全労働者の平均で目標を用いることは時宜に合わなくなってきたこともあるため、現在の労働時間設定改善法では、家庭生活、自発的な職業能力開発、地域活動等に必要とされる時間と労働時間を柔軟に組み合わせ、心身共に充実した状態で意欲と能力を十分に発揮できる環境を整備していくことを目標としています。

「みんなが欲しかった!社労士の教科書 2019年度版〈TAC出版〉、ウィキペディアより

 *2

 法に基づき定められる指針自体に強制力はなく、「事業主が講ずべき一般的な措置」に反しても罰則等の適用は受けませんが、「有給休暇を取得しやすい環境の整備」に関しては、法律の第2条に以前から規定されるとともに、指針の 「事業主が講ずべき一般的な措置」の中でも取り上げられていたのです。

平成28年8月の資料「手引き」と話は前後しますが、そんな中にあってその「手引き」の中でも取り上げられていた通り、特定の労働者に大きな負担がかかる傾向にあるといった労働時間の長短二極化が年次有給休暇の取得率が依然として5割を下回った状態であること、さらに、長い労働時間等の業務に起因した脳・心臓疾患に係る労災認定件数は高水準で推移していることや、急速な少子高齢化、労働者の意識や抱える事情の多様化等が進んでいるといった問題が指摘されるようになり、 このような情勢の中、今後とも労働時間の短縮が重要であることは言うまでもないが、全労働者を平均しての年間総実労働時間1,800時間という目標を用いることは時宜に合わなくなってきたことから、むしろ、経済社会を持続可能なものとしていくためには、その担い手である労働者が、心身の健康を保持できることはもとより、職業生活の各段階において、家庭生活、自発的な職業能力開発、地域活動等に必要とされる時間と労働時間を柔軟に組み合わせ、心身共に充実した状態で意欲と能力を十分に発揮できる環境を整備していくことが必要となっているということで、そのことが前述した通り現在の労働時間等設定改善法の目標となっているとされています。

その様な流れの中でまず、キッズウィーク地域ごと夏休みなどの一部を他の日に移して学校休業日を分散化する取組)への対応や、労働者が裁判員として刑事裁判に参画しやすくするとともに、平成29年6月9日に閣議決定された「規制改革実施計画」で示された転職しても転職が不利にならない仕組みをつくるため、「労働時間等見直しガイドライン及び「育児・介護休業指針」が改正され、平成29年10月1日より適用されています。

 

(1)労働時間等見直しガイドラインの改正点

 ポイント①

「地域の実情に応じ、労働者が子どもの学校休業日や地域のイベント等に合わせて年次有給休暇を取得できるよう配慮すること」 が盛り込まれました。

ポイント②

公民権の行使又は公の職務の執行をする労働者について、公民としての権利を行使し、 又は公の職務を執行する労働者のための 休暇制度等を設けることについて検討すること」が盛り込まれました。

ポイント③

「仕事と生活の調和や、労働者が転職により不利にならないようにする観点から、雇入れ後初めて年次有給休暇を付与するまでの継続勤務期間を短縮すること、年次有給休暇の最大付与日数に達するまでの継続勤務 期間を短縮すること等について、事業場の 実情を踏まえ検討すること」が盛り込まれました。

 

(2)育児・介護休業指針の改正点
 「子の看護休暇及び介護休暇について、労使協定の締結をする場合であっても、事業所の雇用管理に伴う負担との調和を勘案し、当該事業主に引き続き雇用された期間が短い労働者であっても、一定の日数について は、子の看護休暇及び介護休暇の取得ができるようにすることが望ましいものであることに配慮すること」が盛り込まれました。

 以上の様に今現在の「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)は、上述した平成29年10月1日から適用されたもので運用されているわけですが、今般、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号。略して「働き方改革法」という。)が成立し、勤務間インターバルを導入する努力義務時間外労働の上限規制が新設されることに伴い、「今後の労働時間法制等の在り方について(建議)」(平成27年2月13日労働政策審議会建議。略して「建議」という。)等も踏まえ、「労働時間等見直しガイドライン改正され、平成31年4月1日から適用されることとされています。

今回はここまでとしたいと思います。

 

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労務管理事務所
ワークライフマネジメント研究所 
所長 百武祐文(ヒャクタケ)まで 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:第四条 厚生労働大臣は、第二条に定める事項に関し、事業主及びその団体が適切に対処するために必要な指針(以下「労働時間等設定改善指針」という。)を定めるものとする。

*2:第二条 事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。 事業主は、労働時間等の設定に当たっては、その雇用する労働者のうち、その心身の状況及びその労働時間等に関する実情に照らして、健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対して、休暇の付与その他の必要な措置を講ずるように努めるほか、その雇用する労働者のうち、その子の養育又は家族の介護を行う労働者、単身赴任者(転任に伴い生計を一にする配偶者との別居を常況とする労働者その他これに類する労働者をいう。)、自ら職業に関する教育訓練を受ける労働者その他の特に配慮を必要とする労働者について、その事情を考慮してこれを行う等その改善に努めなければならない。
 事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する労働者の労働時間等の設定の改善に関し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めなければならない。  事業主は、他の事業主との取引を行う場合において、当該他の事業主の講ずる労働時間等の設定の改善に関する措置の円滑な実施を阻害することとなる取引条件を付けない等取引上必要な配慮をするように努めなければならない。