コーヒーブレークQ&A 有給休暇(あなた、低反発の枕買おうか?)
社員Aさん:課長、今まで仕事が忙しく、皆バタバタしていたので言い出しづらかったのですが、私の延期になっていた有給休暇そろそろ取りたいと思っているのですが・・・
先日土曜日の同窓会での同級生の話では、「どこの会社も夏休みがあるのにお宅の会社にはないの?」と不思議な顔をされましたよ。
それで、もしかしたら本当は当社にも社員が請求できる夏休みという制度があって自分が知らないだけかもしれないと思ったんですが、どうなんでしょう?
課長:そんな制度うちの会社にはないよ。君は何年うちの会社で働いてるんです!
今まで当社の就業規則見たことないんですか?
今度時間に余裕があるときにちゃんと見ておきなさい。
それにしても突然じゃないですか? 何か急用とかあるんですか?
子供さん達の夏休みも終わってしまいましたよね!
あっ、そうか、失礼!君のところは子供いなかったんですよね。ところで、例の仕事はどうなったんですか?当社では、今まで営業目標達成できない人がそんなこと言ってきたことはないんですよ。
それに疲れがたまっているのに、なぜ有給休暇が必要なんだね。
社員Aさん:
・・・? いや!私もまさか今月に有給休暇が取れそうになるなんて思ってもいませんでした。ただ、今までずっと延期になっていたもんですから、仕事も順調にすすんでいて、ひと段落してきた今のうちに予定を確認しておきたいなぁと思いまして…土日含めて9日間戴きたいのですが?
課長:
君も想像つくだろうけど、皆同じこと言うんだよ。わかってる?
それに連続5日って、どんなもんなんですかね〜。
慶弔休暇でもあるまいし、土日を含めると9日って、今の日本のサービス業の会社でそんな会社があるなんて聞いたことないよ。
社員Aさん:
しかしですね、こう言っては何ですが、私は今年に入って1日も有給なんて戴いておりませんから、今年の分も含めて30日の有給休暇の請求権があるはずなんですよね?
それに、女房が来年から復職が決まっておりまして、私と2人でゆっくりする時間が少なくなりそうなんです。
課長:私が個人的な有給の残日数まで、頭の中に事細かに入っているわけないだろう?
本部の人事課に確認して給与明細に有給の残日数を記載してもらうからそちらで確認しておいてくれ!
来年になったら5日くらいは、取れるんじゃないか?
皆さんお待たせいたしました。今年の夏は猛暑だったことがとても印象深かったので、夏休みにちなんで有給休暇のテーマを取り上げてみようかと思い立ちました。
私に関しては、前回の投稿からかなりの休養をいただいたおかげで、かなり充電させていただきました。
皆さんは、お盆休みはいかがお過ごしでしたでしょうか?
今年も残すところわずかとなってしまいましたが、夏休みは猛暑でどこにも出かける気がしなかったので、(年末年始の休みにはしっかりと休暇の予定を入れるぞ)と生き込んでいる方もいらっしゃるかもしれませんね。
会社によっては、10連休なんていう話を聞いたりしますよね。
そういう休みが取れる人の中には、Hawaiiなんかで家族とゆっくりされたかたもいらっしゃるかもしれませんよね。
私もサラリーマン時代にはそんな話を聞くたびに「羨ましいなぁ」と思っていた1人でした。
さて、今回のテーマ内容ですが、
出足からなんだか穏やかではない会話からのスタートとなっていますが、有給休暇というとどうしても上記会話の様な労使間のトラブルの種を連想させられてしまうのは私だけではないのではないでしょうか?
そもそも諸外国とは違い、日本の会社では有給休暇について労働基準法第39条に制度が規定されてはいますが、使用者に与える義務までは規定されていませんし、近年の長引く景気低迷や経営環境の急激な変化に対処していくため労働者が職場に遠慮して有給を申請(正式な意味での申請ではなく、有給の時季の指定を意味する。)しにくい環境があることを厚生労働省も認めていて、労働行政の有給促進のための様々な施策にもかかわらず、有給の消化率は50%を切る状態が相も変らぬらず続いているのが現状であるといわれています。*1
さて、上記課長の会話の中にも出てきましたが、そもそも有給休暇はなぜ労働者に必要なのでしょうか?
前述しましたが、有給休暇というと使用者としてはできるだけ与えたくないものであり、逆に労働者の立場からは、できるだけ多く利用したいというもので、職場での労使対立の火種となることが多い労働者の権利ですよね。
私の労働基準監督署での相談員時代の経験からも、有給休暇をもらえないという相談は本当に本当に非常に多かったです。
業種にもよると思いますが、本当に日本のサラリーマンの多くの方が、有給休暇を取れずに悩んでいるんだなぁと思いました。
自分の楽しみのための休暇ならいざ知らず、切実な相談内容としては、働きずくめで休みがないから身体がどうにかなってしまいそうなのに、上司に相談しても休みくれないといったような内容の相談が多かったですね。
さて、話を「なぜ労働者には有給休暇が必要なのか」という内容に戻したいと思いますが、厚生労働省の「労働基準法等の一部を改正する法律案について」という資料の中の、(有給休暇制度の概要)という項目に出てくるその制度趣旨内容を引用すると、次のように記述されています。
○趣旨
労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、法定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与える制度
上記の様に、まさに有給休暇の制度趣旨の中には労働者の心身の疲労を回復させるという一文が含まれており、心身ともに疲弊しきった労働者がその回復を図るために有給休暇の取得権利を主張することは制度趣旨に合致しているわけです。
ただ、同じ職場の労働者は皆同じ条件の労働環境下での労働に従事しているはずですので、誰を優先的に休ませるのかという課題が現場監督者にとっては悩ましい問題であるのは間違いないでしょう。以前の記事でもお伝えしたように、精神的負荷には脆弱性の論理があり、体力とともに個人差があるからです。(心身の弱い人間が得をするという論理)
また、有給休暇の制度趣旨からはおかしな話ですが、使用者の立場としては、「疲れた疲れたと言うけれど、無給でもいいなら休むのか?」と言いたいこともあるかもしれません。
しかしながら、有給休暇制度について定めをした労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律であり、労使合意のうえでもその労働条件を下回ることを許されていない強行法規でありますし、使用者側には、以前お伝えように、民法の信義則上の一般的義務としての労働者に対する安全配慮義務を負っていることからも、いかなる場合においても労働者が有給休暇を取得できないことには問題があるということになるでしょう。使用者に認められている時季変更権は、労働者の適法な時季指定に対して、その求められた時季を別の時期に変更することを求めることができる権利であって、労働者に有給休暇を与えないことを認める権利ではないとされているからです。
前述した厚生労働省の「労働基準法等の一部を改正する法律案について」という資料によると、1年間で年休を1日も取得できていない労働者の 割合:16.4%(平成23年時点の調査)という結果報告が記載されていました。条件等の詳細が不明ですのでなんともいえず、育休取得者等がその中に含まれているかどうかということでも数字の意味あいが違ってくるとは思いますが、それにしても16%は個人的には、多いなという印象をうけました。(それは、病気した時?に備えたくもなるよなという・・・)
最近は日本人の労働者の質の低下が云々言われるようになってきていますが、基本的に日本の労働者は、非常に真面目ですよね。そこに長期景気低迷と急速の国際競争の激化により経営を取り巻く環境が非常に厳しくなったことが企業のリストラクチャリングを加速させたことは説明するまでもないことでしょうけど、そういう環境の中で労働者も生き残りをかけた篩いにかけられる時代を経験しました。売り手市場と言われて久しい昨今でさえ、労働者に求められる資質として「環境変化に素早く適応できる能力」を指摘している人事労務関係の書籍も珍しくありません。(それらの書籍が休暇を取るなと言っているわけではないですので・・・念のため)
以上のような状況が、いまだ(指標は平成23年調査)に有給を1日も取れない労働者が16%も?いるという結果にいくばくか反映されているのでしょうか?
とにもかくにも、国も認めている通り日本人の真面目な気質と日本独自の雇用慣行により日本では有給休暇の取得率が伸びない原因となっているとも考えられますが、その真面目な日本人サラリーマンが有給休暇を取得できない真の理由は何か考えてみると、ざっと次のような理由が浮かんできました。
- みんな忙しそうにしているのに自分が休むのは申し訳ない。
- 有給休暇というのは、いざ病気やケガをして仕事ができなくなった時のためにその間の生活を保障してくれる制度として機能させたい。
- 自分が責任を負っている自分にしかできない仕事があり、自分が休むと仕事が回らない
- 業務に堪えないほど、虚弱体質と思われたくない。
- 上司に偉いと思われたい。会社に必要な人間と思われたい。
- 出向や業務負荷の極端な増加等苛めにあいたくない。
- 過去の昇進昇格者実績を見ていて、有給休暇を取っていない人の方が早く昇進昇格している。
- 一旦何日も休んでしまうと、業務の平準化に相当な期間を要する。
- 休んでいない過酷な状況が営業するうえで、受注につながるほど優位になると思っている。
以上の様に考えると、原因はお金であったり、業務効率化であったり、職場仲間への気兼ねであったりということに思いがいたります。
しかしながら、業務効率化について考えてみると、本当にそのようなことで問題が解決するのかという疑問もわいてきます。
というのも、企業は年々成長することを前提に経営されていますから、今年解決できた問題も翌年には何らかの施策がなければ、同じ問題に行き着くからです。
当然、毎年毎年対前年比売り上げ比率の増加を要求されるのが企業の宿命だと言えるでしょうから、放っておけば必ず業務負荷の増加という問題に直面するはずです。
では、売り上げが下がったら業務負荷が減るのでしょうか?
残念ながらそんなことはないと言われています。
製造業等、受注減に伴う生産調整の結果としてならありうるでしょうが、通常と変わらない仕事をしての売り上げ減という結果なので業務量が減ったわけではないからです。さらに売り上げ回復のための業務が発生しますので、売り上げが減っているのに業務負荷は逆に増加するというカラクリになっているそうです。(以上の論拠は、そのまま書籍からの抜粋ではありませんが、【人件費・要因管理の教科書:日本能率協会コンサルティング 高原暢恭著 労政時報選書】を参考としています。)
この問題を深く掘り下げると、参考図書にある、「人件費・要因管理」の問題にまでいきついてしまいますので、今回の記事では取り上げません。
「うちの会社は社員に対する休暇についての理解がないのでとても休めない」という問題は別項目に検討するとして、ここでは、「忙しすぎてとてもじゃないけど休暇なんか取れない」という労働者の意識に焦点を当ててみたいと思います。
営業の神様と言われるブライアントレーシーの著書に「大富豪になる人の小さな習慣術」(徳間書店)という書籍があるのですが、その書籍の第9章【健康で快適な生活習慣】の中で次のような興味深いことが述べられていました。
定期的に休暇を取る
私のコーチング会社では毎年120日から150日の休みを取るように勧めている。最初の内は、誰も本気にしない。とうてい無理だ、そんなに休めるはずがない、忙しすぎるからといった調子だ。それどころか、もっと休みを減らして、たまる一方の職務を片づけたいという。(略)きちんと休みを取ると、あなたの仕事には少なからず変化が訪れる。まず、頭がすっきりして回転が良くなる。知力と想像力が増す。アイデアと洞察が次々に湧いて、周囲に大きく差をつけることができる。つまり就寝時間を早め、定期的に休暇を取るなどして休む機会を増やし、しっかり休んだ方が、人の生産性はアップし、ミスは減少し、出世のスピードも速まるということにならないだろうか。私はこの主題を、長年にわたり細かく調べてきた。そして導き出した結論は・・・・
(続きは次回)
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労務管理事務所
ワークライフマネジメント研究所
所長 百武祐文(ヒャクタケ)まで