社会保障費 「かねカネ金」の世の中どう生きる?

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 「190兆円」

さて、上の金額は何の数字かお分かりでしょうか?

実は、日本の2040年度の社会保障費の推計だそです。

2018年5月22日(火)朝日新聞朝刊によると、65歳以上の高齢者数がほぼピークを迎える2040年に社会保障給付費は188兆2千億~190兆円となるとの推計を政府が21日の経済財政諮問会議で公表したとのことで、40年度の推計を出したのは今回が初めてだということです。同年には高齢化率が35.3%となり、高齢者の医療や介護、年金に係る費用が増えるためで、今年度(18年度)の1.6倍となるとのことです。

一方で、社会保障費の主たる負担者である生産年齢人口は大幅な減少が予想されており、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、15~64歳は7562万人(60%)から5978万人(54%)になるとしています。

高齢者入りする団塊ジュニア世代(71年~74年)とバブル世代、団塊世代の多さを反映し、高齢者数は3920万人とほぼピークに達するそうです。私はいわゆるバブル世代ですが、世代間・世代内の公平な給付と負担のあり方が問われているなかにあって、この上記3世代は愛煙家が特に多いので、タバコを吸う私としては、40年度にはタバコ1箱の値段がいったいいくらになっているのか非常に気がかりです。

 同新聞によると、深刻なのは費用の問題だけでなく、介護・医療の担い手となる人材不足も懸念されています。15~64歳40年までに1584万人減少する見込みであるのに対し、介護や医療の分野に必要な人材数は事務職員も含むと今より242万人増加するとしており、介護現場に限っても、厚生労働省が21日に発表した需給推計によれば、25年度時点約34万人が不足するそうです。

現状でも、特別養護老人ホームにおいて、入居待ちの状態であり病床が空いている状況にあるにもかかわらず常勤職員が不足しているため入居させられない状態が続いている施設があることを伝えています。

 ここで少し、介護保険施設に関しておさらいをすると、介護保険施設とは介護保険サービスで利用できる公的な施設のことをいい、介護老人福祉施設特別養護老人ホーム)②介護老人保健施設老健)③介護療養型医療施設(療養病床)3種類がありますが、なかでも①介護老人福祉施設特別養護老人ホーム)は、入所費用が少なくて済むことから、もっとも人気がある施設で、そのため、何年間も入所を待つケースも珍しくないとされています。(安心介護のサイトページより)https://ansinkaigo.jp/knowledge/245

介護老人福祉施設 - Wikipediaより抜粋】

介護老人福祉施設(かいごろうじんふくししせつ)とは、介護保険法に基づいて介護保険が適⽤される介護サービスを⼿掛ける施設である。これら の施設は⽼⼈福祉法第 11 条に基づく市町村によ る入所措置の対象施設となっており、その⽂脈では特別養護老人ホーム(通称:特養)と呼ばれる。基本的に、要介護 3 から 5 のいずれかの要介護認定を受けている⼈が対象となる。これら施設⼊所者の 97.2% は認知症を持っており、さらに 61.7% は寝たきり状態である。平均在所⽇数は1405.1⽇であった(2013年)。 慢性的に供給不⾜となっており、2014年では⼊所申込者(待機者)は52.4万⼈、うち要介護4-5は 8.7万⼈であった。

 上記のように、特別養護老人ホームに関しては、新聞やテレビの特集でも入所待ちがよく話題になりますが、今のままでは、40年度には更に拍車がかかる勢いということが懸念されます。場合によっては、現在の入所条件がさらに厳しくなることも考えておいた方がよいかもしれませんね。或いは入所に篩いをかけるため費用アップなんていうことになれば、普通のサラリーマンが定年退職後の終焉の住処についても、時代の流れとともに現在の核家族化が見直されていくかもしれません。そうなれば、少子化の影響も手伝って子供が1〜2人の世帯が多い現在においては、介護の負担を配偶者である妻ばかりに負わせることもできないでしょう*1から、介護をしながら仕事を続けていくことが今以上に困難になってくることも予想されます。以上の様な特養への入居待ちの状態や介護職員の不足の問題、更に、費用負担の問題について国としてはどのような対策を考えているのでしょうか?その中の費用負担増に関してですが、新聞記事の中で次のようなことを伝えています。

負担増の議論が実質的に封印されている中、厚労省対策として打ち出すのは、健康上問題なく日常生活を過ごせる健康寿命延伸だ。平均寿命との差を縮められれば医療や介護を必要とする期間が短くなるとの算段からだ。現在の健康寿命男性72.14歳女性74.79歳で、厚労省は40年度までにそれぞれ3歳延ばすことを目指す。

さて、記事の中で記者が、どれだけ社会保障給付費の抑制に役立つか未知数と述べているような疑問を呈したくなるような結果が出ている政府の統計があります。

 平成29年版高齢社会白書内閣府は、健康寿命について次のように述べています。

健康寿命が延びているが、平均寿命に比べて延びが小さい)

日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、平成25(2013)年時点で男性が71.19年、女性が74.21年となっており、それぞれ13(2001)年と比べて延びている。しかし、13(2001)年から25(2013)年までの健康寿命の延び(男性1.79年、女性1.56年)は、同期間における平均寿命の延び(男性2.14年、女性1.68年)と比べて小さい(図1-2-3-3)。

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 以上のように、平成13(2001)年〜平成25(2013)年までの12年間の健康寿命の延び(男性1.79年、女性1.56年)からすると、単純計算では今後20年で3歳延ばせることになるのでしょうが、平均寿命の伸びを伴っていることを見逃してはいけないでしょう。何か特別な対策でもあるのかと問題提起したくなってしまいます。

更に、平成29年度版の同白書には見出しがなかったため、平成28年度版を引用していますが、認知症については次のようなショッキングなことが述べられていました。

(平成37(2025)年には65歳以上の認知症患者数が約700万人に増加)

65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症患者数462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)であったが、37(2025)年には約700万人、5人に1人になると見込まれている(図1-2-3-3)(平成29年版高齢社会白書も同内容)

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 5人に1人ですよ!言葉は悪いですが、下手すると日本は「ぼけ老人」ばかりになってしまうということですよ。少子化の現在においてそのような状態になってしまった時に、誰が面倒見てくれるのでしょうね。

「お金!」*2と答えた方は、銀行と良い付き合いができます。(笑)

 さて、ではそのお金についての意識はどうなっているのでしょうか?

同白書による意識調査によると、次のような結果となっています。

介護が必要になった場合の費用負担について、内閣府の調査で60歳以上の人に尋ねたところ、「特に用意しなくても年金等の収入でまかなうことができると思う」42.3%、「貯蓄だけでは足りないが、自宅などの不動産を担保にお金を借りてまかなうことになると思う」が7.7%、「資産の売却等でまかなうことになると思う」が7.4%、「子どもからの経済的な援助を受けることになると思う」9.9%「その場合に必要なだけの貯蓄は用意していると思う」20.3%となっている(図1-2-3-9)。

 å³1ï¼2ï¼3ï¼9ãä»è­·ãå¿è¦ã«ãªã£ãå ´åã®è²»ç¨è² æã«é¢ããæè­

 予想通り、年金と預金で賄えると思っている人が大多数ですね。特に年金を頼りにしている人が多いということもわかります。そのように考えると、年金の悪口を言う人たちもいますが、今後我が国での老後の生活において年金の果たす役割はますます重要になってくるものと思われます。(銀行員であった一昔前であれば、将来のための預金を呼びかけ、良い仕事をした仕事帰りに美味しい生ビールでも飲みに行きたくなるような話です。)

5人に1人となると、もはや他人事ではないような気もしていますが、認知症になった時に若いときから貯蓄に励んできた資産や在宅介護の希望などの本人の意向はどう担保したらよいでしょう。大半の方は、妻と子供の家族をお持ちでしょうから元気なうちから「自分が呆けた場合はこうしてほしい」とお話ししていると思いますが、現在は任意後見制度*3を利用している人が増えてきていると言われていますので、元気なうちにそういった制度でいざという時の備えをしておくのも一考に値すると思います。ただし、任意後見人の事務内容は、任意後見契約に定められた内容によって決まりますが、代理権付与の対象となる事務である以上法律行為に限られ介護サービスなどの事実行為は含まれないこととされていますので、そのことは頭に入れておくべきでしょう。

【図解による 民法のしくみ 改訂5版 弁護士 神田将(著)自由国民社

従来より、要介護の高齢者のほぼ半数は認知症の影響が認められるにもかかわらず、認知症高齢者へのケアはいまだ発展途上で、ケアの標準化、方法論の確立がなされていないのが現状で 、 介護サービスに関しては、利用者に対て介護サービス事業者を選択するために必要な情報が十分に提供されておら ず、また、提供さ れるサービスに関する苦情が増加していたという事情があり、介護サービスに従事する者の質の向上人材の育成を図る必要があり 、劣悪、悪質な事業者は介護サービス市場から排除されなければならないという課題があり、そういった 以上のような課題に対応するために介護制度の改正が行われてきているとされています。 (KINZAIファイナンシャルプラン 2005 年6月号コラム:社会保険労務士 井戸美枝)

以上のような課題に対して、現場サイドの状況と人手不足に対する国の施策について、上述の新聞記事では次のように伝えています。

現場からは「今でも外国の人材に頼らざるを得ない」との声が上がる。政府は移民政策をとらない姿勢を崩していないが、一方で在留資格*4として新たに「介護」を加え、外国人技能実習生の対象分野に「介護」を設けるなど、実質的に外国人を現場の担い手とする施策に本腰を入れ始めている

 

東洋大の高野龍昭(高齢者福祉)准教授の話

生産年齢人口が大幅に減る2040年には、負担の大半を若年層に依存する現行制度では全く立ち行かなくなる。医療や介護の担い手不足も避けられない。高齢者の活用だけでは足りず、外国人労働者の受け入れを正面から議論することが必要だ。処遇や質の確保など制度は注意深く作らないといけないが、今の政府の動きは遅すぎる。また、特に介護はロボット情報通信技術を積極的に活用し、少ない人手で多くの高齢者に対応できるようにしなければならない。 家事・買い物支援などはボランティアや一般企業のサービスを活用し、専門職は認知症など高度な技能が求められる仕事に集中していかざるを得ない。

前述した白書によれば、施設定員数も介護要員も増加傾向を示していますが、依然として介護職員は不足しており、有効求人倍率は全産業に比べ高水準を示していおり、平成28年(2016年)の介護分野の有効求人倍率3.02倍となっていて全産業の有効求人倍率(1.36倍)の約2.2倍になっているということです。従って、現状で施設定員数だけをじゃんじゃん増やしても介護要員が追い付かない状況なので有効な対策となりえないということです。

 今後将来的に医療技術は進歩していくことでしょう。一説によればクローン技術の医療への応用は物凄い可能性を秘めているそうです。若い健康な時に自分の細胞を保存しておき、その若い細胞により自分に適合する臓器のクローンを作れば、拒否反応は全く出ずに、疲弊した臓器を若返らすことも夢ではないそうです。そうなると、人の寿命は150年くらいまで伸びるかもしれませんよね。(西鋭夫のフーバーレポート【ダイレクトアカデミー】より)

その時前述した「お金」がものをいうのでしょうか?

それとも今後「お金」というのはあまり意味のない存在になっていくのでしょうか?

将来「お金」の意味がどのようなものになっていくかはさておき、現在は「お金」が我々の生存にとって貴重な意味を持っていることに違いはありません。「お金」がかかる話をしすぎると少子化が進んでしまいそうな罪悪感にとらわれてしまうのも、子育てには「お金」がかかるからであり、我々はその「お金」の節約による高齢期における少子化のツケを払わされていると考えると何とも皮肉な話であるように思えてなりません。白書によれば、「治る見込みがない病気になった場合、最期はどこで迎えたいか」について、「自宅」54.6%で最も多く、次いで「病院などの医療施設」27.7%となっているという結果が伝えられているにもかかわらず・・・前述のお金に関する同白書の意識調査では、「子どもからの経済的な援助を受けることになると思う」がたった?10%たらずということです。

私の以前の恩師の信条は、「人間は裏切っても金は裏切らない」でした、。(笑)

我々は社会で生きていて確かにそのような場面に出くわしたりすることがありますが、結局は最後に頼りになるのは人間だと思いたいものです。

それでも長生きすればするほど高齢化していくと信頼できる人間達は少しづつ自分の周囲から減っていき最後は「お金」だけが頼りになるという状況は理解できない訳ではないのですが・・・

しかし、人間よりもお金で買ったアンドロイドの方が、よっぽど人間味あふれていたりすることを想像する高齢者をみると、その人間味を作り出しロボットに入力作業を行ったのは誰なんでしょうね!と聞きたい気持ちになります。

 「さて、あなたは自分を助けてくれる人たちを裏切らないために、何をしますか? 」

皆さんにいってるのではありません。私はたまに上記のような質問をされることがあります。「何を望んでるんでしょう? マンション? 高級車?  エルメスのバック? どれもお金がないとできないですね(笑顔)

殆どの社会人の人達が、自分を含め、自分の家族を幸せにするために懸命に働いているでしょう。家族との団らんや少しでも家族に良い生活をさせたいという思いです。或いは、家族には「お金に対して惨めな思いだけはさせたくない」という思いです。

話を介護に戻すと、

厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」によれば、家族の介護・看護を理由とする離職者は、55~64歳層を中心とする比較的高齢の層が多くなっており、離職期間が2年以上の割合が高くなっているそうです。同白書は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「仕事と介護の両立支援に関する調査」 (2012年度厚生労働省委託事業)の調査に結果に基づき、40歳台及び50歳台が介護等を機に仕事を辞めた場合、経済面に加えて、精神面や肉体面でも負担が増したと回答する割合が高くなっていることを伝えており、介護離職経験者にかんしては、転職経験者も未就業者も介護を理由に離職した理由について時間的制約が高い割合を示しています。以上の様な介護就業者の負担を職場での仕事と介護の両立支援に関する取組によって軽減させていくことは今後の高齢化社会において、介護者を家族に抱える労働者の継続就業を考えていくうえで避けて通ることのできない重要な課題となってきています。*5

さらに、同白書は、総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」により介護をしている有業者のうち、就業休止希望者(「この仕事を今後も続けますか」との質問に「仕事をすっかりやめてしまいたい」と回 答した者)が有業者全体に占める割合は6.2%となっており、この割合は介護をしていない有業者(3.9%)よりも高くなっているものの、介護休業制度等を利用することにより、男女ともにその割合は低下していること*6、在職者が仕事と介護の両立のために必要と考える勤務先による支援(複数回答)として、「出社・退社時刻を自分の都合で変えられる仕組み」「残業をなくす/減らす仕組み」など、労働時間の面での支援ニーズが高くなっていることを伝えています。

以上の内容からすると、売り手市場で新卒者獲得競争が激しさを増している昨今においては、大手はもとより中小企業においては特に、育児や介護と仕事の両立支援が整備されていることをしっかりとアピールできることも、自社にとって有能な人材を確保するための有効なアトラクトとなると思われます。

そんな中にあり、「団塊の世代」が60歳台後半に入り、公的年金の支給開始年齢が引き上げられている中で、 企業の高年齢者雇用確保措置の導入は進展しているとされています。*7

高齢者の継続就業に関する意識の動向に関して、「生涯現役」を希望しているという興味深いことが書いてありました。

なぜ、生涯現役なのでしょうね。「お金」でしょうか?

勿論経済的理由も入っていましたが、「お金」回答する割合は、2000年代に年齢階級計では5割程度で推移しているものの、高齢になるほど低下する傾向にあるそうです。一方、「生きがいをみつけるために働く」回答する割合は、 年齢階級計では2割前後で推移しているが、65~69歳及び70歳以上ではほぼ3割台で推移しているそうです。

「最後の逃げ切り世代」と言われる団塊の世代の意識はどうでしょうか?

猛烈社員の仕事・しごと・シゴトのイメージの強い世代ですが・・・

内閣府団塊の世代の意識に関する調査」(2012年)により、団塊の世代が働く理由(三つまで回答)をみると、60歳時点、調査時点ともに「生活費を得るため」が最も多いが、現在仕事をしている理由としては、このほかに「生活費の不足を補うため」「健康維持のため」「将来に備えて蓄えを増やすため」「自由に使えるお金が欲しいため」「生きがいがほしいため」などの多様な回答の割合が高い。団塊の世代は、働き続けるメリットとしてこのようなものを意識していると考えられる。(略)

団塊の世代が働くうえで重視していることをみると、「体力的に無理なく続けられる仕事」「自分のペースで進められる仕事」に次いで「自分の能力を発揮できること」があげられている。高齢者が自分のペースで仕事を 進められるなど、体力的に無理なく続けられ、能力や経験を発揮できるような就労環境を整備 することがますます重要となっている。*8

一方で、若年層の就業意識に関してはどうでしょうか?

企業生き残り10年の時代なんで言われて久しい昨今、今から社会に出ていく若者たちに関しては、老後を迎えるまでの長期社会人生活の中にあって我が国においても1度や2度の転職・企業再編は考えておかなければならない時代になってきたのかもしれません。

そんな中にあって、仕事を変わっても通用する技術や専門知識を身に着けておきたいと志向する人たちも増えてきていると言われています。企業を選ぶ際の基準も仕事を通じて自分のスキルや技術を高められるという項目が顕著になってきていると言われていますよね。今回とりあげた「労働経済の分析」(労働経済白書)でも、専門的知識や技術の持った人の不本意正規雇用からの正規雇用への成功率の高さが示されていました。

平成29年度の「労働経済の分析」AIの雇用に与える影響について書かれていました。AIの活用により今後産業界での様々なイノベーションが期待されており、その考えられる役割・機能の中には「不足している労働力を補完する」というものも挙げられていました。AIの進展は、人の雇用を代替するものとしてネガティブに語られることが多いという理由から、経済産業省の新産業構造ビジョン中間整理の中で行われた「産業構造・就業構造試算」による分析結果を伝えています。

その分析結果によると、我が国の2030年における労働力人口、就業者、製造業の就業者、非製造業の就業者の増減状況について、就業者は約161万人減少しているものの、働き手の数を示す労働力人口はそれ以上に減少しており、単純に試算すると、2030年までにAIの進展を含めた第四次産業革命に対応したとしても失業者は増加せずむしろ約64万人労働力が不足する状況にあることが分かるとしています。特に自動化などにより AIの利用が進む製造業と比較して、人の対応が求められ、AIの利用だけでは対応できないサー ビス業を中心に就業者が増加することが示唆されるとしており、増加する職種の中にホームヘルパー、介護職員があげられています。*9

これらの職種について、スキル別の職業分類も用いつつ、「技術が必要な職種」「人間的な付加価値を求められる職種」「その他、定型的業務が中心の職種等」に分けてその傾向を確認すると、今後増加が予想される「技術が必要な職種」「人間的な付加価値を求められる職種」適応できる能力を労働者は今後身につけていくことが求められるとしています。

今回は、朝日新聞で取り上げられていた社会保障費の今後の増加見込みの記事をきっかけとして、「仕事」と「お金」の関係をまじえながら、私達国民のディーセントワーク(人間らしく仕事をする)の可能性に必要となる情報の一部を探ってみました。

最後に、平成26年度版「労働経済の分析」の「むすび」を引用して今回のテーマを終わりたいと思います。

【企業パフォーマンスの向上と中核的人材の育成に向けた人材マネジメントの課題】

人材マネジメントの目的は、長期的な企業の競争力を維持・強化していくために、人員配置・教育訓練等の雇用管理、就業条件管理や報酬管理を通じて、人材の働く意欲を喚起し、その能力を最大限発揮させることにあるそのためにも、人材を適材適所で活用し、職場内外での教育訓練によって人的資本の蓄積を図り、労働者の働く意欲を引き出すマネジメントの仕組みが重要である。

さらに、経営戦略を理解し、具体的な計画を策定、行動に移すことができ、また自らが職業生涯を通じて獲得してきた知識・経験・スキルを後進に伝えることができる、企業成長の要となる中核的人材の育成に向けた、戦略的なキャリア設計が企業には求められる。

労働者の就労意欲が高い企業の特徴として、正規雇用労働者・非正規雇用労働者を問わず、 広範な雇用管理に取り組むとともに、人材育成に対しても積極的に取り組んでいることが分かった。こうした企業においては、労働者の定着率や労働生産性、さらに売上高経常利益率も高い傾向にある。さらに、企業の要となる人材として管理職層に着目すると、仕事を通じた経験が管理職層に必要とされる能力を高めていくプロセスが確認された。

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*1:主に家族(とりわけ女性)が介護者となっており、「老老介護」も相当数存在:要介護者等からみた主な介護者の続柄をみると、6割以上が同居している人が主な介護者となっている。その主な内訳をみると、配偶者が26.2%、子が21.8%、子の配偶者が11.2%となっている。また、性別については、男性が31.3%、女性が68.7%と女性が多くなっている要介護者等と同居している主な介護者の年齢についてみると、男性では69.0%、女性では68.5%が60歳以上であり、いわゆる老老介護のケースも相当数存在していることがわかる。介護や看護の理由により離職する人は女性が多い:家族の介護や看護を理由とした離職者数は平成23(2011)年10月から24(2012)年9月の1年間で101.1千人であった。とりわけ、女性の離職者数は81.2千人で、全体の80.3%を占めている【平成29年版高齢社会白書内閣府)】

*2:医療・介護の保険料推計(平均値)【朝日新聞より】:医療保険の分野:協会けんぽ)2018年度10.0%から40年度11.5〜11.8%健康保険組合同9.2から同10.9〜11.2%国民健康保険同7400円から同8200円〜8400円後期高齢者医療制度同5800円から同8000円〜8200円 介護保険の分野:(65歳以上)同5900円から9200円(40歳〜64歳:協会けんぽ、組合)同1.52〜1.57%から同2.6%(40歳〜64歳:国民健康保険同2800円から同4400円

*3:任意後見契約とは、委任者が受任者に対して、精神上の障害により事理弁識能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約で任意後見登記が必要であり、「任意後見監督人」が選任されたときから効力が生ずる定めのあるものを言い、この契約は公正証書によることが必要な要式契約とされている。また、その場合の事理弁識能力は、少なくとも補助の要件に該当する程度と解されている。【図解による 民法のしくみ 改訂5版 弁護士 神田将(著)自由国民社

*4:在留資格の取得とは,日本国籍の離脱や出生その他の事由により入管法出入国管理及び難民認定法)に定める上陸の手続を経ることなく我が国に在留することとなる外国人が,その事由が生じた日から引き続き60日を超えて我が国に在留しようとする場合に必要とされる在留の許可です。在留資格の種類により、国内で活動できる範囲や在留期間に相違があり、例えば、観光目的の短期滞在の在留資格収入を伴う音楽,美術,文学その他の芸術上の活動なども行うことはできません。60日を超えて在留しようとする場合には,当該事由の生じた日から30日以内に在留資格の取得を申請しなければなりません。

*5:厚生労働省平成24年度雇用均等基本調査」によると、介護休業制度の規定があ る事業所割合は、育児休業制度と同様に一貫して上昇しており、事業所規模5人以上では 65.6%、30人以上では89.5%となった。また、介護のための勤務時間短縮等の措置の導入状況をみると、短時間勤務制度(53.9%)、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(29.2%)、介護の場合に利用できるフレックスタイム制(10.7%)、介護に要する経費の援助措置(3.4%) の順で多くなっており、いずれの措置も平成20年度(それぞれ39.9%、20.7%、6.4%、 1.8%)と比較して導入割合が上昇している。厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」より

*6:ここでは介護をしている有業者と介護をしていない有業者とを比較しているが、就業休止を希望する理由として、仕事と介護の両立が 困難であること以外の要因があり得ることに留意する必要がある。厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」より

*7:60歳台の労働力率の推移をみると、60~64歳層では高年齢者雇用確保措置の実施義務化(2006年4月施行)を反映して、2007年及び2008年に上昇し、 その後は男性は75%を上回る水準で推移している。女性は上昇傾向が続いており、2013年は 47.4%となった。65~69歳層では、60~64歳層に比べて水準は低くなるが、団塊の世代が 65歳に到達した2012年以降の上昇が特徴となっており、2013年は男性は50.7%、女性は 29.8%となった。厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」より

*8:定年後に就業継続するためには健康であることが重要である。健康を損なうと就業継続が困難となり、一時的な休暇や休職にとどまらない就業中断につながる可能性もある。厚生労働省「平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」」によると、同年度の請求件数は脳・心臓疾患で784件と高い水準となっており、精神障害においては1,409件で過去最多となっている。また、支給決定件数も高い水準で推移しており、脳・心臓疾患は306件、精神障害は436件となっている。健康を理由とする離職者の中には精神的健康(メンタルヘルス)の不調が原因となっている事例もあると考えられ、不調に陥る前に対処する必要性が高まっている。

(過去記事)

90%の高精度で判定できる適性検査 メンタルトレンドって何 - 人と組織の活かし方の研究 労務カフェ

健康状態への復帰、治療と職業生活の両立を目指す者も多く、その支援が長時間労働の抑制とともに重要な課題となっている。厚生労働省平成26年版 労働経済の分析」より

*9:増加する職種ホームヘルパー、介護職員約108万人販売従事者約47万人技術者約45万人などとなっている。一方で、減少する職種生産工程従事者約187万人事務職約79万人などとなっている。厚生労働省「平成29年版 労働経済の分析」より