労働契約について考える

私は依然、とある銀行に勤めていたんだけど、今になって思えば、みんな変。

皆さん、労働契約という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

意外と言葉は知ってても、中身については関心を払わないサラリーマンがたくさんいるのには大変驚かされます。

とはいえ、自分も以前はそんなもの全然気にしていない一人でした。

毎日職場と自宅の往復でクタクタ

そんな自分を企業戦士と誇らしく思っていた時さえありました。

 

 さて、本日のテーマの労働契約ですが、いわゆる民法の典型契約といわれるものの中にはでてきません。

厳密にいえば民法では、「雇用」という章があるのですが、わずか数条規定されているのみです。

契約は、できるだけ当事者間の自由意思に委ねるべきという民法私的自治の原則の代表のよう章です。

そして、当然のことですが、現実の複雑な労働契約関係をそのわずか数条の規定で、ルール化できるわけがありません。  

何故でしょう?

 

それは、民法の「雇用」の章の中には、雇用契約というものをはっきりと定義はしていないからです。

そこで登場したのが、労働契約の中で使用者が最低限遵守すべき基準(取り締まり規定)を定めた民法の特別法である「労働基準法」です。

つまり、使用者が圧倒的に強い立場にある現実の労使関係において、民法の私的自治の原則に制限を加えることにより弱い立場の労働者を保護しようとしているのです。

雇用に限らず、現実の仕事の世界では、お金をいただく方よりお金を支払う側の方が圧倒的に強い立場にあるということです。
当然といえば当然ですよね。

「そんなことあるか」と思われた方は大変すばらしい付加価値をお持ちの方です。

そして、その労働基準法の中でさえも、労働契約というものをはっきりとは定義していないのです。
変化の激しい経営環境の中にあっては、労働契約関係については労使の対等の立場による合意の原則を貫こうとしているわけです。

 

ですから、民法の「雇用」で定められているのは、雇用の成立要件にすぎませんし、労働基準法でも「使用者」と「労働者」の定義ががあるのみで、
具体的に労働契約がこういうものでなければならないというような決まりを定めてはいません。   

では、労働契約とは何か?ということですが、

 

皆さんはどのようなことに対して会社からお金をもらっているでしょうか?

「使用者の命令する仕事をこなしたことに対してに決まっているだろう。」

正解です。

会社は、皆さんに命じる仕事(業務)の提供を受ける対価として、あらかじめ契約で約した給料を支払っているのです。

それが、労働契約です。

(「お仕事大変ですね」って世間の人から言ってもらえる仕事の事ですね。)

しかし、こんなに単純な契約内容であるにもかかわらず、なぜ近年労使紛争が頻発しているのでしょうか?

それは、契約内容の中身が複雑だからです。

一口に労務の提供といっても、会社が求める労務の提供の中身をはっきりと言葉に出して言える人がどのくらいいるでしょうか?

 

少し細かいことを言うと、労働基準法には、後日の労使紛争を極力回避するために、労働契約締結時には労働条件通知書というものを労働者へ提示することを求めていますし、常時10人以上の従業員を使用する使用者には、就業規則といわれる職場のルールを労働者に周知することを刑事罰をもって強制しています。

 

特に、労働条件通知書にかんしては、皆さんが従事すべき業務の種類を定めなければならないことになっています。

ですが、労働相談の現場ではこの労働条件通知書というものを知らないという労働者が驚くほど多いんです。

今回のこのテーマをお読み方の中にもひょっとして、そういう方がいらっしゃるかもしれませんよね。

基本的には、皆さんは労働条件通知書で示された将来を含めた従事すべき業務を提供すると、その対価として給料をいただく権利が得られるわけです。

でも、実際は先述したように、自分の労働条件なんか「知らない」と答える労働者の方が驚くほど多いのです。

 

皆さんは、仕事の現場でこう言った経験はないですか?

上司:「なんで、やるべきことをきちんとやっていないんだ?」

部下:「?」

上司:「なんだその?という顔」「お前どんなに忙しくても、飯食う時間と寝る時間はあるんだろう。なんでできない仕事があるんだ。」

部下:(・・・ ご飯食べずに睡眠もとるなということかなぁ)

上司:「なんで余計な仕事をしているんだ!それはお前のやる仕事ではないだろう!」

部下:「・・・・・」

上司:「きのうB君が、お客様のところに飲みに来てくれてうれしかったと言っていたぞ!お前も見習ったらどうだ!」

部下:「必要な時には、行くように心がけてます。今度一緒にお供していただけませんか?」

上司:「お前、いつも仕事終わって何時間寝ているんだ? 俺は、4時間以上寝たことないぞ。*1

部下:「・・・・・」

上司:「お前いつも1分、2分遅刻するよな。ヤル気がないならやめてくれないか?男 は8時、女は8時20分といつも言っているだろう」

部下:「・・・・・」

上司:「おい、10秒くらい手が止まっているぞ!みんなは、手を止めずに仕事しているだろう」

部下:{嘘つけよ!仕事に関係ある会話なら雑談しててもいいのか?}

 

さて、例文のうち労働条件を知らないばかりに皆さんは上司に誤ってばかりいなければなりません。

「サラリーマンが怒られたんだから、仕方ないじゃないか?」と思われたかもしれませんね。

いや、私も以前サラリーマンをしていたので、その気持ちよくわかります。

しかし、

例文の部下のD君。「?なんで、ほかの連中も俺と同じことしてるのにいつも俺ばかりが怒られるの??????」となりました。

一方のA君は上司に怒られても、

私も完璧ではないかもしれませんが、やるべき事はきちんとやっているつもりです

と言って、労働法や自分の労働条件を根拠に暴言にならないように気を付けながら自分の意見を主張しました。

上司からは、「君の言っていることも確かに四角四面でいえば正しいかもしれないけどな、組織はみんなで仕事をしているところなんだから、多少意味を理解してほしい
柔らかく言われその後はあまりくどくど言われることなく仕事を効率よくやっています。

皆さんはどちらが組織にとって必要な人と判断されると思いますか?

我慢強く謝り続けるDくん? 

それとも、

自分の言うべきことはきちんと主張して効率よく仕事をするA君?

 

実は、こういったこと私が以前の職場でよく体験していたことなんです。

「それは、お前のいた職場だからだろう!俺のいる会社では、組織の為に我慢する人間が損することはない」と思われた方は、例文を無視して読み飛ばしてください。

当時は、今みたいに労働に関する知識がなかったので、上司の言っている職場のルールはすべて正しいことだろうと思っていましたし、多少、(変だなぁ)と思うことがあっても皆さん同様、(サラリーマンだから我慢しなきゃ)と思っていたんです。

勿論、サラリーマンですから出しゃばった横柄な態度で自分の意見を主張するのはよくないでしょう。

しかし、結局職場のルールや労働契約内容を知らない人は、仕事に取り組む姿勢を疑われることになったりします。

皆さんも、是非もう一度、自分の労働条件や職場のルールはきちんと知識として確認しておいてください。

 

*1:皆さんの会社では、絶対部下にこんなことを言ってはいけません。最近の労働行政下にあっては、労務管理上での言葉でもリスクが大きすぎます。